告白
第14話 告白
――放課後
今日も、麻衣たちの話の輪には入れていなかった。
でも、それで良かった。
彼女たちが明るくなったのは、自分がきっかけだから。
自分の場所は、ここにあると思っていた。
そんな俺の様子に、麻衣が気づいた。
「もう舎弟は解消だ。」
麻衣はあっさりと告げる
「無理に来なくていいぞ?」
――一瞬、理解できなかった。
次の瞬間。
胸の奥が、冷たくなる。
(ああ、終わった)
また、だ。
「……なんでだよ」
声が、少しだけ荒れる。
麻衣は、少し目をそらして言った。
「最近さ。
またチャラいやつらと会ってるだろ」
タカの顔が浮かぶ
「別にもう、わだかまりはねぇ」
淡々と続ける
「だったら、そっち行った方が楽なんじゃねぇの?」
その言葉。
“突き放し”じゃない。
―でも。
“戻せる場所”として扱われてる。
それが、きつい。
俺は、怒りに近い感情で食い下がった。
「麻衣はどう思ってるんだ?
俺がチャラいやつらといても、腹が立たないのか?」
麻衣は首を傾げて答えた。
「まぁ、アイツらは好きじゃないが、お前はお前だろ。
アタマいいし、自分で何とかできる力も持ってる。
だから、無理にあたしらに合わせなくてもいいんじゃないか?」
その言葉に、俺は胸が締めつけられた。
麻衣との関係が途切れるのが怖かった。
学祭の後、みずきの後を追えなかったみたいに、
また一つ、大事なものを諦めてしまう気がした。
麻衣は、少しだけ声を落として言った。
「で、お前はどう思ってるわけ?」
答えを、求められる。
――もう、ごまかせない。
「俺は」
喉が詰まる。
「離れたくない」
はっきり言う。
「麻衣と」
一歩、踏み込む。
「初めてだったんだよ」
言葉が、止まらない。
「ちゃんと話せて」
「ちゃんと聞いてもらえて」
息を吸う。
「仲間だって思えたの」
少しだけ、笑う。
「恋愛とかじゃなくてさ」
――言い切ろうとして。
止まる。
でも。
やめない。
「……でも」
「俺、麻衣が好きだ」
空気が、固まる。
「だから」
「“来るな”とか、言うなよ」
「はぁ……!?」
麻衣は、目を見開いて顔を赤らめた。
「ば、バカヤロー!
そ、そっちの話じゃねぇ!
お前はチャラいやつらとまだツルみたいのかどうかって聞いてんだ!
恥ずかしいじゃねぇか!」
その言葉に、俺は思わず笑ってしまった。
麻衣の照れ隠しは、いつも全力だ。
でも、その顔は、どこか嬉しそうだった。
麻衣はしばらく顔を背けていたが、再び俺に向き直った。
「で、結局どうなんだ?」
俺は、まだ落ち着かない気持ちを整理するように話し始めた。
「アイツらといた時は楽しかった。
でも、もうあそこは俺の居場所じゃない。
ただ、リーダーのタカは…逆らうものに容赦しない」
俺はスマホを取り出し、自分の女装が晒されている動画と、ノボルの土下座謝罪動画を麻衣に見せた。
画面の中で、笑いと罵倒が交錯していた。
「また俺の仲間が傷つけられるかもしれないと思うと、答えが出ないんだ」
麻衣は、鼻で笑ってみせた。
「それは表向きの理由だろ?
大事なのは、お前自身、どうしたいかだ」
その言葉に、俺は本心を打ち明けた。
「アイツらは、アイツらで努力してる。
タカも向上心があるし、空気を読むこと、仲間を気遣うことに関しては、すごく頑張ってる。
でも、俺らとは目指すところが違う。
やっぱり相容れない。
だから、もう構うなって言いたいんだ」
麻衣は、口元を緩めて笑った。
「よっしゃ。じゃあケリつけにいくぞ。
あたしに、考えがある。耳貸しな」
俺と麻衣は、拳の先端を合わせた。
その音は、小さくても確かな誓いだった。
もう逃げない。
もう誤魔化さない。
俺たちは、共に立ち向かう。
俺が歩き出そうとした時、
麻衣は、何かを思い出したように、俺の背中に声をかけた。
「さっきの告白だけどな。」
「あたし、まだ分かんねぇんだ」
「誰か好きになるとか」
麻衣は少しだけ、照れる。
「でも」
顔を上げる。
「お前のことは好きだ」
はっきりと聞こえた。
「嬉しかった」
胸が、熱くなる。
その言葉に、俺は足を止めた。
「あたしがちゃんとお前に向き合う準備ができたら、お前に打ち明けるから。
その時は、茶化したりしないで真剣に聞いてくれよ」
沈黙が、優しく流れた。
「…それだけだ。
なんだ、ニヤニヤするんじゃねえ!」
俺は、笑いそうになるのをこらえながら、
胸の奥に、何かが灯ったのを感じていた。
それは、答えじゃなかった。
でも、一番の勇気だった。
麻衣が、俺の言葉を受け止めてくれたこと。
麻衣が、自分の気持ちを言葉にしてくれたこと。
そして、いつか“その時”が来ると約束してくれたこと。
俺は、もう少しだけ強くなれる気がした。




