ビートボックス
どこやここは
「乾、巽、チンチロでもせんか?親はわし」
「オヤジ、イカサマしないでくださいよ。」
「もぐさん今日手持ちなくて、すみません」
「いい、いい今日は賭けなくても、暇だからやるだけや」
確か、港に呼び出されて、島柄のやつが
「もぐさんほんとにチンチロ好きですよね」
「運が全ての遊戯やからな、運を鍛えられる」
「運を鍛える、かぁ。オヤジらしいや」
わしは死ぬんか?
朦朧としている頭を無理やり振り起こし立ち上がる、自分の置かれている状況の把握に専念する。
二十畳ほどの床、天井には六灯の蛍光灯、壁には富士の絵が飾られている。申し訳程度の小さな小窓、背後には出入り口がある。正面には黒革の長ソファーが二つ向き合うように置かれている。二つのソファの真ん中には天板がガラスでできたローテーブルが置いてあり、そのテーブルの上にはガラス製の灰皿だけががポツンと置かれてる。その奥にはシックな茶色のデスクがあり、高級感のある居丈高な革張りのチェアとセットになっている。見慣れた風景
わしの事務所やないか、どうゆうことや。わしは港で、島柄に、、
「座ったら?」
誰や!少年の声が聞こえ、すぐさま声のした方向へ注意を注ぐ。
見ると、居丈高な雰囲気を醸し出していたチェア、いつもわしが座っている席にいつの間にか小学生くらいの少年が座っていた。
「そこは坊主の座ってええ場所ちゃうぞ、降りろ。」
「坊主じゃないよ、これでも立派な神様なんだから」
そないなちっぽけな神がいてたまるかい、神やなくて座敷童子の間違いやろ。
「言うねえ」
なんや心読めるんかいな、わざわざ口に出さんでもええやなんて助かるわ。
ん?これ、夢やないな?
ソファに座った時の手触りが、明らかに、夢では再現できない域に達していることに気づく。それにさっきの出来事の記憶がまだ鮮明に残ってる。
思えばそうやな、あの怪我じゃ死んで当然やろな。とすると、ここはあの世か。
かーっ、わしとしたことが情けねぇ。天下取った人間の最後が裏切りかい。しょーもないわぁ、まぁ天下取っただけ信長よりはマシか。
「よく気づいたね。次の人も待たせてるから簡潔に済ますね。君にはオレ主催のデスゲームに参加してもらうことになった。時間制限なし、参加者4、5人、参加者には異能力が配られて、体と心を参加者同士でシャッフルする。」
「へぇ、おもろそうやないか。じゃあ、わしは完全に死んだわけやないんやな?それにしてもデスゲームかぁ、神様もいい趣味しとるな。」
「ありがとう。やっぱあんまり驚いたりしないんだね。やっぱりおかしいよ下界の人間の適応力」
「十分驚いとる。ただ、嬉しくてな。この手で返せるんやろ、わしの仇。別にデスゲーム参加者以外は殺すの禁止とかないんやろ?」
「好きにしてくれていいよ。嬉しそうで何より、ゲームは楽しんでやるのが一番だからね」
そういうと少年は、椅子の中で手を組んだ。そして足を使って椅子を回転させ出し、うーんと唸って考え込む。そのまま、一秒間に1〜1.5周ほどのスピードで約6秒間ほど回転したのち、ピタッと椅子が回転が止まり、座っていた少年が、遠心力と酔いで少しよろめきながら、椅子から立ち上がる。
「君の異能力は、『ビートボックス』。効果は、任意の人の心臓の動きをコピーする箱を出現させる。にしよう」
「なんやそれ?」
「質問はあるかな?」
神はそれだけ言うと、座っていた椅子にもう一度腰を下ろす。
「なんやそれって聞いたやろ。」
「説明した通りだよ、使えばわかる。」
任意の人の心臓の動きをコピーする箱を出現させる能力。想像していた異能力とは違うなぁ、まあええわ、それはそれでおもろそうな力やないか。
「他に質問はあるか?」
「ない。」
「じゃあもういいか?」
「いや、そういえば最後に一つ聞いていいか?神様ってのはチンチロは好きかい?」
「オレはサイコロなんて振らないよ。」
「おかーさん、起きて、朝ごはんできたよー!」
なんや?お母さん?ここは、ベットか?港、事務所ときて次はベットか。肩の痛みが消えてる、だがその代わり眠気が襲ってくる。体の至る所に違和感がある。これが例のシャッフルってやつか。
そこまで思考が行き着いた時、どこからともなく全身、主に腹のあたりにドスンとした衝撃に襲われる。
「なんや!?」
「『なんや』って、職業病出てちゃってるよ。今日オフコラボあるんでしょ?家、片付けておいたよ」
衝撃の正体は女の子だった、よく見ると制服を身につけている。身長や雰囲気は中学生には見えない、とすると高校生か。
さっきこの娘わしのことお母さんって呼んだんか?
わし、お母さんになったんか?
「あ、ありがとう」
片付けをしてくれたという情報を頼りに、無難な返事を返す。
そして、新たな情報を求めて、五感をフルに活用する。
パンの焼けた香ばしいいい香りがする。
わしを起こしてきた綺麗な長い黒髪を持った娘はわしが起きたことを確認すると扉から出ていった。壁にかけてある時計は六時をさしている。わしが寝ている場所は寝室というより、自分の部屋という印象を受ける。ただ部屋の半分ほどの面積を巨大な箱が占めている。
体を起こし、その箱に近づくと扉があることがわかった。これが、個室のような役割の箱だということを理解する。中に入るとクッション性の大きめな椅子とデスクがあり上には二枚のモニターとキーボード、マウスが置かれてある。モニターの後ろからはアームが伸びており、先端にはマイクが付いている。
「なんやこの独房」
この部屋にあるのは独房とベットだけか、それにしても飾り気のない部屋やなぁ、あとで水墨画でも飾ってやるか。
めぼしいものは大体見尽くしてしまった。これ以上の情報を得るためにはここから出なければいけない。
スマホぐらい見つけられたらよかったけど、見つからんしなぁ
扉を開けると、パンの香りが強くなる、右と左に廊下が伸びており、左には玄関が見える。右にはまた複数の扉があり、一番奥の扉からは人の動いてる音が聞こえる。
家の作り的を見ると、マンションだということが予想できる。
窓からの景色見とけばよかった。
それにしても、あの娘に会って話を合わせられる気がせん。制服をきてたから今日は学校に行く日ってことやろ、派手に動くのはあれが学校に行った後やな。
あの娘が学校に行くまでの間に、人気のない他の三つの扉を開けて回る。一つはトイレ、一つは風呂や洗濯機のある部屋につながっていた、そして一つはあの娘の部屋らしかった。
中にはベットやぬいぐるみ、タンス、本棚、勉強机と、大方なんの変哲もない普通の部屋という印象。
そんな部屋にも変わっているところが何個かあった。
まず、本棚に本が置かれているのが一段だけ。そして4段中3段にはマネキンの頭がずらりと置かれている。マネキンはそれぞれ髪型が少しづつ違う。本棚に入っている本も髪に関係したものが多い。もう一つは勉強机の上、アニメのキャラクターのような人物のものが飾られている。全て同じキャラクターのようだ。
「これは、このキャラの名前か?ブイティー、ウバー?いや、これはアニメの名前か。このキャラの名前はこっちの『烏羽玉之アコ二タム』か?これは名前と言っていいんか?」
昨今のキャラクターはついに名前に枕詞が入るようになったか。
そんなことを考えていると、不意に背後から声がかかる。
「何してんの?お母さん」
「いや、何も」
「学校行ってきます。今日はコラボの邪魔しないようお父さんの家に泊まりますね。」
「口調変わった?」
「?、うん。外行きハミちゃんモードですよ?」
なんやそのモード。そんな当たり前でしょ?みたいな顔せんでくれ
「せやったな」
「ふっ。行ってきまーす」
「行ってらっしゃい」




