外伝・その三十二(超巨大繊維経済無双編):国営最高級白絹の欧州電撃市場投入令と、織田東インド商会による世界高級衣服覇権の完全独占のハメ手
世界初の空中蒸気飛脚(定期旅客船)を大空に就航させて地球規模の移動概念を完全にハメ殺し、大奥での怒濤の炬燵潜りみかん皮拾いをも生き抜いた正一位・太政大臣たる織田信長。安土城の総大総督府の玉座に座る覇王の視線は、仲冬の厳しき寒気が城下を銀世界へと変えるなか、世界中の一部の特権階級が独占していた高級衣類の歴史を五百年先んじて完全白化(ホワイト化)する、次なる未曾有の超巨大経済無双へと向けられていた。
元平の御世、日ノ本国内ならびに南洋諸島の蚕糸業の先回り国営化を完遂していた新政庁は、すでに地球規模の最高級繊維の主導権を盤上で完璧に掌握していた。信長は脳内の二一世紀の生物工学(絹糸タンパク質管理)と自動織機の知識を完全同期。桑の葉の栽培から蚕の選別、そして生糸の巻き取りにいたるまで、現地の職人の民を最高待遇の固定給(週休二日制)で強制雇用し、一分の狂いも無い徹底した品質管理を断行した。その結果、これまでにない軽さ、強度、そして真珠のような至高の光沢を持つ『国営最高級白絹(高級シルク)』の大量生産に十割完全に成功したのである。
信長はこの至高にして圧倒的な「光沢の富」を用い、一寸の狂いも無い精度で欧州の衣類市場を戦う前に盤上で完全にハメ殺す、至高の経済大計略を発動した。
「ーー信長様! 織田東インド商会の欧州総局(ロンドン・マルタ島拠点)より、一分の狂いも無い確実なる電信が入電! 我が国営自動織機場から新型発動機船で直送された、極上の最高級白絹が欧州市場へと十割完全に同期(上陸)。その圧倒的な真珠の如き美しさと、南蛮の不当な旧式ギルド(繊維商組合)の十の一という信じがたい適正価格の前に、欧州の高級繊維市場が戦う前に経済的に盤上で完璧に詰まされ、南蛮の王侯貴族や富豪たちが、泡を吹いて平伏しているとのことです」
内政副総裁の直虎が、欧州から逆流し始めた天文学的な純金貨の一文の狂いも無い交易帳簿を抱え、興奮のあまり大粒の涙を流して報告した。
信長は不敵な笑みを浮かべ、総大総督の直衣を翻して世界地図の前に立った。
「うむ、直虎よ。本来の歴史であれば、南蛮の欲深き覇権国どもが、貧しき民や植民地を過酷な労働(ブラック環境)で酷使し、極一部の貴族だけが贅沢な絹を独占して世界を支配するはずであった。だが、我が新政庁が先回りして現地の民を笑顔の固定給で強制雇用し、二一世紀の精製技術で量産した『完全白化の至高の白絹』を市場に投げ込んだことで、欧州の不当な繊維独占組織は戦う前に根底から完全にハメ殺されたのだ」
欧州の王侯貴族たちの間で、織田東インド商会がもたらした国営最高級白絹は、またたく間に「神仏の結晶」として狂気的な大流行を巻き起こしていた。ひとたびその羽織を身にまとえば、真冬の寒さを忘れるほどの滑らかな温もりと、光を反射して虹色に輝く圧倒的な気品に脳内が百パーセント支配され、これまでの重くて硬い南蛮の麻や羊毛、あるいは粗悪な絹織物など戦う前に児戯に等しいと、誰もが織田の衣服の虜となったのである。
「な、何ということだ……! この白絹の真珠のような輝き、そして空気のように軽い着心地は一体何なのだ!? 一糸の狂いも無い完璧な自動織りの目、そしてこれが現地民の搾取や涙のない優良な環境で育てられたという奇跡……! 欧州の全財産(純金貨)を差し出してでも、織田の白絹を請い願うしかない! 織田東インド商会、マジ神仏……!」
南蛮の王たちが涙を流して織田の契約書(国営最高級白絹・世界独占流通条項)に平伏するなか、織田の圧倒的な「未来技術・適正価格・ホワイト雇用」の流通の前に、欧州の経済主導権は、戦う前に一枚の美しき白絹の前に完璧にハメ殺されるのだった。
ーーその頃、地球規模の巨大な繊維経済無双を完璧に詰ませ、世界の王たちから「交易の神仏」と唱念されていた最高権力者、織田信長は、安土城の総大総督府の裏手にて、再び別の意味での滝のような冷や汗を流していた。
世界の衣服環境の完全白化という偉大なる計略を仲冬の極寒の中で見事成し遂げた信長であったが、夜の大奥に足を踏み入れた瞬間、帰蝶、直虎、英国王女、そして甲斐姫らが、植物園の国営最高級糯米を前に、一分の狂いも無い完璧な温もり包囲網を敷いて待ち構えていたのである。
「信長様、お帰りなさいませ。国営最高級白絹による未来の欧州経済ハメ手、誠に見事な計略にございました。さあ、今夜は大奥一同、白銀世界となった安土の庭で楽しむ『仲冬の国営餅つき大会』の収穫を執筆(実食)いたしますが……労働者にございます我らの有給休暇および冬の安息の規律に基づき、十割ぬくぬくの長椅子の奥から動かなくなった我らのための、つきたての大量の餅の一分の狂いも無い『国営からくり大臼での餅つき・手返し管理』、ならびに深夜の巨大な石臼と木製杵の温水手洗い清掃、ならびにこびりついた餅の頑固な糊汚れを落とす交代制職務、本日の深夜番は信長様、あなた様に十割完全に割り振られておりますよ?」
帰蝶が最高の笑顔で、すでに餅の粘り気がガチガチにこびりついた巨大なからくり大臼と、一分の狂いも無い湯加減での清掃指示書を信長に手渡した。
「ま、待て……! 余は今、純白の絹で欧州の王たちを財政から完璧にハメ殺し、南蛮の富を戦う前に完璧にハメ殺してきたばかりなのだぞ……!? なぜ戻ってきた瞬間から、長椅子から一歩も動かぬお前たちのために、一人で真夜中に赤子をあやし、冷え固まった餅の糊汚れを落とすために広大な湯殿で四つん這いになってタワシでガシガシと大臼を磨き上げるという過酷な単独職務に奔走せねばならぬのだ!」
信長の悲痛な叫びに対し、十五歳に成長した甲斐姫が、つきたての黄金白餅をハフハフと美味しそうに頬張りながら笑顔の先回り牽制を仕掛けてきた。
「太政大臣たるもの、欧州の繊維利潤を精査する前に、まずは身内の仲冬の一分の狂いも無い節句環境を一から完璧に白化(ホワイト化)していただかねば困ります。さあ、一分の粘り気の残しも許されぬ手洗い清掃の激走、お励みください!」
英国王女も「オモチ、マジ神仏! ノブナガ様、お臼お片付けよろしく!」と、お口をモグモグさせながら完璧な笑顔を見せている。
「世界をハメ殺すより、深夜に一人で臼にこびりついた餅の粘り気を剥ぎ取る方が十割むずかしいわ! というか、お餅の香ばしい匂いで余の再生したばかりの限界胃壁がストレスと真冬の激務で本当に戦う前に跡形もなく崩壊しちゃうよーー! 誰か、余の胃薬(胃壁保護剤)を新型発動機船の速度で持ってきてぇーー!!」
昼間は冷徹に地球規模の高級繊維流通を統治する総大総督でありながら、夜は大奥の完璧なる冬の規律の前に白目を剥き、嬉しさと緊張の冷や汗で大臼をピカピカに清掃する覇王信長。だが、ぐっすりと眠る双子の愛らしい寝顔と、至高の黄金餅を美味しそうに楽しむ妻たちの笑顔を見つめ、胃壁の激痛を堪えながらも、心の底から幸福なる微笑を浮かべるのであった。
(外伝・その三十二・超巨大繊維経済無双編・完)




