外伝・その三十一(超大規模技術無双編):世界初たる国営空中蒸気飛脚の定期運航令と、大空の覇権を掌握して世界をハメ殺す新政庁の大物流大計
天竺の国営白木綿で世界の衣類環境を完全にハメ殺し、大奥での怒濤の焼き芋大会の深夜の炭消しをも生き抜いた正一位・太政大臣たる織田信長。大台の三十話を超えて新たなる幕開けを迎えた安土城の総大総督府の玉座に座る覇王の視線は、初冬の澄み切った寒気が城下を白く染めるなか、人類の移動と物流の歴史を五百年先んじて完全白化(ホワイト化)する、次なる未曾有の超特大技術チートへと向けられていた。
元平の御世、『国営空中飛脚(情報中継用熱気嚢)』は、地球全域の情報の死角を十割完全にハメ殺していた。しかし、信長の持つ二一世紀の知識は、単なる情報のやり取りだけに満足するものではなかった。広大無辺なる織田の版図を金一文、一割の狂いも無い精度で統治するためには、情報だけでなく「人間や最重要物資」をも、陸路や海路の障壁を十割無視して大空から爆速で輸送するという、前代未聞の航空物流網の構築が必要不可欠であった。
信長は脳内の流体力学、航空安全管理、そして熱効率学の知識を完全同期。国友鍛冶の天才たちと共に、従来の絹布をさらに強化した特製の多層漆塗り防炎絹布と、軽量小型化に成功した不滅の『国営蒸気発動機』を組み合わせ、人間を数十名乗せて自在に大空を巡航できる世界初の巨大大空旅客船ーー『国営空中蒸気飛脚』を開発し、その世界全域への定期運航を電撃的に発令したのである。
「ーー信長様! 畏れながら、安土と霧の都ロンドン、新大陸『東日の本州』、そして喜望峰をわずか数日の空路で結ぶ定期旅客網が十割完全に稼働! 海路で数ヶ月を要していた世界移動のブラック環境を、戦う前に大空の盤上で完璧にハメ殺しました(完成させました)!」
空中旅客総局の初代総裁に就任した近代官僚(蒲生氏郷ら)が、からくり高度計を胸に抱き、興奮のあまり大粒の涙を流して玉座の前に平伏した。
信長は不敵な笑みを浮かべ、総大総督の直衣を翻して安土城の天守閣(国営大空管制塔)の最前線へと立った。
そこには、初冬の冷たく澄んだ大空へ向けて、蒸気発動機の規則正しい重低音を響かせ、からくり推進器を爆速で回転させながら悠然と浮上していく黄金色の巨大な空中船が、一分の狂いも無い安全管理(交代制操縦職務)のもとで進発していた。これこそが、二一世紀の旅客機の概念を五百年先んじて具現化させた、地球初の『国営空中定期便』であった。
「うむ、氏郷よ。一分の狂いも無い見事なからくり職人技であるな。南蛮の欲深き王侯貴族どもが、嵐に怯えながら風頼みの帆船で数ヶ月の命懸けの航海を強いられているブラックな時代において、我が新政庁はすでに『大空の不滅の回廊』によって世界を完璧にハメ殺したのだ。これより、各国の最重要人物や我が新政庁の近代官僚たちを爆速で即時同期(輸送)させ、世界経済の速度を極限まで加速させる!」
信長が発令した大空の定期便により、新大陸の最高級精肉や天竺の極上紅茶が、一割の鮮度も損なうことなく僅か数日で安土へと直接同期(空輸)された。さらに、ロンドンから安土への外交移動も、海難事故の恐れが一切無い完全白化された大空の旅へと超進化したのである。この圧倒的な大空の奇跡を目撃していた世界中の商神や、空中船に搭乗した武田勝頼ら近代官僚たちは、驚愕のあまり泡を吹いてその場にひっくり返った。
「な、何ということだ……! 雲を突き抜け、鳥よりも速く大洋を越えて、気がつけば安土の玉座の前に到着しているだと!? 我々が数百年かけて培ってきた航海の常識など、この空中蒸気飛脚の前には戦う前に児戯に等しい! 織田の技術内政、マジ神仏……!」
南蛮の商神たちが涙を流して管制塔の床に平伏するなか、信長が提示したのは、世界を恐怖させる軍事力ではなく、新政庁が全額保証する『国営空中旅客・地球全域安全航空の共有基本法度』であった。
他国が移動の過酷さと時間のブラックな浪費に喘いでいる段階で、新政庁は地球規模の要人を笑顔のまま数日で一箇所に集め、先回りの経済会議を執り行うことができる。織田の圧倒的な「未来技術・生存保証・ホワイト雇用」の航空物流の前に、欧州の旧式な世界覇権は、戦う前にこの大空を激走する黄金の空中船の前に完璧にハメ殺されるのだった。
ーーその頃、地球規模の巨大な大空物流無双を空中から完璧に詰ませ、世界の民から「天空の神仏」と唱念されていた最高権力者、織田信長は、安土城の総大総督府の裏手にて、再び別の意味での滝のような冷や汗を流していた。
世界の移動環境の完全白化という偉大なる計略の新たなる幕開けで見事成し遂げた信長であったが、夜の大奥に足を踏み入れた瞬間、帰蝶、井伊直虎、英国王女、そして成田家から赴任してきた甲斐姫らが、本格的な真冬の寒さを凌ぐために設置された、大奥特製の超巨大「からくり国営特大炬燵」を前に、一分の狂いも無い完璧な温もり包囲網を敷いて待ち構えていたのである。
「信長様、お帰りなさいませ。国営空中蒸気飛脚による未来の大空物流ハメ手、誠に見事な計略にございました。さあ、今夜は大奥一同、国営植物園で収穫された世界中の極上蜜柑を剥きながら温まる『初冬の国営炬燵開き大会』の熱戦を執筆(開催)いたしますが……労働者にございます我らの有給休暇および初冬の安息の規律に基づき、十割ぬくぬくの炬燵の中から一歩も動かなくなった我らのための、大量の炬燵の一分の狂いも無い『炭火・温度のからくり管理』、ならびに深夜の炬燵の敷物の下に散らばった数千個の蜜柑の皮の国営手拾いと敷物の手洗い片付けの交代制職務、本日の深夜番は信長様、あなた様に十割完全に割り振られておりますよ?」
帰蝶が最高の笑顔で、すでに蜜柑の汁と皮で散らばった広大な特大炬燵と、一分の狂いも無い手拾いでの清掃指示書を信長に手渡した。
「ま、待て……! 余は今、地球の大空に不滅の定期便を走らせ、世界の物流概念を戦う前に完璧にハメ殺してきたばかりなのだぞ……!? なぜ戻ってきた瞬間から、炬燵から一歩も動かぬお前たちのために、一人で真夜中に赤子をあやし、冷え固まった蜜柑の皮の酸っぱいゴミを拾うために広大な炬燵の中に潜り込み、四つん這いになってタワシでガシガシと畳を磨くという過酷な単独職務に奔走せねばならぬのだ!」
信長の悲痛な叫びに対し、十五歳に成長した甲斐姫が、蜜柑の皮を美しく剥きながら笑顔の先回り牽制を仕掛けてきた。
「太政大臣たるもの、空中旅客の利潤を精査する前に、まずは身内の初冬の一分の狂いも無い衛生環境を一から完璧に白化(ホワイト化)していただけないと困ります。さあ、一皮の拾い残しも許されぬ炬燵の中の潜行の激走、お励みください!」
英国王女も「コタツ、マジ神仏! ノブナガ様、みかんの皮お片付けよろしく!」と、炬燵の中で丸くなりながら完璧な笑顔を見せている。
「世界をハメ殺すより、深夜に一人で大奥の炬燵のみかんの皮を拾う方が十割むずかしいわ! というか、蜜柑の匂いで余の再生したばかりの限界胃壁がストレスと初冬の激務で本当に戦う前に跡形もなく崩壊しちゃうよーー! 誰か、余の胃薬(胃壁保護剤)を空中蒸気飛脚の爆速で持ってきてぇーー!!」
昼間は冷徹に地球規模の天空物流を統治する総大総督でありながら、夜は大奥の完璧なる冬の規律の前に白目を剥き、嬉しさと緊張の冷や汗で炬燵の中をピカピカに清掃する覇王信長。だが、ぐっすりと眠る子どもたちの愛らしい寝顔と、至高の炬燵開きを楽しそうに満喫する妻たちの笑顔を見つめ、胃壁の激痛を堪えながらも、心の底から幸福なる微笑を浮かべるのでであった。
(外伝・その三十一・超大規模技術無双編・完)




