外伝・その三十三(超巨大通信地政学チート編):第二期国営海底電信線・大西洋環状線の敷設令と、大洋を包囲して世界をハメ殺す百パーセント多重同期
国営最高級白絹で欧州の貴族たちを財政から完璧にハメ殺し、大奥での怒濤の餅つき大臼糊汚れ落としをも生き抜いた正一位・太政大臣たる織田信長。安土城の総大総督府の玉座に座る覇王の視線は、真冬の峻烈なる寒波が地球全域を包み込むなか、世界の情報地政学の歴史を五百年先んじて完全白化(ホワイト化)する、次なる未曾有の地球規模通信チートへと向けられていた。
元平の御世、新政庁が第一期工事として敷設した海底電信線、ならびに大空を巡る空中蒸気飛脚は、世界の情報伝達速度を一瞬で同期させていた。しかし、信長の持つ二一世紀の電気通信知識は、単一の通信路だけで満足するものではなかった。大洋の底を這う一本の鉄線は、不意の海底地震や異国の欲深き不穏分子による破壊、あるいは通信の集中による遅延という、予期せぬ停滞(ブラック環境)の危険性を孕んでいたのである。
信長は地球規模の版図を一文の狂いも無い精度で永久に統治するため、脳内の長距離多重通信知識を完全同期。国友鍛冶の天才たちと共に、より強固な鋼線と天然ゴムの多層絶縁被覆を開発し、大西洋をぐるりと一周して新大陸『東日の本州』、喜望峰、霧の都ロンドン、そして安土を完全に二重化された鉄線で緊密に結ぶ、前代未聞の海底大工事ーー『第二期国営海底電信線(大西洋環状線)』の敷設を電撃的に発令したのである。
「ーー信長様! 遠洋通信総指揮の明智光秀殿より電信! 大西洋の底を包囲する二重の不滅の鉄線が十割完全に繋がり、地球規模の『多重同期網』が、戦う前に盤上で完璧に完成いたしました!」
内政副総裁の直虎が、安土城の最奥に設置された新型のからくり多重電信印字機の前にて、興奮のあまり大粒の涙を流して平伏した。
信長は不敵な笑みを浮かべ、総大総督の直衣を翻してその巨大な電信盤の前に立った。
「うむ、直虎よ。南蛮の国々や欲深き大国どもが、海の向こうからの報告を一通受け取るために、不確実な航海に数ヶ月を費やしている暗黒の時代において、我が新政庁はすでに一本の断線すら十割先回り封殺する不滅の通信回廊(環状線)を完成させたのだ。これで地球規模の情報覇権は、一兵も損なうことなく我が新政庁の盤上で完全に詰んだ」
信長が自ら電信の鍵盤を叩き、新大陸の東日の本州総局へ向けて新年の流通規律を送信した。その僅か数秒後、電信機が「カタカタカタ……!」と激しく音を立て、万が一の遅延も無く、新大陸からの即時返答を一分の狂いも無い精度で印字し始めたのである。
その様子を目撃していた武田勝頼や上杉謙信ら近代官僚、そして安土に滞在していた世界中の商神たちは、驚愕のあまり腰を抜かしてその場にひっくり返った。
「な、何ということだ……! 海底の鉄線を二重に巡らせて環状に繋ぐことで、片方の鉄線が海の藻屑となろうとも、もう片方の道から情報が鳥の羽ばたきよりも速く同期するというのか!? 我々が数ヶ月かけて運んでいた情報は、戦う前にすべて過去のものとなった……! 織田の通信地政学、マジ神仏……!」
南蛮の商神たちが涙を流して畳の床に平伏するなか、信長が提示したのは、世界を恐怖させる軍事力ではなく、新政庁が全額保証する『国営海底大西洋環状線・地球全域多重情報共有の基本法度』であった。
他国が連絡の遅れによって作戦の齟齬をきたしている段階で、新政庁はその日のうちにすべての状況を他重に把握し、先回りのハメ手を打つことができる。織田の圧倒的な「未来技術・即時同期・ホワイト雇用」の情報の前に、欧州の外交覇権は、戦う前にこの電信線の微かな電流の前に完璧にハメ殺されるのだった。
ーーその頃、地球規模の巨大な通信無双を完璧に詰ませ、世界の民から「情報の神仏」と唱念されていた最高権力者、織田信長は、安土城の総大総督府の裏手にて、再び別の意味での滝のような冷や汗を流していた。
世界の完全白化という偉大なる計略を成し遂げた信長であったが、夜の大奥に足を踏入れた瞬間、帰蝶、井伊直虎、英国王女、そして甲斐姫らが、本格的な真冬の寒さを凌ぐために設置された、大量の「国営特製真鍮湯たんぽ」を前に、一分の狂いも無い完璧な温もり包囲網を敷いて待ち構えていたのである。
「信長様、お帰りなさいませ。大西洋の二重の鉄線による未来の情報ハメ手、誠に見事な計略にございました。さあ、今夜は大奥一同、真冬の寒さを布団の中から芯から温める『真冬の国営湯たんぽ配備大会』の温もりを執筆(実食)いたしますが……労働者にございます我らの有給休暇および冬の安息の規律に基づき、十割黄金の布団の中に潜って動かなくなった我らのための、大量の湯たんぽの一分の狂いも無い『深夜の熱湯沸かし・全個体への注水・からくり温度管理』、ならびに翌朝の全手洗い片付けの交代制職務、本日の深夜番は信長様、あなた様に十割完全に割り振られておりますよ?」
帰蝶が最高の笑顔で、大奥の湯殿を埋め尽くす大量の真鍮製湯たんぽと、一分の狂いも無い熱湯の注水指示書を信長に手渡した。
「ま、待て……! 余は今、大西洋の底に二重の電信線を敷き詰め、世界の覇権国を戦う前に完璧にハメ殺してきたばかりなのだぞ……!? なぜ戻ってきた瞬間から、布団から一歩も動かぬお前たちのために、一人で真夜中に赤子をあやし、火傷に怯えながら数千個の湯たんぽに熱湯を四つん這いになって漏斗で一人で注ぎ続けるという過酷な単独職務に奔走せねばならぬのだ!」
信長の悲痛な叫びに対し、十五歳に成長した甲斐姫が、湯たんぽの心地よい温もりに頬を寄せながら笑顔の先回り牽制を仕掛けてきた。
「太政大臣たるもの、国営多重電信の利潤を精査する前に、まずは身内の真冬の一分の狂いも無い夜間の就寝環境を一から完璧に白化(ホワイト化)していただかねば困ります。さあ、一滴の狂いも許されぬ熱湯注水の激走、お励みください!」
英国王女も「ユタンポ、マジ神仏! ノブナガ様、お湯入れよろしく!」と、お布団に包まりながら完璧な笑顔を見せている。
「世界をハメ殺すより、深夜に一人で数千個の湯たんぽに熱湯を注ぐ方が十割むずかしいわ! というか、湯気で余の再生したばかりの限界胃壁がストレスと真冬の激務で本当に戦う前に跡形もなく崩壊しちゃうよーー! 誰か、余の胃薬(胃壁保護剤)を環状電信の速度で持ってきてぇーー!!」
昼間は冷徹に地球規模の通信網を統治する総大総督でありながら、夜は大奥の完璧なる冬の規律の前に白目を剥き、嬉しさと緊張の冷や汗で湯たんぽに熱湯を注ぎ続ける覇王信長。だが、ぐっすりと眠る双子の愛らしい寝顔と、至高の温もりを美味しそうに楽しむ妻たちの笑顔を見つめ、胃壁の激痛を堪えながらも、心の底から幸福なる微笑を浮かべるのでであった。
(外伝・その三十三・超巨大通信地政学チート編・完)




