外伝・その二十九(地球規模空路チート編):世界初たる国営空中飛脚の浮上令と、情報の死角を大空からハメ殺す内陸即時同期の計略
国営純白砂糖の圧倒的な富によって欧州の利権を盤上で完璧にハメ殺し、大奥での怒濤の流し素麺の竹筒千本乾燥をも生き抜いた正一位・太政大臣たる織田信長。安土城の総大総督府の玉座に座る覇王の視線は、仲秋の爽やかな秋風が城下を優しく吹き抜けるなか、世界の情報と地政学の歴史を五百年先んじて完全白化(ホワイト化)する、次なる未曾有の通信技術チートへと向けられていた。
元平の御世、新政庁が地球規模で敷設した海底電信線は、世界の主要都市を一瞬で繋ぎ、驚異的な即時同期を可能にしていた。しかし、地球規模の支配を完璧なものとする上で、依然として残されていた死角……それが「険しい山岳地帯や広大なる内陸の開拓地」であった。鉄線を引くことが極めて困難な大山脈の向こう側や大砂漠の奥地では、異国や不穏分子による情報の不当な隠蔽(ブラック環境)や不当な国境紛争の火種が燻る恐れがあったのである。
信長はこの地政学的な死角を根底からハメ殺すため、二一世紀の航空力学、気象学、そして通信工学の知識を完全同期。国友鍛冶の特製絹布(気密性を極限まで高めた漆塗り絹)と、発動機の排熱を組み合わせ、大空高く浮上して電信信号を中継する世界初の航空組織ーー『国営空中飛脚総局』を設立した。
「ーー信長様! 畏れながら、大空を不滅の拠点とする『国営浮揚巨大熱気嚢』の配備に十割完全に成功! 陸路で数ヶ月かかる大山脈を越え、内陸奥地の全状況を一文の狂いも無い精度で安土へ即時同期(中継)する大空の計略、ここに完成いたしました!」
空中飛脚総局の初代総裁に就任した近代官僚(蒲生氏郷ら)が、からくり遠眼鏡(望遠鏡)を抱え、興奮のあまり大粒の涙を流して玉座の前に平伏した。
信長は不敵な笑みを浮かべ、総大総督の直衣を翻して安土城の天守閣(からくり管制塔)の最前線へと立った。
そこには、大空高く悠然と浮かび上がり、太陽の光を浴びて黄金色に輝く巨大な熱気嚢が、一分の狂いも無い規則性をもって列を成していた。これこそが、二一世紀の空中中継の概念を具現化させた日ノ本初、否、全人類初の空中通信網であった。
「うむ、氏郷よ。一分の狂いも無い見事なからくり職人技であるな。南蛮の欲深き王侯貴族どもが、険しい山岳の陰に隠れて不正な軍備を整え、情報が届かぬことを良いことに現地民を掠奪しているブラックな時代において、我が新政庁はすでに『大空の天網』によって世界を完璧にハメ殺したのだ」
信長が自ら天守の電信盤(鍵盤)を叩き、遥かユーラシア大陸の内陸奥地に浮かぶ空中飛脚へ信号を送った瞬間、上空の気嚢から一文の狂いも無い電流の脈動(電信中継)が走り、海底電信線へと同期。異国が書状を届けるのに数ヶ月を要している段階で、新政庁は「地球上のあらゆる内陸の動き」をその日のうちに安土の玉座で百パーセント完全に把握(ホワイト化)したのである。
この圧倒的な大空の奇跡を目撃していた世界中の商神や各国の使節たちは、驚愕のあまり泡を吹いてその場にひっくり返った。
「な、何ということだ……! 織田の新政庁は、海を繋ぐだけでなく、大空をも不滅の電信路にして世界の死角を戦う前に完全にハメ殺したというのか!? 我々が数百年かけて構築してきた内陸の防衛概念など、この空中飛脚の前には戦う前に児戯に等しい! 織田の通信内政、マジ神仏……!」
南蛮の商神たちが涙を流して天守の床に平伏するなか、信長が提示したのは、世界を侵略するための武力ではなく、新政庁が全額保証する『国営空中飛脚・地球全域即時情報共有の基本法度』であった。
他国が情報の遮断による不当な隠蔽で私腹を肥やしている段階で、新政庁はその日のうちに不滅の先回りの計略を打ち、平和的に状況を白化できる。織田の圧倒的な「未来技術・即時同期・ホワイト雇用」の情報の前に、欧州の内陸外交覇権は、戦う前にこの大空に浮かぶ黄金の気嚢の前に完璧にハメ殺されるのだった。
ーーその頃、地球規模の巨大な通信無双を空中から完璧に詰ませ、世界の民から「天空の神仏」と唱念されていた最高権力者、織田信長は、安土城の総大総督府の裏手にて、再び別の意味での滝のような冷や汗を流していた。
世界の情報の完全白化という偉大なる計略を仲秋の澄み切った空の下で成し遂げた信長であったが、夜の大奥に足を踏み入れた瞬間、帰蝶、直虎、英国王女、そして甲斐姫らが、安土の夜空に美しく輝く中秋の名月を前に、一分の狂いも無い完璧な温もり包囲網を敷いて待ち構えていたのである。
「信長様、お帰りなさいませ。国営空中飛脚による未来の天空情報ハメ手、誠に見事な計略にございました。さあ、今夜は大奥一同、満月を愛でながら至高の甘味を楽しむ『仲秋の国営月見団子大会』の収穫を執筆(実食)いたしますが……労働者にございます我らの有給休暇および秋の安息の規律に基づき、十割長椅子(畳敷きの月見台)の上に潜って動かなくなった我らのための、大量の団子の一分の狂いも無い『国営からくり臼での粉挽き・蒸し・丸め管理』、ならびに深夜の長椅子の下に転がり落ちた数千個の団子の手拾いと、庭園の敷物の手洗い清掃の交代制職職務、本日の深夜番は信長様、あなた様に十割完全に割り振られておりますよ?」
帰蝶が最高の笑顔で、すでに食べ散らかされ、長椅子の下の暗闇に転がっていった大量の団子の山と、一分の狂いも無い手拾い清掃指示書を信長に手渡した。
「ま、待て……! 余は今、地球の大空に空中飛脚の網を敷き詰め、世界の隠蔽国家を戦う前に完璧にハメ殺してきたばかりなのだぞ……!? なぜ戻ってきた瞬間から、月見台から一歩も動かぬお前たちのために、一人で真夜中に赤子をあやし、冷え固まって畳の隙間に挟まった数千個の団子を四つん這いになって爪先で一人で拾い上げるという過酷な単独職務に奔走せねばならぬのだ!」
信長の悲痛な叫びに対し、十五歳に成長した甲斐姫が、黄金色に輝くみたらし団子を口に含みながら笑顔の先回り牽制を仕掛けてきた。
「太政大臣たるもの、空中飛脚の中継利潤を精査する前に、まずは身内の仲秋の一分の狂いも無い節句環境を一から完璧に白化(ホワイト化)していただかねば困ります。さあ、一粒の隙間も見落とせぬ手拾いの激走、お励みください!」
英国王女も「ダンゴ、マジ神仏! ノブナガ様、お団子拾いよろしく!」と、長椅子の上で丸くなりながら完璧な笑顔を見せている。
「世界をハメ殺すより、深夜に一人で長椅子の下に落ちた団子を千個拾う方が十割むずかしいわ! というか、団子の甘い匂いと秋の夜風の冷たさで余の再生したばかりの限界胃壁がストレスと秋の激務で本当に戦う前に跡形もなく崩壊しちゃうよーー! 誰か、余の胃薬(胃壁保護剤)を空中飛脚の速度で持ってきてぇーー!!」
昼間は冷徹に地球規模の天空通信を統治する総大総督でありながら、夜は大奥の完璧なる秋の規律の前に白目を剥き、嬉しさと緊張の冷や汗で床をピカピカに磨き上げる覇王信長。だが、ぐっすりと眠る子どもたちの愛らしい寝顔と、至高の月見団子を楽しそうに振り返る妻たちの笑顔を見つめ、胃壁の激痛を堪えながらも、心の底から幸福なる微笑を浮かべるのであった。
(外伝・その二十九・地球規模空路チート編・完)




