外伝・その二十五(地球規模気象チート編):世界初たる国営気象観測線の発令と、大嵐を先回り予報でハメ殺す不滅の海難防止令
豪州の大国営牧場から極上の羊毛(高级ウール)を欧州へ電撃投入し、大奥での数千体の雛人形の深夜箱詰めをも生き抜いた正一位・太政大臣たる織田信長。安土城の総大総督府の玉座に座る覇王の視線は、初春の柔らかな陽光が城下を暖かく包み込むなか、世界の海運と安全管理の歴史を五百年先んじて完全白化(ホワイト化)する、次なる未曾有の地球規模天候チートへと向けられていた。
元平の御世、新政庁の新型発動機船は大西洋やインド洋を無音・爆速で往来し、大洋の底を這う海底電信線によって、世界の情報はすでに百パーセント即時同期されていた。しかし、日ノ本をはじめとする大洋の航海において、依然として最大の障壁であり続けたのが、自然の猛威ーーすなわち『台風(猛烈な低気圧の大嵐)』であった。
突如として襲い来る大嵐は、どれほど強固な鉄甲船であっても過酷な海難事故へと巻き込み、沿岸の民の暮らしを破壊するブラック環境の最たるものであった。信長はこの天災の脅威を根底からハメ殺すため、二一世紀の気象学、海洋学、そして熱力学の知識を完全同期。地球規模の気圧、水温、風向きを一分の狂いも無い精度で即時同期する世界初の気象予報組織ーー『国営気象観測総局』を設立した。
「ーー信長様! 畏れながら、南洋に配備した観測船と海底電信線を同期させ、数日後に日ノ本へと襲来する『猛烈な大嵐(台風)』の正確な進路と規模を、戦う前に完全に予測(ハメ手)いたしました!」
気象観測総局の初代総裁に就任した近代官僚(武田勝頼ら)が、からくり気圧計を抱え、興奮のあまり大粒の涙を流して玉座の前に平伏した。
信長は不敵な笑みを浮かべ、総大総督の直衣を翻して安土のからくり電信印字機の前に立った。
「うむ、勝頼よ。一分の狂いも無い見事な予報であるな。南蛮の欲深き航海士どもが、空の雲の動きに右往左往し、突発的な大嵐によって船ごと海の藻屑(過労死)となっている数百年先の未来において、我が新政庁はすでに『天候の盤面』すら完璧にハメ殺したのだ。これより、全海域の国営商船、および沿岸の民へ向けて『不滅の国営海難防止令(先回り避難令)』を発令する!」
信長が自ら電信の鍵盤を叩き、地球規模の全中継基地、ならびに航行中のすべての新型発動機船へ向けて、一分の狂いも無い避難指示を送信した。その僅か数時間後、大嵐の予測進路に位置していたすべての織田の船舶は、最寄りの安全な国営港湾へと十割完全に退避(同期)を完了したのである。
その後、予報通りに猛烈な暴風雨が安土の沖合を通過していったが、事前に完璧な防波堤の補強と避難を終えていた新政庁の損害は、金一文、一割の狂いも無く『皆無』であった。この圧倒的な天候制御の奇跡を目撃していた世界中の商神たちは、驚愕のあまり腰を抜かしてその場にひっくり返った。
「な、何ということだ……! 目に見えぬ数日後の大嵐の進路を神仏の如き精度で先回り予報し、一兵も損なうことなく完全にハメ殺したというのか!? 我々が数百年かけて培ってきた海の経験など、織田の気象内政の前には戦う前に児戯に等しい! 織田の新政庁、マジ神仏……!」
南蛮の商神たちが涙を流して畳の床に平伏するなか、信長が提示したのは、世界を恐怖させる軍事力ではなく、新政庁が全額保証する『国営気象情報・地球規模安全航行の共有契約書』であった。
他国が嵐の恐怖に怯え、運を天に任せて航海している段階で、新政庁の船員たちは常に安全で笑顔のまま、嵐を先回り封殺して最短距離で世界を往来できる。織田の圧倒的な「未来技術・生存保証・ホワイト雇用」の天候管理の前に、欧州の旧式な航海概念は、戦う前にこの不滅の海難防止令の前に完璧にハメ殺されるのだった。
ーーその頃、地球規模の巨大な天候無双を完璧に詰ませ、世界の民から「気象の神仏」と唱念されていた最高権力者、織田信長は、安土城の総大総督府の裏手にて、再び別の意味での滝のような冷や汗を流していた。
世界の完全白化という偉大なる計略を初春の安土で成し遂げた信長であったが、夜の大奥に足を踏み入れた瞬間、帰蝶、直虎、英国王女、そして甲斐姫らが、安土城の周囲に瑞々しく満開となった桜の木々を前に、一分の狂いも無い完璧な温もり包囲網を敷いて待ち構えていたのである。
「信長様、お帰りなさいませ。国営気象予報による未来の大嵐ハメ手、誠に見事な計略にございました。さあ、今夜は大奥一同、春の訪れを美しく彩る『春の国営お花見大会』の宴を執筆(開催)いたしますが……労働者にございます我らの有給休暇および春の安息の規律に基づき、十割夜桜の特等席(敷物の上)から動かなくなった我らのための、大量の三色団子や天竺紅茶の給仕、一分の狂いも無い『夜桜用の灯籠の国営手動点火』、ならびに深夜の散った桜の花びらの清掃の交代制職務、本日の深夜番は信長様、あなた様に十割完全に割り振られておりますよ?」
帰蝶が最高の笑顔で、大奥の広大な庭園を照らすための特大の油灯籠と、一分の狂いも無い点火順序の指示書を信長に手渡した。
「ま、待て……! 余は今、南洋の大嵐の進路を先回り登記(予報)し、未来の海難過労死を戦う前に完璧にハメ殺してきたばかりなのだぞ……!? なぜ戻ってきた瞬間から、敷物から一歩も動かぬお前たちのために、一人で真夜中に赤子をあやし、火の粉に怯えながら庭園に散った数万枚の桜の花びらを四つん這いになって箒で一人で掃くという過酷な単独職務に奔走せねばならぬのだ!」
信長の悲痛な叫びに対し、十五歳に成長した甲斐姫が、三色団子を美味しそうに頬張りながら笑顔の先回り牽制を仕掛けてきた。
「太政大臣たるもの、国営気象の利潤を精査する前に、まずは身内の春の一分の狂いも無い花見環境を一から完璧に白化(ホワイト化)していただかねば困ります。さあ、一葉の狂いも許されぬ手掃きの激走、お励みください!」
英国王女も「オハナミ、マジ神仏! ノブナガ様、灯籠点火よろしく!」と、お茶を飲みながら完璧な笑顔を見せている。
「世界をハメ殺すより、深夜に一人で大奥の桜の花びらを掃く方が十割むずかしいわ! というか、夜風の冷たさで余の再生したばかりの限界胃壁がストレスと春の激務で本当に戦う前に跡形もなく崩壊しちゃうよーー! 誰か、余の胃薬(胃壁保護剤)を即時電信の速度で持ってきてぇーー!!」
昼間は冷徹に地球規模の天候物流を統治する総大総督でありながら、夜は大奥の完璧なる春の規律の前に白目を剥き、嬉しさと緊張の冷や汗で庭園をピカピカに清掃する覇王信長。だが、ぐっすりと眠る子どもたちの愛らしい寝顔と、美しき夜桜を嬉しそうに楽しむ妻たちの笑顔を見つめ、胃壁の激痛を堪えながらも、心の底から幸福なる微笑を浮かべるのであった。
(外伝・その二十五・地球規模気象チート編・完)




