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第8話:「天下の火縄国営化と、二兵衛が描く大航海図」

1. 天下の火縄国営化と、宿老たちの「近代職務」


伊賀と伊勢が一滴の血も流さず、わずか数週間で織田政府の近代組織へと組み込まれた報は、日の本を震撼させた。その勢いのまま、信長の放った網は西の要衝、紀伊の国へと向けられる。


大坂と堺を完全に抑え、さらに九鬼水軍を国営海軍として正規雇用した信長は、紀伊の雑賀衆・根来寺への硝石や兵糧の流通網を完全に封鎖した。弾薬と補給のルートを絶たれた彼らの前に、堺から運ばせた最新の大砲がずらりと並び、寸分の狂いもない布陣で完全包囲を完了する。


この包囲戦を前線で指揮したのは、織田家が誇る猛将たちであった。

「野良の武力など、織田政府の法の前には無力よ!」

常備軍の突撃旅団を率いる柴田勝家が凄めば、後方の兵站・大砲陣地を完璧に構築した丹羽長秀が冷徹に旗を振る。さらに、伊賀の「国家情報省」を統括する簗田出羽守と連携し、雑賀の内部へ執拗な切り崩し工作を仕掛けたのは滝川一益であった。宿老の佐久間信盛もまた、週休二日制で無類の練度を誇る常備軍の監察官として睨みを利かせている。


「これより、日の本における全ての火縄(鉄砲)は織田政府の管理とする。野良の武力は一切認めん。全ての火縄を国営化(銃規制)し、総武装解除せよ」


本陣の広間で、信長は雑賀孫一をはじめとする頭領たちを冷徹に見下ろし、二者択一を迫った。


「だが、貴殿らの狙撃の腕は世界無双。武力を捨て、織田の近代軍『常備狙撃旅団』の国家公務員として定給(固定給)を食むか、今ここで大砲の錆びとなるか選べ」


頭領たちは、一言の反論もできなかった。逆らえば帝の勅命による「朝敵」となる絶望的な状況下で、「国の軍人」として生涯の俸禄が保証されるという条件は、傭兵稼業の彼らにとって破格の救済であった。

雑賀衆は、一発の銃声も響かせることなく、織田の軍門に降った。


その様子を見ながら、信長は内心で安堵の冷や汗を滝のように流していた。


(良かった……! ガチで良かった……! 勝家や長秀、一益たちが完璧に近代軍を動かしてくれたおかげだ! 石山合戦で史実の織田軍を死ぬほど苦しめた最強のゲリラ部隊が、戦う前にこっちの味方になったぞ! 本願寺め、これで貴様らの手足となる最強の鉄砲隊は消滅したからな。余の胃の痛みが一つ減ったわ!)



2. 播磨無血開城と、二兵衛の「初対面」


近国がすべて「戦う前に近代組織へと解体・再編された」という戦慄の報は、瀬戸内への門戸である播磨の国へも届いていた。当時の播磨は、御着城の小寺氏、三木城の別所長治、そして名門・赤松氏らが割拠し、毛利との間で揺れ動く不穏な地であった。


この播磨を戦争なしでスクラップ&ビルドするため、信長は、織田東インド商会を率いる木下藤吉郎、そして最高総参謀長となったばかりの竹中半兵衛を播磨へ派遣した。


姫路城の一室にて、半兵衛は、小寺家の若き家老・黒田官兵衛と対面する。二人はこれが、正真正銘の「初対面」であった。

「初めまして、黒田官兵衛殿。我が主、織田上総介様は日の本を争うなどという小さな段階にはおられん。万国の海を渡る航海図を描いておられるのだ」

半兵衛が静かに和紙の手控え(図面)を広げると、官兵衛はその眼を見開いた。そこに描かれていたのは、別所氏や赤松氏を武力で滅ぼす戦術ではなく、彼らを国家公務員として「経済的に包囲・救済」する近代的統治プランであった。


「……戦をせずに、播磨を直轄領化する……!? この織田上総介という男、戦の概念そのものを変えようとしている……!」

官兵衛は慄然とした。

半兵衛という天才の存在にも、激しい衝撃を受けていた。


官兵衛の手引きにより、織田政府の圧倒的な「法と銭と大砲」、そして「逆らえば朝敵」という大義名分が播磨の諸勢力に突きつけられた。

三木城の別所長治は、餓死の恐怖とは無縁の「播磨造船ドック・総物流管理官(国営倉庫長)」のポストと定給を提示され、涙を流して恭順。名門の赤松氏は、軍権を取り上げられる代わりに、高い終身恩賞(年金)付きで安土の新政庁の「名誉有職故実顧問(儀礼最高顧問)」として円満に移封された。


播磨全域は、一滴の血も流すことなく、織田政府の直轄領へとスクラップ&ビルドされたのである。官兵衛は自ら京都へ赴き、信長への臣従を申し出た。ここに、戦国最強と謳われる「二兵衛」が、織田の旗の下に揃い踏みした。


「官兵衛、よくぞ参った。半兵衛と共に、これより始まる『世界大戦』の航海図を描け。播磨を日の本最大の造船の都とする」

信長が冷然と告げると、官兵衛は「この命、全て上総介様に捧げます!」と平伏した。

その姿を見ながら、信長は内心でガッツポーズを決めていた。


(きたあああ! 黒田官兵衛ゲット! これで半兵衛と官兵衛の二人が揃った! 史実みたいに荒木村重の裏切りで土牢に閉じ込められる官兵衛は見たくないからな。初対面で一瞬で意気投合して播磨を無血開城させるとか、二兵衛のチート能力マジで半端ないわ! 最高総参謀局のツートップとして、死ぬ気でホワイト労働(週休二日)してもらうぞ!)



3. 覇王の次なる一手と、大坂の不穏


播磨は完全に直轄領化され、大洋航海船(鉄甲蒸気船)を建造する「播磨巨大造船船室どっく」の起工式が行われた。

海岸には、何千人もの大工たちが打ち鳴らす木槌の音が響き渡る。


潮風を受けながら大海原(世界)を見つめる信長、半兵衛、官兵衛、そして海軍大臣・三好長慶。信長は懐から一枚の図面を取り出し、二兵衛の前に広げた。


「西の播磨に巨大船室を築いた。ならば次なる一手は東よ。三河の徳川家康殿を『東国開発総督』に据え、関東二百万石の大地へと移す。この泥濘ぬかるみの地を、万国に並ぶもののない『日の本最大の大都たいと』へと一変させるのだ」


図面に描かれていたのは、河川の流れを強引に変え、広大な湿地を美しき掘割と強固な堤防で埋め尽くした、誰も見たことのない未来の「江戸」の設計図だった。


「……川の流れを、変える……!? 関東の地を、これほどの大都市に……!」

半兵衛と官兵衛は、その壮大すぎる治水・統治構想に、同時に身震いした。この主君の頭の中には、日の本の数百年先の世界が完全に見えているのだ、と。


しかし、信長は、内心で胃を押さえながら冷や汗を流していた。


(西の海軍ドック開発で柴田や丹羽たちも手一杯なのに、東で武田や北条、家康がゴチャゴチャ戦い始めたらマジでパンクするわ! 家康くんに『江戸大開発プロジェクトリーダー』の大役を丸投げして、東国を丸ごと大人しくさせなきゃ余の寿命が持たん! タヌキ親父、頼むから大人しく関東に行って死ぬ気で土木工事してくれよな!)


覇王の仮面の裏で、信長が必死に未来の平穏を願う中、織田政府の規格外の変革は、北の怪物・朝倉義景、そして大坂に潜む巨大な宗教組織(本願寺)を激しく刺激しつつあった。


(第9話:「東国総督・徳川家康の誕生と、井伊谷の女地頭」へ続く)

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