外伝・その二十二(超巨大経済無双編):天竺国営紅茶の欧州電撃輸送令と、欲深き王侯貴族を胃袋からハメ殺す織田東インド商会の経済完全独占
世界初の海底電信線を敷設して地球規模の情報を百パーセント即時同期し、大奥での怒濤の柚子風呂掃除をも生き抜いた正一位・太政大臣たる織田信長。安土城の総大総督府の玉座に座る覇王の視線は、真冬の厳しい寒気が城下を白く染めるなか、世界の富と流通の歴史を五百年先んじて完全白化(ホワイト化)する、次なる未曾有の超巨大経済無双へと向けられていた。
元平の御世、外伝八において天竺の諸王国と結んだ『不滅の紅茶交易同盟』と、現地に建設された『国営週休二日製茶場』は、前話の海底電信線による即時同期通信によって完璧に統治されていた。現地の茶摘みの民が笑顔で摘み取った至高の茶葉は、一分の狂いも無い精度で大量に安土へと同期され、さらに織田東インド商会の新型発動機船(重油動力船)によって、極東から欧州へと向けて爆速で電撃輸送されていたのである。
信長はこの潤沢にして圧倒的な「美味の富」を用い、南蛮の国々(イギリスやスペイン)の経済主導権を戦う前に盤上で完全にハメ殺す、至高の経済大計略を発動した。
「ーー信長様! 織田東インド商会の欧州総局(ロンドン・マルタ島拠点)より、一分の狂いも無い電信が入電。天竺国営製茶場から直送された極上茶葉が欧州市場へと十割完全に同期(上陸)。その圧倒的な芳醇さと美味さの前に、南蛮の欲深き王侯貴族や豪商たちが、戦う前に胃袋から完璧にハメ殺され、泡を吹いて平伏しているとのことです」
内政副総裁の直虎が、欧州から逆流し始めた純金貨の一文の狂いも無い交易帳簿を抱え、興奮のあまり大粒の涙を流して報告した。
信長は不敵な笑みを浮かべ、総大総督の直衣を翻して世界地図の前に立った。
「うむ、直虎よ。本来の歴史であれば、英国の『イギリス東インド会社』なる不当な独占組織が天竺を過酷な植民地(ブラック環境)として支配し、茶葉を搾取して肥え太るはずであった。だが、我が新政庁が先回りして天竺の民を最高待遇の固定給で強制雇用し、二一世紀の品質管理で量産した『完全白化の至高の紅茶』を市場に投げ込んだことで、南蛮の旧式な流通網は戦う前に根底から完全にハメ殺されたのだ」
欧州の王侯貴族たちの間で、織田東インド商会がもたらした天竺紅茶は、またたく間に「神仏の泥水」として狂気的な大流行を巻き起こしていた。一口飲めば、五臓六腑に染み渡る圧倒的な香りと気品に脳内が百パーセント支配され、これまでの粗悪な異国の茶葉など戦う前に児戯に等しいと、誰もが織田の紅茶の虜となったのである。
「な、何ということだ……! この紅茶の美味さは一体何なのだ!? 一滴の狂いも無い完璧な深み、そしてこれが現地民の過労死のない優良な環境(週休二日制)で育てられたという奇跡……! 欧州の全財産を差し出してでも、織田の茶葉を請い願うしかない! 織田東インド商会、マジ神仏……!」
南蛮の王たちが涙を流して織田の契約書(国営紅茶・世界独占流通条項)に平伏するなか、織田の圧倒的な「未来技術・適正価格・ホワイト雇用」の流通の前に、欧州の経済主導権は、戦う前にこの一杯の温かい紅茶の前に完璧にハメ殺されるのだった。
ーーその頃、地球規模の巨大な経済無双を完璧に詰ませ、世界の王たちから「交易の神仏」と唱念されていた最高権力者、織田信長は、安土城の総大総督府の裏手にて、再び別の意味での滝のような冷や汗を流していた。
世界の完全白化という偉大なる計略を真冬の安土で成し遂げた信長であったが、夜の大奥に足を踏み入れた瞬間、帰蝶、直虎、英国王女、そして甲斐姫らが、安土城に降り積もった記録的な大雪を前に、一分の狂いも無い完璧な温もり包囲網を敷いて待ち構えていたのである。
「信長様、お帰りなさいませ。天竺国営紅茶による未来の欧州経済ハメ手、誠に見事な計略にございました。さあ、今夜は大奥一同、銀世界となった安土の庭で日頃の運動不足(?)を解消する『真冬の国営雪合戦大会』の熱戦を執筆(開催)いたしますが……労働者にございます我らの有給休暇および冬の安息の規律に基づき、十割炬燵の中に潜って動かなくなった我らのための、広大な大奥の雪かき、一分の狂いも無い『雪玉製造のからくり手配』、ならびに深夜の全防寒着の乾燥・片付けの交代制職務、本日の深夜番は信長様、あなた様に十割完全に割り振られておりますよ?」
帰蝶が最高の笑顔で、雪で濡れた大量の綿入れの防寒着と、一分の狂いも無い炭火での乾燥指示書を信長に手渡した。
「ま、待て……! 余は今、天竺の紅茶で欧州の王たちを胃袋から完璧にハメ殺し、南蛮の富を戦う前に完璧にハメ殺してきたばかりなのだぞ……!? なぜ戻ってきた瞬間から、炬燵から一歩も動かぬお前たちのために、一人で真夜中に赤子をあやし、びしょ濡れになった数千枚の防寒着を四つん這いになって炭火の前で一人で乾かすという過酷な単独職務に奔走せねばならぬのだ!」
信長の悲痛な叫びに対し、十五歳に成長した甲斐姫が、雪玉を片手に笑顔の先回り牽制を仕掛けてきた。
「太政大臣たるもの、欧州の紅茶利潤を精査する前に、まずは身内の真冬の一分の狂いも無い防寒環境を一から完璧に白化(ホワイト化)していただかねば困ります。さあ、一衣の狂いも許されぬ手畳みと乾燥の激走、お励みください!」
英国王女も「ユキガッセン、マジ神仏! ノブナガ様、お洋服乾かして!」と、炬燵の中で丸くなりながら完璧な笑顔を見せている。
「世界をハメ殺すより、深夜に一人で大奥の防寒着を乾かす方が十割むずかしいわ! というか、炭火の熱気と雪の湿気で余の再生したばかりの限界胃壁がストレスと真冬の激務で本当に戦う前に跡形もなく崩壊しちゃうよーー! 誰か、余の胃薬(胃壁保護剤)を天竺紅茶の速度で持ってきてぇーー!!」
昼間は冷徹に地球規模の経済流通を統治する総大総督でありながら、夜は大奥の完璧なる冬の規律の前に白目を剥き、嬉しさと緊張の冷や汗で防寒着をピカピカに乾燥させる覇王信長.だが、ぐっすりと眠る双子の愛らしい寝顔と、至高の雪合戦を楽しそうに振り返る妻たちの笑顔を見つめ、胃壁の激痛を堪えながらも、心の底から幸福なる微笑を浮かべるのであった。
(外伝・その二十二・超巨大経済無双編・完)




