外伝・その十六(南洋編):大海原に隠されし国営巨大真珠の先回り登記と、欧州の宝飾権益をハメ殺す織田東インド商会の大無双
極東の不凍港を先回り登記して北方の覇権主義を完璧にハメ殺し、大奥での巨大蚊帳開きという温もり包囲網をも生き抜いた正一位・太政大臣たる織田信長。安土城の総大総督府の玉座に座る覇王の視線は、初夏の力強き陽光が海面を黄金色に染めるなか、世界の富と美の流通を五百年先んじて完全白化(ホワイト化)する、次なる未曾有の経済地政学チートへと向けられていた。
元平の御世、安東愛季や毛利輝元の率いる新政庁の黒船蒸気艦隊は、豪州大陸のさらに北方、南洋の温かく清らかなエメラルドグリーンの大海原へと進出していた。そこは、のちに異国において『南洋諸島』、そして『白蝶真珠』と呼ばれる、世界最高峰の巨大にして至高の光沢を放つ天然真珠が無限に眠る、神仏の息吹が宿る美しき海域であった。
「ーー信長様。織田東インド商会の南洋航海部隊より、一分の狂いも無い確実なる電信が入電。南洋の美しき楽園海域を次々と発見し、我が新政庁の主権を示す『国営南洋真珠特殊資源保護区域』としての先回り登記(ハメ殺し)を、戦う前に十割完全に完了したとのことです」
内政副総裁の直虎が、無数の美しい島々が詳細に描かれた巨大な南洋海図を玉座の前に広げた。
信長は不敵な笑みを浮かべ、二一世紀の歴史と地理、そして水産学の記憶を宿した指先で、海図の美しき島々をぽちりと叩いた。
「うむ。数百年後、南蛮の阿蘭陀やスペインなどの欲深き国々がこの海域に目を付け、現地の民を過酷な奴責(奴隷)として海の底へ突き落とし、至高の真珠を不当に掠奪して欧州の王侯貴族に高値で売り捌く悲惨な未来の歴史を、余は今ここで根底から完璧にハメ殺した。世界の南洋の真珠権益は、本日ただいまを以て、我が新政庁が永久に直轄管理する不滅の富となったのだ」
しかし、信長の知識は、未来の宝飾を先回り確保するだけに留まらない。21世紀の福祉と人道共生の知識を保有する覇王の真髄は、その美しい島々に古くから暮らす、誇り高き島々の民の救済にあった。
数日後、ヤシの木が風に揺れる南洋の美しき砂浜にて、織田の使節団と、独自の文化と自然と共に生きる現地の部族の長たちが対峙していた。
将来的に異国の過酷な奴隷狩りや、呼吸を止めて深海へと潜らされる過酷な労働(ブラック環境)を予期して警戒を強めていた長たちに対し、織田東インド商会の特使たる安東愛季が提示したのは、戦の武器ではなく、金一文の狂いも無い純金貨の詰まった袋と、新政庁が全額保証する『国営真珠養殖官・最高待遇固定扶持の予算書』であった。
「南洋の誇り高き長、そして民たちよ! 我らが主、織田信長様はそなたたちの海を奪うことも、ましてや過酷な支配を課すことも十割絶対にせぬ! そなたたちが何百年も守り続けてきた美しい美ら海、独自の言葉、文化を百パーセント尊重し、永久に保護することを約束する。その証として、二一世紀の『真珠の核入れ・養殖技術』をそなたたちに授け、全員を最高待遇の国営官僚として強制雇用(同期)する!」
愛季の熱き通訳が響き渡った瞬間、南洋の長たちは驚愕のあまり互いの顔を見合わせた。
さらに織田の使節団は、二一世紀の持続可能なる水産技術に基づいた「無理のない健全な国営真珠養殖場の運営法」や、一割の狂いも無い定額給与の支給書を次々と手渡していく。
「な、何ということだ……。戦う前に、私たちの生活と誇りをすべて全額保証するというのか……。しかも、夕刻五時の鐘が鳴れば、すべての職務を終えて家族の元へ帰ってよい(定時退勤)とは、一体どれほど白い(ホワイトな)規律なのだ……! しかも、織田のからくり面頬(潜水用具)があれば、息が苦しくなることもないではないか!」
将来的に異国の過激な覇権主義によって命と誇りを削られるはずだった南洋の民たちは、織田の人道ハメ手の前に、大粒の涙を流して平伏した。
「織田のシステム、マジ神仏……! 我らは生涯を懸けて、信長様のためにこの美しい南洋の海と巨大真珠を守り抜くことを誓おう!」
現地の民が一人も血を流すことなく、笑顔で織田の世界線へと完全に同期(就職)していく。これにより、織田東インド商会が手に入れた極上の巨大真珠が、圧倒的な「高品質・低価格・ホワイト雇用」の流通網で世界中に供給され、欧州の王侯貴族や南蛮の大国たちが戦う前に経済的に盤上で完璧にハメ殺される、不滅の経済防衛網が完成したのである。
ーーその頃、地球規模の巨大な盤上を完璧に経済的に詰ませ、世界の民から「宝飾の神仏」と唱念されていた最高権力者、織田信長は、安土城の総大総督府の裏手にて、再び別の意味での滝のような冷や汗を流していた。
南洋真珠の完全白化という偉大なる計略を成し遂げた信長であったが、夜の大奥に足を踏入れた瞬間、帰蝶、直虎、英国王女、そして甲斐姫らが、清流が美しく守られた安土の川辺で収穫されたばかりの大量の「天然鮎」と「国営西瓜」を前に、一分の狂いも無い完璧な温もり包囲網を敷いて待ち構えていたのである。
「信長様、お帰りなさいませ。南洋の巨大真珠を先回り登記し、未来の奴隷労働を戦う前に完璧にハメ殺した計略、誠に見事なハメ手にございました。さあ、今夜は大奥一同、盛夏の暑さを吹き飛ばす『国営川遊び大会』の収穫を執筆(調理)いたしますが……労働者にございます我らの有給休暇および夏の安息の規律に基づき、十割川辺の涼しさに潜って動かなくなった我らのための、大量の鮎の国営炭火焼き、ならびに深夜の川辺でのすべての安全管理と片付けの交代制職務、本日の深夜番は信長様、あなた様に十割完全に割り振られておりますよ?」
帰蝶が最高の笑顔で、ピチピチと跳ねる大量の鮎と、一分の狂いも無い国営炭火の温度管理指示書を信長に手渡した。
「ま、待て……! 余は今、南洋の巨大真珠を先回り登記し、欧州の宝飾流通を戦う前に完璧にハメ殺してきたばかりなのだぞ……!? なぜ戻ってきた瞬間から、川辺から一歩も動かぬお前たちのために、一人で真夜中に赤子をあやし、炭火の前で煙に咽びながら鮎を百匹も焼くという過酷な単独職務に奔走せねばならぬのだ!」
信長の悲痛な叫びに対し、十五歳に成長した甲斐姫が、西瓜を片手に笑顔の先回り牽制を仕掛けてきた。
「太政大臣たるもの、南洋の交易利潤を精査する前に、まずは身内の盛夏の一分の狂いも無い鮎の塩焼き環境を一から完璧に白化(ホワイト化)していただかねば困ります。さあ、一尾の焼きムラも許されぬ見張りの激走、お励みください!」
「世界をハメ殺すより、真夏に炭火の前で鮎を百匹焼く方が十割むずかしいわ! というか、この鮎の脂の煙の前に、余の再生したばかりの限界胃壁がストレスと盛夏の激務で本当に戦う前に跡形もなく崩壊しちゃうよーー! 誰か、余の胃薬(胃壁保護剤)を南洋のひんやりした真珠と一緒に持ってきてぇーー!!」
昼間は冷徹に地球規模の巨大真珠を統治する総大総督でありながら、夜は大奥の完璧なる初夏の規律の前に白目を剥き、嬉しさと緊張の冷や汗で炭火をピカピカに調整する覇王信長。だが、ぐっすりと眠る双子の愛らしい寝顔と、鮎の塩焼きを美味しそうに楽しむ妻たちの笑顔を見つめ、胃壁の激痛を堪えながらも、心の底から幸福なる微笑を浮かべるのであった。
(外伝・その十六・南洋編・完)




