外伝・その十四(技術無双編):新大陸の黒色黄金による次世代動力の発令と、安土の街を激走する国営からくり鉄馬車のハメ手
南方の大洋に浮かぶ広大なる未知の豪州大陸を先回り登記して未来の資源搾取を完璧にハメ殺し、大奥での怒濤の一万個の貝の砂抜きをも生き抜いた正一位・太政大臣たる織田信長。安土城の総大総督府の玉座に座る覇王の視線は、初夏の瑞々しい新緑が城下を彩るなか、世界の移動と流通の歴史を五百年先んじて完全白化(ホワイト化)する、未曾有の未来技術チートへと向けられていた。
元平の御世、新大陸『東日の本州』の国営油田からは、信長が敷いた計画的な採掘令により、未知なる富である「黒色の黄金」……すなわち、燃える魔水(石油)が一分の狂いも無い精度で安定して汲み上げられていた。信長はこの未知の燃料を精製し、二一世紀の工学知識を脳内で同期させ、国友鍛冶の天才たちと共に、ある歴史的なからくりの開発を極秘裏に進めていたのである。
それは、石炭の炎と巨大な湯気(蒸気機関)を遥かに凌駕する、魔水の爆発の力で自ら動く次世代の動力機(内燃機関)ーーすなわち『国営からくり発動機』であった。
「ーー信長様! 畏れながら、国友鍛冶の粋を尽くした不滅の試作車、ここに十割完全に完成いたしました!」
技術部門の監督官を務める近代官僚(滝川一益ら)が、油塗れの面頬を外しながら、興奮のあまり大粒の涙を流して玉座の前に平伏した。
信長は不敵な笑みを浮かべ、総大総督の直衣を翻して安土城の広大な中庭へと降り立った。
そこには、馬の力を一切必要とせず、鉄の車輪と四つの座席を備えた、見たこともない漆黒の車輌が、静かに、しかし力強く佇んでいた。これこそが、二一世紀の知識を具現化させた日ノ本初の移動体ーー『国営からくり鉄馬車(自動車)』であった。
「うむ、一益よ。見事な職人技であるな。南蛮の欲深き国々が、馬車の速度に頼り、黒船の石炭の煙に咽んでいる数百年先の未来において、我が新政庁はすでに『魔水の爆発』による超高速の流通網を戦う前に盤上で完璧にハメ殺したのだ」
信長が車輌に乗り込み、国営発動機の紐を一文の狂いも無い手際で引いた瞬間、
「ドゴゴゴゴ……!」
という、大奥の雷をも撥ね返す凄まじい爆発音が安土城内に響き渡った。
信長が操縦桿を握り、新緑の安土城下街へと電撃的に出撃すると、夕刻五時の「定時退勤」を迎えて国営居酒屋へと同期(退勤)しかけていた武田勝頼や上杉謙信ら近代官僚、そして世界中の商神たちが、驚愕のあまり泡を吹いてその場にひっくり返った。
「な、何ということだ……! 馬も引いていない鉄の塊が、風よりも速い速度で安土の街を激走している!? しかも、あの車輌があれば、日ノ本の全域への国営物資の輸送速度が、加速するというのか……!」
南蛮の商神たちが涙を流して地べたに平伏するなか、信長が提示したのは、他国を侵略するための大砲ではなく、新政庁が全額保証する『国営からくり鉄馬車・物流網整備の法度』であった。織田の圧倒的な「未来技術・超高速・ホワイト雇用」の流通網の前に、欧州の技術覇権は、戦う前にこの発動機の爆音の前に完璧にハメ殺されるのだった。
ーーその頃、地球規模の巨大な技術無双を完璧に詰ませ、世界の民から「からくりの神仏」と唱念されていた最高権力者、織田信長は、安土城の総大総督府の裏手にて、再び別の意味での滝のような冷や汗を流していた。
物流の完全白化という偉大なる計略を新天地で成し遂げた信長であったが、夜の大奥に足を踏み入れた瞬間、帰蝶、直虎、英国王女、そして成田家から赴任してきた甲斐姫らが、初夏の訪れに伴う「春の国営衣替え大会」の膨大なる衣類を前に、一分の狂いも無い完璧な温もり包囲網を敷いて待ち構えていたのである。
「信長様、お帰りなさいませ。馬無き鉄馬車による未来の物流ハメ手、誠に見事な計略にございました。さあ、今夜は大奥一同、冬物と夏物を一割の狂いも無く入れ替える衣替えの激走を執筆(整理)いたしますが……労働者にございます我らの有給休暇および初夏の安息の規律に基づき、数千枚に及ぶ高級絹織物の『国営防虫・樟脳詰め』、ならびに深夜のすべての衣類の畳みと片付けの交代制職務、本日の深夜番は信長様、あなた様に十割完全に割り振られておりますよ?」
帰蝶が最高の笑顔で、大奥の床を埋め尽くす数千枚の冬衣と、一分の狂いも無い樟脳の配置指示書を信長に手渡した。
「ま、待て……! 余は今、石炭の時代を終わらせる次世代の発動機を開発し、南蛮の技術を戦う前に完璧にハメ殺してきたばかりなのだぞ……!? なぜ戻ってきた瞬間から、真夜中に一人で大奥の数千枚の衣服を寸分の狂いも無く畳み、虫除けの粉を詰めるという過酷な単独職務に奔走せねばならぬのだ!」
信長の悲痛な叫びに対し、十五歳に成長した甲斐姫が、笑顔で先回り牽制を仕掛けてきた。
「太政大臣たるもの、国営鉄馬車の利潤を精査する前に、まずは身内の衣替えの一分の狂いも無い整理環境を一から完璧に白化(ホワイト化)していただかねば困ります。さあ、一衣の狂いも無い手畳みの激走、お励みください!」
「世界をハメ殺すより、深夜に数千枚の大奥の衣類を一人で畳む方が十割むずかしいわ! というか、樟脳の匂いで余の再生したばかりの限界胃壁がストレスと正月の激務で本当に戦う前に跡形もなく崩壊しちゃうよーー! 誰か、余の胃薬(胃壁保護剤)を鉄馬車の速度で持ってきてぇーー!!」
昼間は冷徹に地球規模の次世代技術を統治する総大総督でありながら、夜は大奥の完璧なる初夏の規律の前に白目を剥き、嬉しさと緊張の冷や汗で衣類をピカピカに畳み上げる覇王信長。だが、ぐっすりと眠る子どもたちの愛らしい寝顔と、新しい夏衣を嬉しそうに合わせる妻たちの笑顔を見つめ、胃壁の激痛を堪えながらも、心の底から幸福なる微笑を浮かべるのであった。
(外伝・その十四・技術無双編・完)




