表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
71/89

外伝・その四(内政・安土編):手厚き固定給に咽び泣く近代官僚の同期会と、現世の胃壁を穿つ深夜の育児夜番

時計の針を、ほんの少しだけ巻き戻そう。これは、正一位・太政大臣にして葦原中国総大総督たる織田信長が天寿を全うして天の上へと旅立つ数年前、まさに地球規模の黄金防衛網をガチガチに完成させ、日ノ本の歴史を完全白化させていた、元平の御世の「とある一日の記録」である。


日ノ本を完全なる国営化へと導いた信長の深謀遠慮は、かつて過酷な掠奪と兵の血で黒く染まっていた戦国の世を、名実ともに十割完全消滅させていた。武力による不毛な領土争いは戦う前に完璧にハメ殺され、今や安土政庁の広大なる執務室には、かつて天下を競い合った名門の雄たちが、手厚い定額給与(国営固定扶持)を金一文の狂いも無く支給される近代官僚として就職・同期していた。


新政庁が定めた『過労死防止令』の規律は絶対である。

安土の城下街に、夕刻五時の到来を告げる荘厳なる太鼓の音が響き渡った。その瞬間、執務室の中にいた何百人もの役人たちが、一分の狂いも無く一斉に筆を置き、硯の蓋を閉めた。一分たりとも居残ることは、信長が敷いた優良なる就業環境に対する重き法度違反となるからである。


「これにて本日の職務は完全に終了であるな。上杉殿、本日の植樹計画書の精査、誠に見事な手際であった」

国土交通総裁の職にある武田勝頼が、豊かな髭を揺らしながら隣席の上杉謙信に微笑みかけた。かつては敵対していたが、今や同じ執務室で机を並べ、無理のない持続可能なる長期計画で日ノ本の国土を豊かに育てる同僚として同期していた。

「いや、武田殿の流体力学を用いた治水計画こそ、職人技と言うべき見事な手際。これにて未来の田畑も水害から百パーセント先回り保護されました。さあ、定時を過ぎました。一秒でも長く残ることは、信長様の御心に泥を塗る行為。急ぎ退庁いたしましょう」

謙信は穏やかな笑顔で書類を棚に収めると、勝頼と共に立ち上がった。二人が廊下へ出ると、海上防衛司令官の毛利輝元や島津義久、さらには伊達政宗や最上義光といったかつての雄たちが、完全週休二日制の有給休暇の消化予定について和気あいあいと語り合いながら、正面玄関へと向かっていく。かつて血で血を洗う戦を繰り広げた大名たちが、誰一人として過労死することなく、笑顔で「定時退勤」していく光景が、そこには当たり前のものとして存在していた。


安土の城下街には、新政庁が全額出資する国営の酒場が軒を連ねていた。民も官僚も等しく安価に美味い酒と食を堪能できる、治安十割の理想郷である。

勝頼や謙信たちがその一軒の暖簾をくぐると、店の一番奥の畳席で、一人の男が新政庁の刻印が入った予算書を愛おしそうに抱きしめ、大粒の涙を流して平伏していた。

かつて美濃の地を巡る織田の宿敵であり、一時は佐渡島へと流刑になっていた斎藤龍興であった。


斎藤龍興は、織田の理想的な労働環境と固定給に感涙し、国営佐渡金山の運営に邁進して忠誠を誓っていた。勝頼たちは、彼と共に過酷な戦国時代を脱した安息を喜び、深夜に及ぶ育児業務を強制的に割り振られた信長を思いながら、定時退勤の安らぎを満喫する。

一方、安土城の深部では、織田信長が「多国籍大奥」にて深夜の育児に孤軍奮闘していた。高性能な交代制勤務のおかげで、この夜の単独職務は信長本人に割り振られ、愛する妻や側室たちの厳しい監視下で、徹夜の連続におしめ交換に挑む羽目に。

天下を統一した覇王が、深夜の育児の過酷さに胃を痛めつつ、平和な世界を守るために奔走する姿を描く。


(外伝・その四・内政安土編・完)

【作者より、読者の皆様へ心からのお願い】


外伝・その四『内政・安土編』を最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!


今回は、武田勝頼殿や上杉謙信殿たちがホワイトな定時退勤を謳歌する日常を描かせていただきました。地上で部下たちが笑顔で居酒屋へ同期する一方、大奥でワンオペ育児に白目を剥く信長様のギャップを楽しんでいただけましたら幸いです。


ここで、読者の皆様へ大切なお願いがございます。

もし「今回もおもしろかった!」「織田のホワイトシステム、マジ神仏!」と思ってくださった方は、ぜひ作品への応援をお願いいたします。


ページの下部にある 「作品評価(⭐⭐⭐⭐⭐)」「ブックマーク登録」をいただけますと、執筆のモチベーションが十割跳ね上がり、今後の物語の展開(さらなる地球規模のハメ手)がめちゃくちゃ捗ります!


皆様の一票が、この作品をさらに上のランキングへと押し上げる最大の原動力になります。何卒、応援のほどよろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ