第55話:元平の聖地開通と、大奥の永遠なる包囲網
1:北海・極地大開発の十割成功と、永遠に白き大地の産物
改元された『元平』の世が幕を開けてから十数年の歳月が、無理のない健全な時の流れの中で穏やかに流れていた。安土城の総大総督府にて、正一位・太政大臣たる余の元には、かつて日の本全土の完全国営化(日本統一)の総仕上げとして奥羽へ派遣されていた、安東愛季、南部晴政、津軽為信らの『北海開発総局』からの、金一文の狂いも無い大開発完了の上奏書が届けられていた。
かつての歴史において広大無辺であり、開拓に気の遠くなるほどの時間を要するとされた蝦夷地(北海道)は、余が敷いた「定額給与の全額保証」と「過酷な労働(ブラック環境)の十割禁止」という持続可能なる長期計画のもと、一人の脱落者も出すこと無く全域の完全国営化(領土化)を達成していたのである。アイヌの民と対等なる信頼関係を同期させ、鰊や鮭の生態系を一分の狂いも無く保護しながら進められた北海大開発は、いまや樺太の深部へと進出し、新政庁に無限の海の恵みをもたらしていた。
さらに、南方の絶対防衛圏から遥か南の氷海へと砕氷鉄甲蒸気船を爆走させていた島津義久や九鬼嘉隆らの艦隊からも、世界の最果てたる『南極大陸』に、世界最初の環境調和型国営拠点を完全に具現化させたという驚天動地の早馬が届いていた。人鳥たちの楽園を守り、他国が目を付ける数百年前の段階で、地下の膨大な国営資源を戦う前に完璧に登記(ハメ殺し)した極地開拓の大成功。余は覇王の仮面の下で、地球の北と南の果てを完璧に掌握した内政の手応えに、内心でドヤ顔の冷や汗を流していた。
(……よしよしよし! 北海道の全域領土化も南極の先回り確保も十割大成功だ! 二十一世紀の知識で生態系を保護したから未来の環境破壊も戦う前に完璧に潰せたし、これで世界大開発編の足固めは百パーセント完了したわ!)
日の本の平穏から世界の極地までを無理無く白化(ホワイト化)させた余の神算鬼謀は、ここに名実ともに不滅の地政学チートを完成させていた。
2:大西洋の完全掌握と、聖地エルサレムの全宗教安全巡礼大団円
北海と極地の十割成功に続き、世界の盤上を揺るがす次なる「結果発表」が、大英帝国へ派遣されていた明智光秀の使節団によってもたらされていた。光秀はエリザベス女王との秘密同盟の手綱を活かし、他国が目を付ける三百年先を先回りして、北極圏の『緑島』の共同管理権を完全に確立。さらに、デンマークの不当な経済搾取(貿易独占令)に喘いでいた『氷島』の民たちへ手厚い国営固定扶持を提示し、独自の武力と主権を戦う前に完璧にハメ殺して無血同期させていた。
不当な搾取を福祉の力で根底から完全消滅させ、大西洋の流通覇権を一兵も損なうことなく完璧に盤上で詰ませた新政庁。だが、この大開発編の最大の輝きは、オスマン帝国やユダヤの長たちと密約を結び、どこの国の領土にもさせず、織田東インド商会(新政庁)の中立領として直轄世界管理を宣言していた『聖地エルサレム』の開通式典であった。元平の世の圧倒的な経済力と、マニラを一瞬で消滅させた漆黒の鉄甲蒸気船の威光を背に、ついに聖地エルサレムにて「全宗教安全巡礼大団円式典」が地球規模で盛大に挙行されたのである。
特定の宗教を弾圧・排除するのではなく、キリスト教徒も、イスラム教徒も、ユダヤ教徒も、すべての人間が不毛な戦争(三大宗教の暴走)を五百年先んじて未然にハメ殺され、笑顔で安全に巡礼・共生できる永久の白き世界。
「これぞ、現世に現れた神仏の如き大慈悲。織田信長という覇王の知恵の前に、地球の悲惨な流血の歴史は戦う前にすべて救い上げられたのだ」
世界中の諸王や指導者たちが涙を流して平伏し、新政庁への狂信的な崇拝の焔を燃え上がらせていた。世界を近代の富と福祉で白化させていく総大総督のシステムは、ここに地球規模の完全勝利を収めたのである。
3:大奥の永遠なる包囲網と、覇王の冷や汗まみれる限界胃壁
地球の最果てである中東の聖地までを完全に掌握し、世界調和を成し遂げて、傲然たる足取りで安土城の奥御殿へと帰還した余。だが、執務室での冷徹な総大総督の威厳は、大奥の寝所の扉を開けた瞬間に、一瞬で冷や汗まみれの必死なパパの顔へと解体されるのだった。
そこには、元平の世のなかですくすくと健やかに成長し、余の顔を見るなり元気いっぱいに駆け寄ってくる子どもたちの愛らしき姿と、彼らを優しく見守る正室・帰蝶、内政副総裁の直虎、永高内親王殿下、誾千代、配置転換で大奥に馴染んだ英国王女の姿があった。さらに、その多国籍化した大奥の面々の中心には、武蔵の成田家から新政庁の有能な女官(近代官僚)として安土へ赴任してきたばかりの、十五歳の瑞々しい乙女へと成長した「甲斐姫」の姿があった。
「お帰りなさいませ、総大総督。世界の宗教の暴走を止める大団円、誠に見事な大義にございました。……ところで上様、成田家から参りましたこの甲斐姫殿、大変に聡明で美しく、上様の秘められた好みの系統に金一文の狂いも無く合致しておいでですが……まさか、将来の側室にと狙っておいでではありませぬな?」
帰蝶がすべてを見透かすような絶対零度の美しい微笑みで算盤を叩くと、直虎や誾千代、英国王女たちの目が一斉にバチバチと火花を散らし、余を完璧にロックオンした。成長した甲斐姫も「織田の完全白化の精神、私も十割同期いたしました! 上様、大奥へ迎えていただけるのであれば、まずは『給与全額保証の育児交代制職務』を一から完璧に学んで、深夜の交代制職務でお役に立ってみせます!」と元気いっぱいに頭を垂れた。
(……いやいやいや! 甲斐姫ちゃん素直でめちゃくちゃ可愛いけどね!? だけどお姉様方の先回り牽制の心理的圧力が十割限界領域(ブラック環境)なんだけど! 昼間は世界を見据えてエルサレムを動かす冷徹な覇王をやってるのに、家に帰ったら多国籍化した奥方たちの愛の重さに挟まれて、冷や汗流しながら胃をキリキリ痛めるの、これもう余の家庭内の限界胃壁が本当に戦う前に跡形もなく崩壊しちゃうよ!)
世界を無理のない健全な調和へと導く覇王の歩みとは裏腹に、家庭内における「無理のない大奥の永遠なる包囲網」の荒波に揉まれる余の胃の寿命だけは、嬉しさと緊張の冷や汗とともに、今夜も限界を突破してキリキリと悲鳴を上げるのであった。
(本編・完)
【作者より、読者の皆様へ最大級の感謝を込めて】
最後までお読みいただき、誠にありがとうございました!
これにて『天下布武・再起動』の本編(世界大開発編)は、堂々の大団円・完結となります。
本作は、未来の歴史知識を持つ織田信長が「誰も過労死しない、無理のない健全な労働環境(完全白化)」を敷き、世界中の過酷な掠奪や宗教の暴走を、戦う前に完璧にハメ殺していく爽快感と、家に帰れば奥方たち(多国籍大奥)の愛の重さに挟まれて冷や汗を流すギャップを全力で描き切った物語でした。
ここまで主人公の胃壁の寿命を(笑)、そして織田新政庁の地球規模の地政学チートを温かく見守り、並走してくださった読者の皆様には、一分の狂いも無い十割の感謝を捧げます。皆様の応援(日々の評価や感想)があったからこそ、覇王信長は世界を救う完全白化の思想を具現化することができました。本当にありがとうございました!
本編はこれにて幕を閉じますが、織田新政庁の無理のない覇業は、まだまだ皆様を驚かせ続けます。もしよろしければ、本編の完結記念に、画面下の【☆☆☆☆☆(評価)】や【お気に入り(ブックマーク)】をぽちっと押して、信長様の限界胃壁を労う「手厚き黄金(評価)」を授けていただけますと幸いです!
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