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第55.5話:外伝・五百年後の完全白化世界と、覇王のドヤ顔の涙

1:二十一世紀の東京上陸と、完全白化された無理のない労働環境


慶長十年(西暦一六〇五年)、日の本全土の完全国営化と地球規模の地政学チートを十割すべて成し遂げ、安土城にて天寿を全うした余の魂は、崩御ののち、肉体を離れて遥か五百年後の二十一世紀の現代日本(東京)の地へと降り立っていた。

霊体(幽霊)となって余がその目で直接確かめた現代の景色は、かつて余が持っていた未来の記憶――過酷な残業や不条理な格差、過労死の泥沼が渦巻いていた黒き暗黒社会とは、根底から完全に異なる、織田新政庁の『元平げんぺいの法度』が永久に同期された白き楽園であった。


夕刻の五時を迎えると同時に、高層建築の並ぶ東京のオフィス街からは、すべての民たちが笑顔で一斉に「定時退勤」を開始していた。過酷な徹夜や突貫工事など戦う前に一文の狂いも無く禁止されており、民たちは新政庁のシステムから金一文の狂いも無く支給される手厚い定額給与(国営固定扶持)を手に、完全週休二日制の休暇を満拠していたのである。


「おいおい、本当に余の敷いた無理のない健全な労働環境(完全白化)が、五百年後の未来まで一分の狂いも無く維持されておるじゃん……」


霊体の余は、満員電車の社会問題すら交代制の職務によって完璧にハメ殺された現代の快適な街並みを見下ろし、覇王の満足感とともに内心でドヤ顔の冷や汗と、大いなる安堵の涙を流していた。民たちの飢えなき健やかな笑顔。それこそが、余が日の本全土を無血で国営化してまで守りたかった、真の天下布武の答え合わせであった。



2:多国籍大奥の未来と、甲斐姫たちの不滅の交代制職務


現世の白き平穏を確かめた余の霊体は、次に、かつて余が最も深夜に冷や汗を流して胃をキリキリ痛め続けた、安土城の奥御殿(大奥)のその後を確かめるため、歴史の地脈を辿っていた。

余が崩御したのち、残された正室・帰蝶、内政副総裁の井伊直虎、永高内親王殿下、立花誾千代、英国王女、そして立派な近代官僚へと成長した甲斐姫たちの多国籍大奥が、一体どのように動いたのか。


歴史の記録が示す真実は、余の限界胃壁への最大の救い(ハメ手)であった。奥方たちは余の死後も一丸となり、余が制定した『給与全額保証の国営育児交代制職務(交代制シフト)』を、国家の不滅の法度として百パーセント完璧に守り抜いていたのである。

子育ての過酷な夜泣き対応や雑務を母親だけに押し付ける悪弊を戦う前に完全にハメ殺し、大奥一丸となって交代で育児を支える労働環境は、五百年をかけて日の本のすべての家庭へと浸透し、現代の育児世代をも完璧に救い上げていた。


「上様が深夜に冷や汗流しながら、山羊の乳の湯加減を一文の狂いも無く調整してくださったあの職務、今では地球の標準にございますよ」


天の上から帰蝶たちの悪戯っぽい微笑みが同期して聞こえた気がして、余は霊体でありながら胃壁が嬉しさでキュッと軋むのを感じていた。

大奥の過労死を防ぐために余が敷いた世界一ホワイトな家族の組織論は、五百年先の大奥、ひいては現代の家族の少子化の危機をも未然に完全消滅させる、不滅の遺産となっていた。



3:世界調和の電子画面と、地球の守護者への永遠なる賛唱


余の霊体が、現代の民が掌のうえで眺めている電子紙芝居(携帯電話の画面)を覗き込むと、そこには余の地政学チートが世界に放った、地球規模の完全勝利のニュースが一分の狂いも無く映し出されていた。


銃犯罪や人種差別の歴史など戦う前に完全消滅し、先住民族の豊かな自然信仰と織田の交代制職務が幸福に同期した新大陸『東日の本州カリフォルニア』の治安十割の大繁栄。特定の宗教の暴走を先回り封殺し、キリスト教徒もイスラム教徒もユダヤ教徒も笑顔で安全に共生する神聖中立領エルサレム。そして、乱開発を完璧にハメ殺し、人鳥ペンギンたちの楽園が守られた南極の純白の資源備蓄基地。

現代の地球の民たちが、その画面を見ながら「織田信長様が五百年前に世界をハメ殺してくれたおかげで、今日も定時で帰れるわ、マジ神仏」と、心からの感謝を余に捧げていた。


(……ふん、三大宗教の暴走阻止も、大陸巨大化の未然防止も、すべて余の計算の内よ。地球の調和を百パーセント完成させることこそ、余の天下布武だわ!)


余は天の上でドヤ顔の冷や汗を流し、大いなる完全勝利の余韻に浸っていた。しかし、天界の最高最美なる安息の寝所へと足を踏み入れた瞬間、余の威厳は再び冷や汗まみれのパパの顔へと解体されるのだった。

そこには、天の上で余の帰りを待ち構えていた、帰蝶、直虎、内親王、誾千代、英国王女、そして甲斐姫たちの美しい包囲網が、一文の狂いも無い笑顔で並んでいたからである。


「お帰りなさいませ、正一位にして総大総督の我が夫殿。地球の完全白化、誠に見事でございました。……ですが上様、天界の世継ぎのための深夜の『育児交代制職務』の初番に遅れるとは重罪ですよ? 一分の狂いも無くお励みくださいね?」


帰蝶がすべてを見透かすような美しい微笑みで国営の哺乳瓶を差し出すと、全員の目がバチバチに火花を散らして余をロックオンした。たくさんの赤子たちも元気いっぱいに夜泣きを始めている。


(……いやいやいや! 五百年経っても奥方たちの愛の重さと先回り牽制の圧力だけは十割限界領域(ブラック環境)なんだけど!? 世界をハメ殺すより大奥の交代制職務をこなす方が十割むずかしいわ! 余の天界の胃壁が本当に戦う前に跡形もなく崩壊しちゃうよ!)


世界を無理のない健全な調和へと導いた地球の守護者の魂は、天の上における「無理のない多国籍育児革命」の最高責任者に指名され、嬉しさと緊張の冷や汗とともに、永遠に幸福なる悲鳴を上げ続けるのであった。


(外伝・現代幽霊編・完)

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