第50話:シベリア深部の黒き鉄路と、満州の女真族密約
1:北海開発総局の極地進出と、シベリア深部の国営地脈
元平二年の冬、太平洋からインド洋に至る「海の絶対防衛圏」の掌握を十割完了した新政庁は、満を持して陸の大地へと大開発の手綱を伸ばしていた。
長官の安東愛季、副長官の南部晴政、津軽為信らが率いる『北海開発総局』の精鋭たちは、広大なる蝦夷地(北海道)の沿岸拠点を長期計画に則って完璧に固めたのち、さらに北の氷海を越えて『シベリア深部』の極寒の凍土へと足を踏み入れていた。
彼らの目的は武力による侵略にあらず、21世紀の記憶を持つ余があらかじめ航路図に書き写しておいた、未来の織田東インド商会を支える膨大な『黒き財源(石炭)』や『金属資源』の先回り確保であった。
安東らは、新政庁が全額保証する手厚き「国営固定扶持」と、徹夜や突貫工事を十割禁止した無理のない健全な労働環境(完全白化)の威光を背に、現地の凍土に生きる民たちとも一分の狂いも無い対等なる信頼関係を同期させていた。
「上様が与えてくださった地学の設計図、金一文の狂いも無くこの極寒の地下に莫大な石炭が眠っておりますな。独自の略奪を行わずとも、近代の富の分配だけでこれほど豊かな国営資源が手に入るとは、新政庁の白化の思想、誠に天晴れにございます」
異国がこの極寒の未開の地に目を付ける数百年先を歩み、ただ誰もいない豊かな資源の眠る大地を国営の予算で先回りして登記(ハメ殺し)していく驚天動地の先見性。安東たちは、一兵も損なうことなくシベリアの黒きエネルギー地脈を新政庁の金庫へと同期させ、世界無双の海洋帝国を永久に駆動させるための無敵の軍資金を、戦う前に百パーセント盤上で完成させるのであった。
2:満州の女真族への極秘支援と、大陸巨大化のハメ手
シベリア深部の国営資源確保と並行し、余の次なる「陸の地政学チート」の牙は、陸路より満州の雪原へと深く侵入していた。標的は、巨大な中国大陸の王朝(明国)からの過酷な圧迫に喘ぎ、飢えと内紛に苦しんでいた若き『女真族』の長であった。将来、彼らが大陸の覇権を握る未来の歴史を先回りして知る余は、国家情報省(伊賀の忍び)を動かし、彼らの元へ驚天動地の「人道ハメ手」の親書を届けていた。
忍びが女真族の長の前に並べたのは、国友鍛冶の精密なからくり技術の粋を尽くした、桁外れの連射威力を誇る近代火器(鉄砲)と、新政庁の莫大な黄金という破格の極秘支援であった。明国や朝鮮半島には絶対に手出しをしない(十割スルー)という厳格な規律を貫くからこそ、この女真族を先回りして味方にする戦略は、不滅の外交の盾(黄金の盾)となる。
「お主たちの部族統一と明国への対抗は、我が新政庁が支援してやるわ。ただし、将来お主たちが明国を滅ぼして中国大陸を統一した際、チベットやウイグルといった少数民族の完全独立を永久に許可すること。これに一文の狂いも無く署名せよ」
提示された桁違いの近代の富と、戦う前に完璧に盤上で救い上げられた部族の未来を前に、女真族の長は畏怖と感涙のうちに不滅の密約へ署名した。
将来、中国が巨大化しすぎる悲惨な未来の歴史を五百年先んじて未然にハメ殺すための、神仏の如き大計略。新政庁の地球規模の白化革命は、誰一人として取り残さぬ大慈悲とともに、陸の覇権構造をも完全にハメ殺していくのであった。
3:地球の守護者の大謀略と、覇王の冷や汗まみれる深夜の夜泣き
「ふん、シベリアの資源確保も女真族との不滅の密約も、すべて余の計算の内よ。海の流通網を固定給で封殺し、陸の暴走は先回りの大義名分でハメ殺す。世界を無理のない調和へと導くことこそ、余の真の天下布武よ!」
余は大広間の世界大航海図を見下ろし、集まった近代官僚たちに向けて傲然と言い放ち、彼らの狂信的な崇拝の焔を最高潮に燃え上がらせていた。
しかし、日没とともに安土城の奥御殿の寝所へと帰還した余は、冷徹な総大総督の威厳を一瞬で解体され、冷や汗まみれの深夜の激務に追われていた。そこには、産後の静養から見事に回復して微笑む正室・帰蝶と内政副総裁の直虎、そして二人の赤子をあやす永高内親王殿下と誾千代、金髪碧眼の英国王女の姿があった。
「お帰りなさいませ、総大総督。女真族を福祉で生殺しにする大計略、誠に天晴れにございます。……さあ、本夜の『給与全額保証の国営育児交代制職務(交代制シフト)』の最難関、赤子の『同時深夜離乳食(乳粥)やり』の深夜番、金一文の狂いも無くお励みくださいね?」
帰蝶がすべてを見透かすような美しい微笑みで二つの器を指差すと、同時に二人の赤子が元気いっぱいに夜泣きを始めた。
「織田の完全白化の育児の精神、私も十割同期いたしました。上様、深夜に泣き叫ぶ赤子の口へ、一文の狂いも無く乳粥を同時に運ぶ神算鬼謀、拝見いたします」と、直虎や英国王女も楽しげに余をロックオンした。余は滝のような冷や汗を流しながら、二つの匙を手に二人の我が子を交互にあやし、乳粥を口元へと運んだ。
(……いやいやいや! 昼間は世界を見据えてシベリアの石炭を国営化し、満州の女真族を盤上で操る冷徹な覇王をやってるのに、夜は深夜に冷や汗流しながら赤子の口へ乳粥を同時に運ぶ交代制職務って、余の頭脳と胃壁への圧力が十割限界領域(ブラック環境)なんだけど!? いよいよ世界をさらに驚かせる『南米の資源確保とアメリカ開拓の本格始動』の大一番なのに、余の家庭内の限界胃壁が本当に戦う前に跡形もなく崩壊しちゃうよ!)
世界を無理のない健全な調和へと導く覇王の歩みとは裏腹に、大奥における「無理のない多国籍子育て革命」の荒波に揉まれる余の胃の寿命だけは、嬉しさと緊張の冷や汗とともに、今夜も限界を突破してキリキリと悲鳴を上げるのであった。
(第51話:東日の本州の大都市計画と、多国籍大奥の知恵へ続く)




