第49.5話:幕間・天竺の白き連邦と霧の都に響く覇唱
第49.5話:幕間・天竺の白き連邦と霧の都に響く覇唱
1:ムガル帝国の驚愕と、飢えなき国営連邦の誕生(天竺指導者視点)東南アジアの交易網を同期させた新政庁の黒船艦隊が、インド洋を西へと渡って突如として天竺の沿岸へと出現したあの日、ムガル帝国の朝廷や各宗派の指導者たちは、国が滅ぶ恐怖に慄いていた。だが、彼らの前に立ち塞がった正一位・太政大臣にして葦原中国総大総督たる織田信長の手口は、武力による掠奪ではなく、五百年先の世界の悲劇を先回りしてハメ殺す人道地政学チートであった。
将来、海の果ての異国が独自の宗教対立を煽り、凄まじい流血の惨劇(分離独立の悲劇)を生む未来の歴史を先に教えられた指導者たちは、その恐るべき予言に腰を抜かした。しかし、新政庁が突きつけたのは、信仰ごとの強引な切り分けではなく、ムガル帝国の枠組みを残したまま、ヒンドゥー教やイスラム教の地域ごとに『完全なる国営地方自治権』を授けるという、世界一無理のない健全な国営連邦の提案だったのである。
「不毛な身内争いを十割封殺する代わりに、全宗派の民に対し、新政庁が全額保証する『国営固定扶持(定額給与)』を毎月金一文の狂いも無く全額支給する……。貧困の隙を突いて内紛を煽る南蛮の魔手を、戦う前に福祉の力で完璧に詰ませるとは」
宗教の壁を近代の富の分配によって溶かされ、戦う前に完璧に盤上で救い上げられた天竺の指導者たちは、この東洋の覇王の大慈悲に涙を流して大感動した。飢えと争いから先回りして大地を救う織田の完全白化(ホワイト化)の精神に、彼らは狂信的な崇拝の焔を燃やし、不滅の忠誠を誓うのであった。
2:新大陸の暁光と、黄金の金山に平伏する名門(毛利・島津視点)
太平洋の島々を完璧な中継補給基地として同期させ、ついに海の果ての新大陸(アメリカ西海岸)へと無血上陸を果たした『南海防衛旅団』。その指揮を執る毛利輝元と島津義久は、信長が未来の記憶から『東日の本州』と名付けた広大な大地の前に立ち、織田新政庁の偉大さに魂を十割奪われていた。
西洋の国々がこれからこの新大陸で行う、銃火による先住民族の虐殺や掠奪という黒い歴史を五百年先んじて完全にハメ殺すため、彼らは信長の『新大陸人道融和令』を一分の狂いも無く実行していた。先住民族の独自の文化や土地を百パーセント尊重し、手厚い定額給与を支給して新政庁の開拓顧問(地方官僚)として強制雇用していく、無理のない美しい組織論に名門の将たちは深く平伏した。
「先住民族の案内で掘り当てた、このカリフォルニアと呼ばれる地の『黄金の財源(金山)』……。一文の狂いも無く莫大な黄金が眠っておるとは、上様の知恵はもはや神仏の領域にございますな」
毛利輝元が震え、島津義久も深く頭を垂れる。明国や朝鮮半島には絶対に手出しをしない(十割スルー)という厳格な規律を貫きつつ、海の果ての莫大な国営資源を一兵も損なうことなく先回り確保していく覇王の神算鬼謀。世界最強の海洋帝国の近代官僚となった彼らは、この白き大開発の公務に命を捧げる覚悟を、新たな歓喜とともに固めるのであった。
3:霧の都の女王の溜息と、手綱を握られた大英帝国(エリザベス女王視点)
ロンドンの宮殿にて、イングランド女王エリザベス一世は、霧深い窓の外を眺めながら、手元にある極秘の書状を前に、深く、静かな溜息を漏らしていた。それは、極東の織田新政庁が天竺の全域を戦う前に完璧に無血国営化し、大洋の流通網をすべて掌握したという、驚天動地の地政学チートの報告であった。
当時のイギリスは、明智光秀との不滅の秘密同盟により、南蛮の無敵艦隊の脅威を退けて救われたばかりであり、織田の黒船が誇る近代火力には絶大な感謝と敬意を抱いていた。しかし、エリザベス女王ほどの聡明な君主の目は誤魔化せない。信長が東洋の海や天竺の富を先回りして国営化したことは、将来的にイギリスが世界に進出しすぎないよう、完璧に手綱を握ってハメ殺した(釘を刺した)冷徹なる計略であることを見抜いていた。
「我が大英帝国が将来、天竺の富を掠奪する未来の動きまで五百年先んじて見透かし、戦う前に盤上で完璧に封殺するとはね。織田信長、あなたは世界中の宗教や国家の暴走を止める、この世界の真の守護者だわ」
女王は敵に回す恐怖を覚えながらも、安土の大奥へ嫁がせた王女からの手紙を読み、不敵に微笑んだ。「過酷な雑務を十割排除した楽園で、正一位の夫自らが深夜に冷や汗を流して交代制の育児職務に励んでおられます」という、世界一温かく無理のない環境の報告。世界を近代の富と福祉で白化させていく極東の覇王のシステムの美しさに、霧の都の女王もまた、抗えぬ魅力を感じて心酔していくのであった。
(第50話:シベリア深部の黒き鉄路と、満州の女真族密約へ続く)




