第44話:南海防衛の十割同期と、安土大奥の未来誕
1:台湾・海南島の無血同期と、海の黄金の防衛網
新政庁の『南海防衛旅団』を率いる毛利輝元と島津義久は、比律賓の南蛮艦隊が消滅した軍事力の空白地帯を突き進み、電撃的に『台湾』ならびに『海南島』へと漆黒の鉄甲蒸気船を展開させていた。
信長があらかじめ授けていた地政学チートの親書と破格の「国営固定扶持」の予算書を携えた毛利らは、現地の長たちを戦う前に完璧にハメ殺す(圧倒する)算段を十割実行していた。
ガレオン船を一瞬で海の藻屑に変えた黒船の威容を前に、現地の長たちは戦う前に戦意を百パーセント喪失していたが、毛利らが提示したのは西洋の国々のような略奪ではなく、独自の文化や土地を尊重した上での「近代官僚としての強制雇用(白化)」であった。
「我らは明国(中国大陸)や朝鮮半島には一歩も手出しをせぬ。その代わり、この海の要衝を新政庁の『神聖直轄領』として同期し、全住民に手厚き固定給を全額保証する! 飢えと異国の魔手から先回りして国家を救う、上様の大慈悲を受け入れられよ!」
桁違いの近代の富と、将来の侵略を未然に防ぐ大義名分(黄金の盾)を前に、台湾と海南島の長たちは涙を流して無血での国営化を受け入れた。
これにより、琉球、ハワイ、台湾、海南島を結ぶ「南海の絶対防衛圏」が一兵も損なうことなく完璧に詰まされる形で完成し、大陸の巨大王朝が海の覇権を求めて言いがかりをつけてきても、戦う前に完璧に盤上で封殺する海の防衛網が誕生したのである。
2:安土大奥の命がけの試練と、国営産褥交代制の真価
南海の掌握という地球規模の勝利の早馬が安土城へ届くのと時を同じくして、安土の奥御殿では、日の本の未来を担うもう一つの、最も過酷で温かき命がけの戦いが幕を開けていた。
身重の正室・帰蝶、ならびに内政副総裁の井伊直虎の二人が、ついに同時に産気づいたのである。
大奥がかつてない緊張感に包まれる中、余が未来の最先端の知恵から敷いた『給与全額保証の国営育児交代制職務(交代制シフト)』と、徹夜を厳禁とした無理のない健全な労働環境が、その真価を十割発揮していた。
臨時の総裁代行たる永高内親王殿下が気品ある差配で国営医療師の老婆たちを交代制で配置し、立花誾千代や長崎・奥州からの侍女たちが、誰一人として過労死することのない完璧な連携で湯を沸かし、産室を清潔に保つ職務を同期させていた。
さらに、大奥へ上陸したばかりの英国王女も、異国の地で実践される「世界一ホワイトな出産・育児環境」のあまりの温かさと組織論の美しさに深く感動し、新政庁の規律を学ぶため、進んで侍女たちと共に交代制の看病に奔走していた。
理不尽な雑務や身内の嫉妬による足の引っ張り合いが一切排除された白き楽園の中で、帰蝶と直虎は、互いの手を固く握り締めながら、無理なく、しかし命がけの産声を上げようとしていた。
3:覇王の冷や汗まみれる産声と、崩壊寸前の限界胃壁
「オギャア! オギャア!」
安土城の奥御殿に、一分の狂いも無い健やかな二つの産声が同時に響き渡った。帰蝶も直虎も、無理のない交代制の看護と国営医療の粋を尽くした環境のおかげで、産後の肥立ちも極めて良好、織田の血筋を百代先まで繋ぐ元気な男児と女児がここに無事誕生したのである。
大奥の侍女たちや新政庁の近代官僚たちが「上様、おめでとうございます! 織田の未来は十割安泰にございます!」と感涙し、平伏していた。余は覇王の仮面を被りつつ、我が子の小さな手を握り締め、嬉しさとあまりの緊張からの解放で背中から滝のような冷や汗を流していた。
(……いやいやいや! 本当に良かった! 母子ともに五体満足で無事に出産を終えてくれたのは、地政学チートの何万倍も嬉しいよ! 英国王女もすっかり我が家のホワイト精神に同期して看病に励んでくれたし、これで世界婚姻同盟の足固めも百パーセント完璧だわ!)
余は内心でドヤ顔の冷や汗を流し、心からの大いなる安堵を確信していた。
しかし、生まれたばかりの我が子を愛おしそうに抱く帰蝶と直虎、そしてそれを囲む内親王殿下や誾千代たちから、すぐさま次なる「家庭内の過酷な公務」の御触れが下された。
「さあ、正一位にして総大総督の我が夫殿。無事の出産、誠に天晴れにございました。……ですがこれからは、上様が自ら制定された夜泣き対応の『深夜番交代制シフト』の本番にございますよ? 新生児の二つの夜泣きを一分の狂いも無くハメ殺す(あやす)腕前、金一文の狂いも無くお励みくださいね?」
帰蝶と直虎が、すべてを見透かすような美しい微笑みで二つの国営哺乳瓶(乳入れ)を差し出してきた。誾千代や英国王女も、楽しげに余の困り顔をロックオンしている。
(……いやいやいや! 昼間は毛利や島津を動かして台湾や海南島を国営化する冷徹な総大総督をやってるのに、夜は深夜に冷や汗流しながら二人の赤子の同時夜泣きをあやす交代制職務って、余の頭脳と胃壁への圧力が十割ブラック環境なんだけど!? 次話はついに陸の満州の『女真族』へ接触する大一番なのに、余の家庭内の限界胃壁が本当に戦う前に跡形もなく崩壊しちゃうよ!)
世界を無理のない健全な調和へと導く覇王の歩みとは裏腹に、家庭内における「完全白化な双子育児革命」の荒波に揉まれる余の胃の寿命だけは、嬉しさと緊張の冷や汗とともに、今夜も限界を突破してキリキリと悲鳴を上げるのであった。
(第44.5話:幕間・満州に響く忍びの足音と南海の白き夜明けへ続く)




