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第41話:霧の都からの極秘書状と、王女輿入れの条件

1:光秀からの早馬と、大英帝国との秘密同盟


元平げんぺい二年の春、安土城の執務室には、地球を半周する大航海を終えた明智光秀(惟任日向守)からの、金一文の狂いも無い極秘の書状が届けられていた。比律賓フィリピンのマニラ沖にて南蛮艦隊を十割すべて海の藻屑へと変えた漆黒の『鉄甲蒸気船』の戦果は、霧の都ロンドンにおいて、相手側の戦意を戦う前に完璧にハメ殺すほどの凄まじい大音響となって響き渡っていたのである。


書状を開いた余は、覇王の仮面を被りつつも、光秀の残したあまりにも完璧な交渉の成果に内心で安堵の冷や汗を流していた。南蛮の無敵艦隊に包囲され、いつ国が滅んでもおかしくない絶望的な環境に喘いでいたイングランド女王エリザベス一世は、新政庁がもたらした「南蛮ハメ殺しの実績」を前に、織田信長という極東の覇王との『不滅の秘密同盟』に即座に署名したのだという。


「上様、エリザベス女王は我が新政庁の圧倒的な近代火力と、無理のない世界調和の思想に深く心酔しております。カトリック教皇庁の野心を戦う前に完璧に詰ませるための、大英帝国との血縁の絆……これより、その驚天動地なる具体的な条件をここに上奏いたします」


光秀の端正な筆跡から伝わる緊奮感に、余の胃壁はキリキリと軋んだ。世界を盤上で操るこの地球規模のハメ手は、ついに海の果ての王室をも巻き込み、安土の奥御殿へと直結する新たなる国際結婚の火蓋を切ろうとしていた。



2:王室の養女輿入れと、大奥の激しき洗礼


光秀がもたらした書状には、エリザベス女王が同盟を不滅のものにするため、王家の血筋を引く高貴な娘を「女王の代理(養女)」として、安土城へ輿入れさせるという具体的な算段が記されていた。宗教の壁を越え、バチカンの教皇庁に対する「最大の精神的ハメ手」となるこの国際婚姻。だが、この報告を余の傍らで覗き込んでいた正室の帰蝶、内政副総裁の直虎、そして誾千代の三頭の目が、一瞬にして絶対零度の光を宿した。


「あら、海の果ての島国から、金髪碧眼の気品溢れる王女殿下が我が大奥へ赴任してまいりますか。実に見事でございますね、上様」


帰蝶が、すべてをすり潰すような美しい微笑みを浮かべ、新しく書き直された大奥の職務表をパチリと叩いた。


「正一位の夫に相応しい国際外交とはいえ、我が大奥へ入るからには、異国の王女とて例外は認めませぬ。まずは上様が制定された『世界一無理のない育児交代制職務』を一から叩き込み、完全白化の精神を同期してもらわねば」


直虎もまた、領地経営で鍛えた鋭い視線で、未来の夜泣き対応の交代表に『英国王女』の枠を書き加えていく。


「南蛮の無敵艦隊を戦う前にハメ殺す同盟、武人として血が騒ぎます。……ですが上様、その異国の姫君が安土へ着いた暁には、まずはこの誾千代が新政庁の規律を十割、お体に教え込んで差し上げますゆえ、どうぞご安心くださいませ?」


誾千代が算盤を激しく鳴らしながら、バチバチとした火花を散らして余をロックオンした。


(いやいやいや! 怖えよ! イギリス王室からの嫁入りで世界戦略は百パーセント完璧に詰んだと思ったのに、大奥の『女の陣』が世界大戦に突入しちゃったじゃん!? 異国の王女殿下、安土に着いた瞬間にお姉様方の洗礼でハメ殺されちゃうんじゃないの!?)


余は覇王の威厳を保ちつつも、家庭内の凄まじい圧力に冷や汗を流し、胃薬を心の中で激しく求めていた。



3:次なる極秘開拓路と、覇王の冷や汗まみれる深夜の乳粥


「ふん……英国との同盟はすべて余の計算の内よ。コエリョの野心を完全に挫いた今、我が新政庁は次なる絶対防衛圏の確立へ向けて動く。安東らの北海開発総局の成功に続き、これよりは『シベリアの資源確保』、ならびに太平洋の果ての『ハワイとの不滅の対等同盟』への大極秘航路を開通させるわ!」


余は大広間の世界地図を指差しながら、集まった新政庁の官僚たちに向けて傲然と言い放った。明国(中国大陸)や朝鮮半島には絶対に手出しをしない(十割スルー)代わりに、豊かな海の流通網とシベリアの資源だけを先回りして国営化する、神仏の如き地政学チートの全貌であった。官僚たちは覇王のあまりの先見性に狂信的な崇拝の焔を燃やし、ひれ伏していた。


世界の生態系から三大宗教の暴走阻止、引いては地球規模の婚姻同盟までを完璧に手中に収め、傲然たる足取りで奥御殿へと帰還した余。だが、深夜の寝所の扉を開けた瞬間、冷徹な総大総督の威厳は一瞬で解体され、冷や汗まみれの深夜の激務が幕を開けた。


懐妊中で大きくなった腹部を抱えて静かに眠る帰蝶や直虎を絶対に起こさぬよう、余は足音を忍ばせ、今夜も『給与全額保証の国営育児交代制職務』の深夜番を金一文の狂いも無く新政庁の掟通りに実践していた。

赤子の小さな泣き声を聞きつけるや否や、余は一分の狂いも無い火加減で山羊の乳を用いた特製の「無理のない手作り離乳食(乳粥)」を調合し、匙で優しく口元へと運んだ。


(……いやいやいや! 昼間は世界を見据えてエリザベス女王を盤上で操り、シベリアやハワイの大開発を指示してるのに、夜は深夜に冷や汗流しながら赤子の離乳食の温度を一文の狂いも無く調整する交代制職務って、余の頭脳と胃壁への圧力が十割ブラック環境なんだけど!?)


世界を無理のない健全な調和へと導く覇王の歩みとは裏腹に、大奥における「無理のない子育て革命」の荒波に揉まれる余の胃の寿命だけは、嬉しさと緊張の冷や汗とともに、今夜も限界を突破してキリキリと悲鳴を上げるのであった。


(第42話:大奥の国営産褥休暇と、布哇王国の対等同盟へ続く)

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