第40話:北海開拓の厳冬超えと、石狩川の大開発
1:北海開発総局の厳冬対策と、アイヌの知恵の同期
元平二年の初春、蝦夷地(北海道)の石狩川の河口付近には、新政庁の『北海開発総局』が築いた、無理のない頑強な開拓拠点が白き雪の中にそびえ立っていた。長官の安東愛季、副長官の南部晴政、津軽為信らは、信長があらかじめ授けていた未来の知恵と羆対策を十割実行し、誰一人として脱落者を出すことなく、奥羽の兵たちと共に極寒の冬を完璧に乗り越えていた。
彼らが凍死や飢えに苦しむことなく厳冬を越えられたのは、現地の先住民族である『アイヌ』の民たちと、一分の狂いも無い対等なる信頼関係を同期させていたからである。新政庁から手厚き「国営固定扶持(定額給与)」を支給され、案内人(地方官僚)として強制雇用(白化)されたアイヌの長たちは、新政庁の温かき姿勢に深く感動し、雪深い大地での生き抜く知恵や狩猟の術を惜しみなく伝授してくれたのだ。
さらに、信長が予算書と共に厳命していた「羆のハメ手(遭遇防止措置)」により、開拓拠点の周囲には音の鳴る道具や強固な防塞、と国営の火器が万全に配備されていた。安東愛季は、アイヌの案内人たちと共に、安全に毛皮や干し魚の国営交易を進めながら、春の訪れとともに始まる本格的な大開拓への手応えを確かに感じていた。
「上様のお慈悲とアイヌの民の知恵があれば、蝦夷地の冬など恐るるに足らず。独自の掠奪を行わずとも、近代の富の分配だけでこれほど豊かに開拓が進むとは、新政庁の白化の思想、誠に天晴れにございますな」
南部晴政や津軽為信も深く頷き、北海の絶対防衛圏を固めるため、次なる千島列島や樺太への調査航路の準備へ向けて、一兵も損なうことなく意気揚々と動き出すのであった。
2:ニシン・鮭の国営保護令と、自然環境のハメ手
春を迎え、石狩川の氷が解けると同時に、北海の海には黄金の波を思わせるほどの膨大な『鰊』や『鮭』の群れが押し寄せてきた。かつての歴史であれば、和人の商人たちによる目先の利益を求めた過酷な乱獲が始まり、アイヌの民の生活圏を破壊して悲惨な紛争の火種を生むところであった。
しかし、未来の記憶を持つ信長は、この五百年後の環境破壊や生態系の崩壊を先回りして完全にハメ殺すため、安東たちへ厳格な『北海環境直轄保護令』の御触れを発令していた。
「良いか、鰊や鮭の網を引く際は、国営造船局が定めた目の粗い特製の網のみを使用せよ。稚魚まで十割根こそぎ掠奪することは、新政庁において重罪である! 川や海の生態系を維持し、アイヌの民と等しく富を分かち合う無理のない健全な漁獲量を、一分の狂いも無く徹底せよ」
さらに信長は、将来的に製紙業や鉱山開発で山の木々が乱伐され、川が汚れて鮭が上ってこなくなる未来の社会問題をハメ殺すため、森林の国営植樹計画も同時に同期させていた。山林の緑を保護し、川の清流を永久に健やかに保つことこそが、北海の富を持続可能(完全白化)にするための覇王の知恵であった。
「自然を支配して食い潰すのではなく、調和を維持したまま、未来永劫に民全員の日常の味として残す。これぞ上様の天下布武よ」
安東愛季らは信長の神仏の如き大計略に狂信的な崇拝の焔を燃やし、一文の狂いも無い環境保護の規則を守りながら、無理のない豊かな海の恵みを新政庁の国営財源へと蓄えていくのだった。
3:北海豊穣の早馬と、覇王の冷や汗まみれる離乳食
安東らによる蝦夷地の環境調和型大開発が完璧な成功を収め、鰊や鮭の国営交易の莫大な利益が記された報告書が、安土城の執務室へと早馬で届けられた。新政庁の近代官僚たちは、上様の地球規模の地政学チートの威力に狂喜乱舞し、平伏していた。
(……よしよし! 蝦夷地の開拓は十割大成功だ! アイヌの民とも不滅の信頼を同期できたし、乱獲を防げば未来の環境問題も戦う前に完璧に潰せるぞ! 斎藤龍興の佐渡金山に続き、これで世界大開発の軍資金は完全に揃ったわ!)
余は覇王の仮面の下でドヤ顔の冷や汗を流しつつ、心の中で大いなる勝利を確信していた。
しかし、日没とともに安土城の奥御殿へと帰還した余は、傲然たる威厳を一瞬で解体され、今夜も冷や汗まみれのパパの激務に追われていた。
寝所の扉を開けると、そこには大きくなった腹部をさする正室・帰蝶と内政副総裁の井伊直虎、そして婚姻内定の立花誾千代が、余の帰りを待ち構えていた。本夜は、余が自ら制定した『給与全額保証の国営育児交代制職務(交代制シフト)』の、深夜の離乳食(乳粥)作りの初番の夜なのだ。
「お帰りなさいませ、総大総督。北海の鰊の保護、誠に見事でございました。……さあ、身重の私たちを起こさぬよう、赤子のための無理のない手作り離乳食の湯加減、金一文の狂いも無くお励みくださいね?」
帰蝶が、すべてを見透かすような美しい微笑みで山羊の乳の入った粥の器を指差した。直虎も「世界を調和させる上様の算盤の腕前、火加減の差配で拝見いたしますよ」と楽しげに笑う。
(……いやいやいや! 昼間は世界を見据えて北海の生態系を守る大計略をぶち上げてるのに、夜は深夜に冷や汗流しながら赤子の離乳食の温度を調整する交代制職務って、余の頭脳と胃壁への圧力が十割限界領域(ブラック環境)なんだけど!?)
世界を無理のない健全な調和へと導く覇王の歩みとは裏腹に、家庭内における「完全白化な子育て革命」の荒波に揉まれる余の胃の寿命だけは、嬉しさと緊張の冷や汗とともに、今夜も限界を突破してキリキリと悲鳴を上げるのであった。
(第41話:霧の都からの極秘書状と、王女輿入れの条件へ続く)




