第39話:琉球王国の無血同期と、比律賓マニラ急襲
1:南海の要衝と、琉球王国の無理のない国営化
漆黒の鉄甲蒸気船を筆頭とする新政庁の世界大航海使節団を率い、大英帝国へ向けて伊勢の大湊を出港した明智光秀の艦隊は、マニラ(比律賓)へと南下する途上、南海の要衝たる『琉球王国』の海域へと入っていた。信長はこの大航海の途上で、南方の絶対防衛圏の要たる琉球を戦う前に完璧にハメ殺すため、光秀に極秘の予算書を託していたのである。
光秀の黒船艦隊が那覇の港へ突入すると、帆も無いのに黒煙を上げて爆走する漆黒の巨躯と、そこに並ぶ近代大砲の威容に、琉球王国は戦う前に戦意を百パーセント喪失した。そこへ下船した光秀は、信長からの親書と破格の「国営固定扶持」の予算書を厳かに突きつけた。
「琉球王よ、怯える必要はございませぬ。上様は貴国を武力で掠奪せんとする南蛮の魔手から守るため、独自の王権と豊かな交易文化を十割尊重したまま、新政庁の『南海開拓総局』の最高顧問として手厚き固定給で強制雇用(白化)しに参ったのです。独自の軍事力などという金食い虫は解体し、新政庁の水軍(南海防衛旅団)と同期する方が、どれほど国家が無理なく安泰か分からぬはずがないでしょう!」
後の時代に島津氏らによって侵略される悲惨な未来を五百年先んじて完璧に潰され、同時に提示された新政庁の無理のない労働環境の条件を前に、琉球王は涙を流して無血での国営化を受け入れた。これにより、南方防衛の最大の拠点たる琉球が戦わずして新政庁へと同期され、補給基地としての足固めを完璧に終えた光秀の艦隊は、次なる標的たるマニラの南蛮軍へ向けて、さらなる爆音を響かせて南下するのだった。
2:鉄甲蒸気船のマニラ急襲と、南蛮艦隊の完全消滅
琉球での万全な補給を終え、南シナ海を猛スピードで突き進む新政庁の鉄甲蒸気船。光秀が次なる標的に定めたのは、アジアにおける南蛮の最大の拠点であり、宣教師コエリョが裏で巨大船団の救援要請を出していた『マニラ』の港であった。いずれ大英帝国のエリザベス女王と対等な秘密同盟を結ぶためにも、世界を苦しめるこの南蛮の軍事力は、今のうちに戦う前に完璧にハメ殺しておく必要があったのだ。
マニラの沖合に突如として出現した漆黒の黒船の威容に、港に停泊していた南蛮のガレオン船(大帆船)の艦隊は驚愕し、大混乱に陥った。南蛮の総督が迎撃の命令を下すよりも早く、新政庁が誇る国営造船局の近代大砲が、一分の狂いも無い流体力学の計算のもとで一斉に火を噴いた。
ドゴォォォン! と凄まじい轟音が響き渡り、火薬を自動で装填する交代制の職務によって限界まで連射速度を高められた織田の砲撃は、反撃の機会すら用意させぬ圧倒的な暴力となって南蛮艦隊を襲った。帆をへし折られ、鉄板の装甲に大砲を弾かれた南蛮の巨船どもは、戦う前に完璧に詰まされ、わずか一刻(二時間)のうちに十割が海の藻屑へと消え去ったのである。
「お、おお……上様が与えてくださった未来の設計図と、徹夜を厳禁として脳を活性化させた国友鍛冶の火器、これほどまでの威力とは……。これならば異国の魔手など恐るるに足らず、アジアにおける南蛮の軍事覇権は一瞬で崩壊ですな」
光秀は、覇王の地政学チートの恐ろしさに内心で冷や汗を流しつつも、大戦果という最高の手土産を引っ提げ、船内完全週休二日制という無理のない健全な環境のなかで、遥か霧の都イングランドへ向けて本格的な大航海へと舵を切るのだった。
3:霧の都の女王と、手土産の驚天動地チート
マニラの南蛮軍を完膚なきまでに叩き潰した後、インド洋と喜望峰を経て数ヶ月、新政庁の使節団を乗せた鉄甲蒸気船は、ついに海の果ての霧の都ロンドンへと到着していた。当時のイングランドは、強大な南蛮の無敵艦隊に包囲され、いつ国が滅んでもおかしくない孤立無援の絶望的な苦境に立たされていたが、そこに現れた東洋の漆黒の黒船に、霧の都はひっくり返るほどの騒ぎとなった。
ロンドン宮殿の謁見の間にて、気品溢れるイングランド女王エリザベス一世と対面した光秀は、数ヶ月の大航海後とは思えぬほど、肌に艶が戻って元気に満ち溢れていた。信長が定めた『船内完全週休二日制』と、国営医療師による手厚い栄養配給のおかげで、過労死するどころか、日の本にいた時より健康になっていたのである。光秀は、優雅な所作で頭を垂れると、女王に向けて厳かに、しかし戦う前に完璧にハメ殺す声音で告げた。
「イングランドの偉大なる女王陛下。我が新政庁の最高権力者、正一位・太政大臣にして葦原中国総大総督たる織田信長より、教皇庁をハメ殺すための『不滅の秘密同盟』の親書をお持ちいたしました。……ああ、それとお近づきの印として、貴国を苦しめていたアジアのマニラ南蛮艦隊は、我が鉄甲蒸気船の火力によって十割、すべて殲滅して海の藻屑にしておきましたのでご安心を」
「……な、何ですって……!? アジアの南蛮軍が、一瞬で全滅したというの……!?」
エリザベス女王は、あまりの驚愕に女王の威厳を忘れて椅子から立ち上がり、美しい瞳を限界まで見開いた。南蛮の脅威を先回りして潰し、大英帝国の未来の動きまで手綱を握って世界を調和させんとする織田信長という極東の覇王の規格外のスケールに、女王は底知れぬ畏怖を抱き、秘密同盟への署名を即座に決意する。世界の最高権力者すらも戦う前に完璧に近代の盤上で操る、新政庁の地球規模の白化革命(世界大開発編)が、ここに鮮烈なる火蓋を切るのだった。
(第39.5話:幕間・元平の宸翰と南海に昇る白き旭日へ続く)




