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第35話:第一回国営大開発最高会議と、関白の拝礼

1:関白の拝礼と、全大名招集の安土城


改元された『元平げんぺい』元年の安土城の大広間には、かつてないほどの緊迫感と威圧感が立ち込めていた。毛利輝元、小早川隆景、長宗我部元親、島津義久、そして恭順したばかりの伊達政宗、最上義光、南部晴政、蘆名盛隆、安東愛季、津軽為信、葛西晴信ら、降伏した全大名が総勢数十名、一堂に会していたからである。


彼らは皆、独自の武力を解体され、新政庁の近代官僚として強制雇用された身であった。


その重苦しい静寂を破り、大広間の最上段へ歩み出てきたのは、余ではなく、朝廷の頂点たる関白その人であった。関白は、並み居る天下の諸大名たちの目の前で、余に向かって深く、厳かに平伏してみせたのである。


「正一位・太政大臣、ならびに葦原中国総大総督たる織田上様。上様が敷かれた手厚い国営固定扶持により、五摂家をはじめとする公家衆一同、永久に無理のない豊かな暮らしを営めるようになりました。朝廷を困窮の淵から救い、日の本の戦乱を十割すべて終わらせてくださった救世主たる上様に、朝廷を代表して心より御礼申し上げます」


朝廷の最高権威である関白が、織田の圧倒的な経済力の前に涙を流して平伏するその姿を見て、大広間に集まった元大名たちは、完全に息を呑み、戦う前に精神を完璧にハメ殺されていた。


(……いやいや、関白殿、わざわざ安土までお礼を言いに来てくれるなんて、余の絶対的な権威がこれ以上ないほど全大名に見せつけられちゃったよ! これでもう、余がこれからどんな無茶な世界大開発方針をぶち上げても、誰も一言も逆らえない空気になっちゃったじゃん!)


余は覇王の仮面の下で安堵の冷や汗を流しつつ、傲然たる態度で全大名を見下ろすのだった。



2:世界無双の大開発と、奥羽・西国の配置換え


関白を見送った余は、大広間の壁一面に、未来の記憶から一分の狂いも無く描き出した「環境調和型・海洋帝国」の巨大な大航海図を広げさせた。


「良いか、日の本全土の国営化は完了した。これより我が新政庁は、世界無双の大開発へと舵を切る。ただし、明国(中国大陸)や朝鮮半島には絶対に手出しは無用、十割すべて白く塗り潰して関与せぬ。その代わり、海の流通網と資源だけは完璧に掌握する!」


余の力強い宣言とともに、驚天動地の「適材適所の配置換え(強制雇用)」が全大名へ下された。


「安東、南部、津軽、葛西ら奥羽の諸将は、その優れた北海への航海術と経験を活かし、蝦夷地(北海道)、樺太、千島列島を開拓する『北海開発総局』へ就職せよ! いずれはシベリアの資源確保や、太平洋の果てまで国営航路を伸ばす! 対して毛利、長宗我部、島津ら西国の水軍力は、南方の琉球、台湾、海南島を守る『南海防衛旅団』へと一本化し、海の絶対防衛圏を構築せよ!」


さらに余は、かつて美濃を巡る宿敵であり、佐渡島へ島流しにしていた斎藤龍興の処遇についても、全大名前で冷徹に言い放った。


「佐渡で不貞腐れていた斎藤龍興は、本日をもって罪人の身分を解く! 家臣であった竹中半兵衛の手引きにより、手厚い固定給を支給して『佐渡金山開発総局長』として新政庁へ強制雇用した! 21世紀の最先端技術を用いた、労働者の安全第一という無理のない健全な労働環境(完全白化)で、佐渡の莫大な金銀を新政庁の国営財源として掘り出させ、世界大開発の軍資金とする!」


かつての宿敵までをも「福祉の提示」だけで近代官僚化し、佐渡金山を丸ごと国営化してみせた余の地政学チートの規模に、全大名たちは恐怖を通り越し、狂信的な崇拝の焔をその目に宿して平伏するしかなかった。



3:三大宗教の暴走阻止と、覇王の限界胃壁


「最後に、南蛮の宣教師コエリョが裏で本国へ巨大船団を救援要請した不穏な動き、すべて余の国家情報省(伊賀の忍び)が完璧に露見させておる。奴らの侵略の野心は、石炭の炎で動く我が新政庁の漆黒の『鉄甲蒸気船』による西海封鎖網で戦う前に完璧にハメ殺す!」


余は、大広間に集まった全大名たちの視線を釘付けにしながら、さらにその先にある地球規模の宗教外交方針を傲然と言い放った。


「だが、キリスト教の純粋な信仰そのものは弾圧せぬ。いずれ大英帝国イギリスと秘密同盟を組み、南蛮を牽制しつつも、将来的に聖地エルサレムを我が織田東インド商会の中立直轄地として世界管理する! イスラム教の関係者とも早期に信頼関係を構築し、ローマ教皇庁の侵略の野心に釘を刺した後は、三大宗教の暴走を止めて全ての教徒が安全に巡礼できる環境を先回りして整える! これこそが、世界を調和させる余の天下布武よ!」


「……世界中の宗教戦争すら、五百年先んじて戦う前にハメ殺すというのですか……! なんという神仏をも超える大慈悲……!」

伊達政宗が震えながら感涙し、上杉謙信も毛利輝元も、織田の圧倒的なスケールの前に魂を十割すべて奪われていた。


(いやいやいや! みんな感動して狂信的な目で余を見てるけどね! 龍興の奴がすんなり就職を受け入れて佐渡金山の予算の目処が立ったのは嬉しいけど、かつての宿敵を部下にするなんて胃に悪すぎるわ! あと、この巨大な会議が長引けば長引くほど、安土の奥御殿で待ってる懐妊中の帰蝶や直虎たちの『国営育児交代制職務(交代制シフト)』の手伝いに遅れちゃうんだけど!? 早く帰って奥方たちの機嫌を取らないと、余の家庭内の限界胃壁が戦う前に跡形もなく解体されちゃうよ!)


日の本を完全に掌握し、いよいよ世界を救う大開発へ向けて全大名を近代官僚化してみせた覇王。しかし、その偉大なる一歩とは裏腹に、余の胃の寿命だけは、嬉しさと緊張の冷や汗とともに限界を突破していくのであった。


(第36話:元平の上皇隠居革命と、新帝の即位へ続く)

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