表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/90

第34話:禁裏への凱旋と、日の本統一の宣下

1:禁裏への凱旋と、戦乱終結の奏上


西暦1574年、和暦にして天正2年。最上や南部、蘆名、安東、さらには津軽や葛西といった奥羽の全勢力を一兵も損なわずに強制雇用し、日の本全土の完全国営化(日本統一)を成し遂げた新政庁。その最高権力者たる余は、厳かな正装に身を包み、京都の御所(禁裏)へと凱旋していた。

この歴史的な参内において、余の傍らには、新政庁へ嫁入りされたばかりの正親町天皇の皇女・永高内親王殿下の美しきお姿があった。


紫宸殿の奥、帝の御前に平伏した余は、未来の知識によって勝ち得た「一兵も損なわぬ無血の平定」と、日の本の戦乱が永久に終わり、無理のない労働環境が敷かれたことを厳かに奏上した。


「帝、ここに奥州の津軽や葛西に至るまで、すべての私的な武力を解体し、新政庁への国営化を完了いたしました。これより日の本は、兵も民も飢えることのない、平穏なる大地へと生まれ変わります」

余の隣で、永高内親王殿下も気品ある声で実家の困窮を救った余の功績を称え、戦乱の終結を共に喜び、深く頭を垂れられた。

正親町天皇は御簾の奥で涙を流し、深く感銘を受けられた。


「信長、よくぞやってくれた。内親王の降嫁の儀も見事に執り行い、困窮していた朝廷の経済基盤を潤沢な国営扶持で救い、複数の宮家を新設してくれた恩義、朕は生涯忘れぬぞ」


帝の宸翰を通じて放たれる大絶賛の言葉に、余は覇王の面目を保ちつつも、内心では安堵の冷や汗を流していた。


(……いやー、本当に良かった! 西暦1574年というこの歴史的な節目に先回りしたおかげで、ようやくここまで辿り着いたよ。内親王殿下を実家に連れてきて、最高の親孝行ができたわ。これで名実ともに日の本の戦乱は十割終わりだ。光秀や秀吉たちを過労死させることなく、完全な白化を成し遂げられたぞ!)


余が心の中でガッツポーズを決めていると、帝はさらに、朝廷の歴史上あり得ぬほどの破格の恩賞を告げられたのである。


2:正一位の宣下と、伝説的官職への改元


「信長の不滅の功績を称え、人臣最高位たる『正一位』の位階、ならびに国政の最高官職『太政大臣』を宣下する。さらに、律令制の枠すら超え、神話の時代に国を造り固めた神の如き権能を持つ、臨時の最高大権職『葦原中国総大総督あしはらのなかつくにそうだいそうとく』の職を特別に創設し、お主に授ける」


正一位、太政大臣、神話の英雄の名を冠した伝説の最高大権職。これ以上ない絶対的な大義名分が、余の双肩へと授けられた。

そのあまりの栄誉に、余の隣にいた永高内親王殿下も、驚きと深いお喜びの涙で美しい瞳を潤ませておられた。だが、帝の恩賞はそれだけにとどまらなかった。


「さらに、これほどめでたい節目である。戦乱が終わり、日の本が平定されたことを天下に知らしめるため、天正二年の和暦を改め、これより元号を『元平げんぺい』へと改元することを、ここに宣言する!」


西暦1574年、日の本は天正から『元平元年』へと、新たなる時代へ突入した。

これによって織田新政庁は、朝廷と完全に一体化し、神仏をも超える絶対的な権威を手にしたのである。


(太政大臣に正一位、おまけに伝説の総大総督って……これもう、余が何を言っても誰も逆らえないレベルの大義名分じゃん! しかも『元平』への改元まで先回りしてやってくれるなんて、帝、気が利きすぎだよ! これで次話、安土へ毛利や島津、伊達たち降伏した全大名を集めて、今後の『世界大開発方針』をぶち上げるための舞台整いすぎでしょ!)


覇王の仮面の下で、余の脳裏には完璧な勝利の計算が成り立っていた。しかし、この時の余はまだ知らなかった。朝廷の最高権威を手に入れた覇王であっても、逃れられぬ恐るべき「もう一つの戦場」が、安土城で待ち構えていることを。



3:拝命の安土城と、大奥の温かき包囲網


正一位・太政大臣、そして伝説の最高大権職という無敵の肩書きを引っ提げ、傲然たる足取りで安土城へと帰還した余と永高内親王様。だが、覇王の威厳を纏って入った執務室では、懐妊中の正室・帰蝶と内政副総裁の直虎、そして婚姻内定の誾千代が、恐ろしいほどに穏やかな微笑みを浮かべて待ち構えていた。


「お帰りなさいませ、正一位にして総大総督の我が夫殿。内親王殿下を伴っての禁裏への凱旋、誠に天晴れにございました」

帰蝶が、すべてを見透かすような美しい笑顔で、新しく書き直された大奥の職務表を差し出してきた。


「上様が朝廷より最高の権威を賜ったからには、大奥もまた、日の本一無理のない最高級の『国営育児交代制職務(交代制シフト)』を実践せねばなりませぬ。臨月を迎える私と帰蝶様の公務免除はもちろん、夜泣き対応の交代表も、一分の狂いも無く完成しております。永高内親王殿下や侍女たちも、手厚い休暇のなかで共に支え合う算段にございます」

直虎が、領地経営の才をフル活用した完璧な育児交代表を誇らしげに掲げる。永高内親王殿下も「大奥の過酷な徹夜や雑務がすべて禁止される、この温かき環境、私も大感動しております」と微笑まれる。


「将来、大奥に加わる側室衆が何人増えようとも、この交代制の絆があれば十割、無理なく健やかに育児できます。……そういえば上様、武蔵の成田家に、まだ数え年で二歳ほどの『甲斐姫』という大変聡明な幼子が生まれたと国家情報省より報告がありましたが……まさか、将来の側室にと狙っておいでではありませぬな?」

誾千代が、算盤をパチリと鳴らしながら、バチバチとした視線で余をロックオンした。


(いやいやいや! なんでその情報がもう大奥に漏れてるの!? 伊賀の忍び、余の秘められた好みの系統まで奥方たちに横流ししてない!? あと、甲斐姫ちゃんはまだ赤ちゃん(二歳)だから! 側室にするにしてもあと十五年は早いからね!?)


朝廷を完全に掌握したはずの覇王は、奥方たちの完璧な家庭内包囲網を前に、再び嬉しさと緊張の冷や汗を流し、胃壁を跡形もなく解体されるのだった。


(第34.5話:幕間・三人の最高権力者と世界均衡の胎動へ続く)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ