第33話:北奥羽の完全国営化と、日の本統一の総仕上げ
1:三陸の巨頭と、津軽・南部の骨肉を溶かすハメ手
奥羽の南部から日本海側を戦わずして手中に収めた新政庁の『奥州開拓総局』。
その長官たる伊達政宗は、息つく暇もなく陸奥国の北端、ならびに三陸海岸の制圧へと舵を切っていた。
残る標的は、南部晴政、そこからの独立を狙って牙を研ぐ津軽為信、別格の名門である葛西晴信の三頭である。
政宗が仕掛けた次なる人道ハメ手は、彼らの骨肉の争いと、三陸の豊かな海路を新政庁の『国営織田水軍』の威圧によって完全に封鎖するという、逃げ場のない経済包鎖であった。
物資が途絶え、完全に孤立した津軽と南部の陣営に乗り込んだ政宗は、信長から下された二通の予算書を同時に突きつけた。
「南部殿も津軽殿も、不毛な身内争いはそこまでにされよ。これより北奥羽はすべて新政庁の直轄地となる。だが、無血開城すれば、南部殿には『陸奥開拓局長』としての莫大な固定扶持を、津軽殿には独立の野心を近代の富で満たす『北海防衛旅団長』の地位と手厚い固定給を、それぞれ金一文の狂いも無く全額保証いたす! 葛西殿の三陸の港湾網も、破格の固定給で強制雇用して新政庁の国営造船局へ合流してもらいます」
血を流すだけの戦に疲弊し、同時に提示された新政庁の無理のない労働環境の条件を前に、南部晴政、津軽為信、葛西晴信の誰もが、驚愕と涙のうちに無血開城を選んだ。
これにより、蝦夷地の目と鼻の先である陸奥北端までが完全に国営化され、日の本全土の完全平定(日本統一の総仕上げ)が一兵も損なうことなく、完璧に完了したのである。
2:安土へ集う西国の雄と、国営水軍の一本化
東北地方の完全な国営化という歴史的大偉業を受け、安土城の大広間には、毛利輝元、小早川隆景、長宗我部元親、島津義久といった、かつて一国一城の主として天下を争った西国・四国・九州の元大名たちが一斉に召集されていた。
彼らはすでに、新政庁の『中国開発総局長』や『西海防衛旅団長』といった近代官僚として強制雇用されている。信長は、彼らの前に傲然と座し、朝廷より賜った古の最高軍事・警察大権『惣追捕使』の御旗を掲げた。
「出迎え苦労であった。奥州の津軽、南部、葛西までが新政庁の軍門に降り、日の本全土の国営化は今、すべて完了した。これより貴様らには、私的な武力を完全に解体してもらう。その代わり、毛利や島津、迅速に恭順した安東や葛西らが誇る優れた水軍力と航海術は、国家の絶対防衛圏を守る『国営織田水軍』へと完全に一本化し、手厚い固定給で遇してやるわ」
信長が広げた大航海図には、蝦夷地(北海道)や樺太、千島列島のみならず、遥か南方の琉球(沖縄)から台湾、海南島に至る、広大な「海の防衛網」が敷かれていた。
元大名たちは、そのあまりに巨大な地政学チートの規模に圧倒され、平伏するしかなかった。
「……いやいや、みんな目が点になってるけど! 東北の葛西や安東の船を北海へ、島津や毛利の船を南方へ配置して、琉球から台湾までの防衛拠点を先回りして国営化しなきゃ、南蛮の侵略に詰んじゃうんだよ! 大陸や朝鮮半島には絶対に手出ししない代わりに、海の流通網だけはすべて掌握させてもらうからね!」
覇王の仮面の下で、信長は冷や汗を流しながらも、元名門たちの近代官僚化の手応えを確かに感じていた。
3:大奥の育児交代制と、覇王の限界胃壁
日本統一の総仕上げが完璧に終わる中、安土城の執務室では、世界大開発への布石と並行して、もう一つの環境改革が急ピッチで進められていた。
正室の帰蝶、内政副総裁の井伊直虎の二人に待望の懐妊の兆候が見られたため、信長が未来の知識から急遽制定した、世界一無理のない『国営育児交代制職務(交代制シフト)』の御触れである。
大奥の最深部にて、信長は新しく大奥へ加わった立花誾千代や侍女たちを集め、傲然たる覇王の声音で宣言した。
「良いか、帰蝶や直虎が臨月を迎えた暁には、公務をすべて免除する『産前産後休暇』と『育児休業』を命じる。さらに、子育ての過酷な夜泣きや雑務を母親だけに押し付けることは、この新政庁においては重罪である! 大奥の侍女たちを『国営保育師』として交代制で配置し、給与を全額保証のまま、大奥一丸となって交代で育児を支える環境を構築せよ!」
信長が提示した、21世紀をも先駆ける完璧な交代制の育児職務表と手厚い福祉の条件に、誾千代は目を輝かせ、侍女たちは「なんという深いお慈悲、世界一無理のない、温かき大奥にございます!」と涙を流して大感動した。
(……いや、みんな泣いて喜んでくれて嬉しいけどね! 日本全土を国営化して、次は南蛮の宣教師コエリョの救援要請をハメ殺すためにイギリス(大英帝国)との秘密同盟や鉄甲蒸気船の建造を進めなきゃいけない大一番なのに! 家に帰ったら帰ったで、この超ハイレベルな奥方たちの育児交代制の采配で、余の頭脳と胃壁が完全に限界領域なんだけど!?)
世界無双の海洋帝国への大開発という壮大な国策が動き出す傍ら、覇王の家庭内における「無理のない育児革命」という、極めて暖かくも怒涛の新展開に、信長は嬉しさと緊張の冷や汗を流しながら、次なる世界のハメ手へと想いを馳せるのであった。
(第34話:禁裏への凱旋と、日の本統一の宣下へ続く)




