第32話:奥州開拓総局の初陣と、羽州の無血開城
1:奥州総奉行の初陣と、会津・蘆名の無血開城
新政庁への恭順を誓ったばかりの伊達政宗は、冷や汗を流しながらも、己に課された最初の公務(仕事)に奔走していた。その懐にあるのは、信長より直々に下された『奥州開拓総局長』の任命書と、新政庁が保証する破格の「国営固定扶持(定額給与)」の予算書である。
政宗の最初の役目は、まだ織田の支配が及んでいない奥羽の頑迷な諸大名たちを「戦う前に完璧にハメ殺す」ことであった。
政宗が最初に狙いを定めたのは、伊達領の南に位置し、会津の要衝を握る名門・蘆名盛隆であった。新政庁の国家情報省(伊賀の忍び)によって周囲の街道や物資の流通網を百パーセント遮断され、完全に干上がっていた蘆名の城に乗り込んだ政宗は、信長が作成した予算書を突きつけた。
「蘆名殿、いい加減に往生際を決められよ。上様と戦えば一瞬で家名ごと圧殺されますが、新政庁に恭順して『会津開発局長』に就職すれば、毎月この額の黄金が金一文の狂いも無く口座へ自動で振り込まれるのです。独自の武力などという金食い虫は解体し、新政庁の官僚として手厚い固定給を貪る方が、どれほど御家が安泰か分からぬはずがなかろう!」
提示された桁違いの国営扶持の額面と、無理のない労働環境(完全白化)の条件を前に、蘆名盛隆は涙を流して無血開城を選んだ。
これにより、奥羽の玄関口である会津が戦わずして国営化され、織田の圧倒的な「人道ハメ手」が、いよいよ奥州の奥深くへと侵入を始めるのだった。
2:出羽の巨頭たちと、日本海開拓のハメ手
会津の平定に続き、政宗の交渉の手は出羽国へと伸びる。標的は、政宗の伯父にあたる最上義光、そして日本海交易を牛耳る海の覇者・安東愛季の二人であった。
新政庁はすでに、安東家が誇る能代や土崎の港湾網を『織田日本海封鎖』によって完璧に掌握し、彼らの経済基盤を戦う前に完全に詰ませていた。政宗は親族である最上を説得しつつ、行き詰まった安東の元へも新政庁の予算書を提示した。
「最上の伯父御も、海の安東殿も同じにございます。上様は貴殿らの才を高く評価しておいでだ。安東殿の優れた航海術と日本海交易の力は、将来のシベリアや樺太、千島列島の大開発を見据えた『北海開発総局』の長官として、手厚い固定給で存分に振るってくだされ」
最上義光は伊達との連携も含めて新政庁の軍門に降り、安東愛季もまた、己の航海術が未来の国家大開発(北海開拓)に不可欠であると絶賛されたことに深く感動し、快く新政庁の近代官僚への就職を受け入れた。
こうして、奥羽の南部から日本海側にかけての広大な領地が、一兵も損なうことなく瞬く間に国営化されていく。安土城の天守にてその報告を受け取った信長は、傲然と微笑みながらも、あまりの順調さに内心で冷や汗を流していた。
(……よしよし、最上も安東も完璧にハメ殺して強制雇用できたぞ! 安東の航海能力があれば、将来のシベリアや千島の大開発への足掛かりは万全だ。だが、奥州の平定を完全に総仕上げするには、まだ北部の南部や津軽、それに三陸の葛西が残っている。焦らず二段階に分けて、一分の狂いもなく白化してやるわ!)
覇王の仮面の下で、信長は次なる北奥羽の完全国営化へ向けて、さらなる計略の手綱を締め直すのだった。
3:南蛮の不穏な影と、漆黒の鉄甲船
奥羽の前半戦が完璧に終わる中、安土城の国家情報省(伊賀の忍び)の頭領より、極秘の密告がもたらされた。南蛮の宣教師コエリョが、裏で本国へ巨大船団の救援要請を出したという、日の本武力侵略の動きを完全に察知したのである。
安土の物見櫓にて、この報告を受けた信長は、傲然と微笑みながらも、その胃壁を激しく軋ませていた。
(……コエリョの奴、ついに動きやがったか! だが、21世紀の歴史知識を持つ余の目が誤魔化せるはずもない。狂信的な侵略の野心は完璧にハメ殺しますが、キリスト教の純粋な信仰そのものは弾圧せず、共生の道を模索する。これが宗教の暴走を止める、余の完全白化の思想だ!)
信長は即座に、異国の過激な進出を牽制するため、海の向こうの「大英帝国」との秘密同盟を結ぶ極秘使節団の編成を命じた。同時に、木下藤吉郎や国営造船局の職人たちへ、石炭の炎で動く漆黒の「鉄甲蒸気船」の超先行建造を発令する。
そんな覇王の執務室へ、正室の帰蝶と内政副総裁の井伊直虎が、何やら神妙な面持ちで入ってきた。その顔は、いつもの「女の陣」の火花ではなく、どこか慈愛に満ちた、しかし僅かに高揚したものだった。
「上様……奥州の平定も万全に向かっております。……なれば、そろそろ織田の血筋を百代先まで繋ぐ、大奥の『産前産後休暇』と『国営育児休業』の制度を、我ら自身の手で試してみる時期ではございませぬか?」
帰蝶が、自身の腹部にそっと手を当てながら、すべてを蕩かすような微笑みを浮かべた。直虎もまた、頬を赤らめながら深く頷いている。どうやら、待望の懐妊の兆候があるらしい。
(えっ!? 帰蝶も直虎も、もしかして……!? いや、めちゃくちゃ嬉しいけど! 余が定めた『給与百パーセント保証の国営育児交代制シフト』を、まさか我が奥方たちで最初に実践することになるとは! 日本統一の総仕上げの前に、余の育児の完全白化(ホワイト化)と、嬉しさと緊張による胃壁の完全崩壊が先に来ちゃったよ!)
世界無双の海洋帝国への大開発が動き出す傍ら、覇王の家庭内における「無理のない育児革命」という、極めて暖かくも怒涛の新展開が、安土城にて幕を開けるのであった。
(第33話:北奥羽の完全国営化と、日の本統一の総仕上げへ続く)




