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第25話:能登・越中の算盤、奥州への陸路を開け

1:日本海を覆う鉄の防壁と、崩れ去る三国志


「――加賀の一向一揆の残党が、一文字も戦わずに織田の固定給に溶けた、だと……!」


西暦一五七〇年代半ば、天正の初頭。能登国、および越中。

加賀のすぐ北に位置する両国の国人衆や独自の海運網を持つ勢力は、安土の新政庁から送り届けられた一通の公文書を前に、激しい驚愕に身を震わせていた。


北陸の喉元である加賀を最初に国営化し、古い特権を秒速で合法的に解体した新政庁のハメ手。それは、能登や越中の不穏分子をも戦う前に百パーセント絶望させる、最高総参謀局(二兵衛)の冷徹極まりない国家の計算であった。


彼らが「闇の流通網(抜け荷の裏路)」としてしがみついていた日本海の海路は、三好水軍と九鬼水軍が放つ、無数の櫂と薄い鉄板を貼り付けた新型鉄甲船によって完璧に封鎖されていた。代わりに領内を襲ったのは、寸分の狂いもない正確さで物の流れを止められたことによる大物価高騰インフレであった。


「報告いたします! 越後の上杉謙信公が『北の不滅の壁(守護大将)』として織田家と涙の同盟を結んでいるため、我らにはどこからも救援は来ませぬ! 戦う前に、塩も兵糧も完全に詰んでおります!」


四方を織田の近代システムに囲まれた能登・越中の国人衆の手には、明智光秀を通じて届けられた、手厚くも冷酷な最終通告書が握られていた。



2:北陸港湾開発局の設置と、奥州への大路


「惣追捕使様の掟に従う者は近代官僚として活かし、古い関税に固執する者は合法的かつ一瞬で処分する。二肢に一つだ」


能登の陣所。最終宣告を突きつけた明智光秀の横には、国営文化振振院・副総裁として安土へ就職した朝倉義景が、公家衆の格式を湛えた姿で控えていた。


「皆々方、信長様は我らの統治の才を日の本の近代化に転用ビルドせんと仰せだ。敦賀や三国湊、精度高い能登の港湾をすべて統合する『北陸港湾開発局』の役職と、高額な固定給が約束されておる。戦の恐怖もなく、民には国営寺子屋や産院の福祉が与えられるのだ。これほど過労なき無理のない職場がどこにあろうか」


義景の涙ながらの説得と、抗えば秒速で滅ぼされる冷酷な現実を前に、能登・越中の国人衆はついに算盤を叩いて降伏の起請文に血判を押した。古い古い地方の武力を完全にスクラップ(解体)し、国家の基礎たる海運インフラへと百パーセント組み入れる。


これにより、越前・加賀・能登・越中を経て、上杉謙信の待つ越後へと至る「北陸の陸路・海路」は、寸分の狂いもない完璧な形で一本の国営物流へと繋がった。将来のロシアや清の南下を防ぐ防波堤への補給路が万全に整うと同時に、新政庁の刃はいよいよ、箱根の先――奥州の伊達家をハメ殺すための大航海図へと向けられるのだった。



3:安土の天より見下ろす冷や汗の覇王


その頃、安土の新政庁。

物見櫓から初夏の風を受ける余の胃壁は、限界を超えた大物価高騰を起こしていた。


(……いやいやいや! 光秀に『上杉への通り道を少し綺麗にしておけ』って言っただけなのに! なんで二兵衛は日本海を百パーセント封鎖して、能登も越中も丸ごと国家公務員にしてハメ殺してんの!? 朝倉義景の奴まで特級リクルーター(人材勧誘官)としてフル稼働して、北陸全域が秒速で無血開城しちゃったじゃねえか! 容赦なさすぎて内心ガチで動揺と冷や汗が止まらんわ!)


覇王の仮面をガチガチに固定しながら、余の内心はパニック状態に陥っていた。


古い権益を秒速で解体し、適材適所で近代官僚へと就職させる――周囲からはそんな冷徹無比な絶対強者に見えているだろうが、余の心臓はもう限界だ。さらに正室の帰蝶、臨席する副総裁の井伊直虎、そして立花誾千代が並んで現れる。


「上様、北陸の全域の掌握、実に見事な大開発にございます。これでまた日本海の美しい名産や美女たちが国営官僚として安土へ大量に就職してまいりますね。……帝から永高内親王さまの降嫁の儀を間近に控えながら、今度は奥州の伊達家にまで『下心』があってのことではございませぬよね?」


帰蝶の、全てを見透かすような絶対零度の視線が余を射抜く。誾千代は「惣追捕使様! この誾千代、いつでも奥州への視察に供奉する所存!」と男勝りに算盤を叩き、直虎は「流石は上様、神仏のごとき先見の明……!」と目を輝かせている。


「ふん、北陸の海運を北の防衛線に転用する。すべては余の計算の内よ……」


余は震える手で茶を飲み、威厳たっぷりに言い放った。北陸の足固めは完璧に整ったが、余の胃の寿命だけは、到底持続可能とは思えぬ領域へ達しつつあった。


(第26話:内親王の輿入れ、安土の「女の陣」――最強の恩恵(福利厚生)で奥御殿を無理のない環境(完全ホワイト化)にせよ!へ続く)

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