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第18話:九州の「闇の十字架」、安土の「国家統制」と衝突す

1:豊後の新政庁、そして異国の黒い影


「――織田惣追捕使の勢力、ついに山陰山陽までを完全に掌握したか」


豊後国。南蛮貿易で栄える大友領の港町を見下ろす高台にて、バテレン(南蛮宣教師)の首魁たるガスパル・コエリョは、黒い修道衣を風に揺らしながら冷酷な笑みを浮かべていた。


彼らが日の本で進めていたのは、主の教えを広めるという免罪符の裏に隠された、寸分の狂いもない世界侵略の大航海図であった。キリシタン大名たちを「闇の流通網(抜け荷の裏路)」で手懐け、硝石や鉄砲と引き換えに、日の本の哀れな領民たちを奴隷として海外へ売り飛ばす不純な交易。それは、これまで数々の戦国大名が黙認、あるいは加担してきた肥沃な利権であった。


しかし、安土の新政庁が放つ近代化の波は、その闇を根底から解体にかかっていた。


「コエリョ様、織田東インド商会が豊前・豊後の海にまで商船を回し、我らの独自の交易網を国営物流で上書きしようとしております。さらに織田海軍省の新型鉄甲船が、筑前や肥前の沖合にまで姿を現したとのこと……。このままでは、我らの奴隷貿易という最大の財源が完璧に塞がれてしまいます」


緊迫した報告に、コエリョは十字架を強く握りしめた。信長が敷く「国営宗教法人化」と政教分離の制度は、キリストの権威を盾にした侵略を根絶やしにする最悪の天敵。南蛮の黒い野望は、ついにその牙を剥き始めた。



2:肥前の焦燥と、惣追捕使の鉄槌


「バテレンどもめ、我らを織田の『国家情報省』と戦わせるつもりか」


肥前国。キリシタン大名である大村純忠や有馬晴信らは、南蛮宣教師たちから「織田の邪教を退けるため、神の軍勢として立て」と激しく煽られ、激しい悪寒に震えていた。


すでに安土の二兵衛が放った伊賀の「国家情報省」の忍びたちが九州全土の闇ルートを暴き、南蛮が日の本の民を海外へ売ろうとしていた証拠を完璧に押さえている。信長様の天下布武は、日本の防衛と国家利益の最高効率を求めた冷徹な計算で動いている。国益を害し、異国へ民を売り飛ばす足枷となる大名は、どれほど強力な軍勢を持っていようと容赦なく排除(処分)されるのだ。


「報告いたします! 織田海軍省の次官・小早川隆景殿率いる、無数の櫂と薄い鉄板を貼り付けた新型鉄甲船が、長崎の港を100%封鎖いたしました! 戦う前に、我らの硝石も兵糧も完璧に断たれております!」


「大物価高騰」が肥前の地を襲う中、大名たちに届けられたのは、安土からの非情なる最終通告書であった。


従えば、南蛮の魔手から民を救う『九州開発総局』の近代官僚として高額な固定給で強制雇用する。しかし、もし宣教師どもの誘いに乗って国営化を拒むならば――大義名分のもとに一族諸共秒速で解体し、合法的かつ完璧にこの世から処分する。大名たちは、信長様の神仏の如き先見の明と冷酷さに涙を流し、南蛮の十字架を捨てて降伏の起請文に血判を押すのだった。



3:安土の天より見下ろす冷や汗の覇王


その頃、安土の新政庁。物見櫓から初夏の風を受ける余の胃壁は、限界を超えた大物価高騰を起こしていた。


(……いやいやいや! 九州の南蛮貿易を調査して『奴隷貿易の証拠があったら少し脅して、こっちの国営宗教法人に組み込め』って言っただけなのに! なんで二兵衛は小早川海軍を動かして長崎を100%封鎖して、宣教師ごと一網打尽のハメ殺し体制を築いてるの!? 容赦なさすぎて内心ガチで動揺と冷や汗が止まらんわ!)


覇王の仮面をガチガチに固定しながら、余の内心はパニックに陥っていた。


国家の防衛のためなら宣教師だろうが大名だろうが一瞬で処分する――周囲からはそんな冷徹無比な絶対強者に見えているだろうが、余の心臓はもう限界だ。さらに正室の帰蝶からは「南蛮の薬や珍しい絹を口実にして、今度は九州や異国の美しい姫君を安土へスカウトされるおつもりですか?」と、寸分の狂いもない冷ややかな視線が突き刺さる。


「ふん、南蛮の闇を解体し、九州の流通を国営化する。すべては完璧な計算の内よ……」

余は震える手で茶を飲み、威厳たっぷりに言い放った。九州の掌握と対南蛮の防壁構築は万全となったが、余の胃の寿命だけは、到底持続可能とは思えぬ領域へ達しつつあった。


(第19話:西海の鉄甲船、安土の「絶対大義」を布告すへ続く)

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