表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/25

第13話:「最高総参謀局の暗闘と、毛利経済封鎖の策」

1. 織田一族の近代教育と、覇王の親バカ


安土の新政庁では、いよいよ機能美を極めた近代的オフィス街の如き官庁街がその姿を現しつつあった。

その一角、最高総参謀局の会議室には、信長の傍らにまだ十代前半の少年――嫡男の織田信忠が端座していた。


信長は、武力による天下取りではなく、半兵衛や官兵衛の真横で「織田政府・次期最高執行責任者」としての近代的民政と法制、 そして経済戦の英才教育を信忠に施していた。さらに、まだ幼い次男の信雄や三男の信孝には、木下藤吉郎の織田東インド商会や九鬼嘉隆の海軍省へ送り込み、算盤と操船の、これまた実務の英才教育を強制していた。


「信忠よ。毛利が如何に強大であれ、我らは大砲を撃ち込むのではない。法と銭、そして物流の網をもって、戦う前に彼らの息の根を止める。これからの天下を統べる者が学ぶべきは、剣技ではなくこの『数理』よ」


信長は冷徹な声音で愛息に説いたが、内心の冷や汗は尋常ではなかった。


(信忠、我が最愛の息子よ! 史実では余と一緒に本能寺で死なせてしまって本当に申し訳なかった! 今世では絶対に安全な安土の近代的政庁の中から一歩も出さずに、最高の21世紀型エリート官僚として育て上げてやるからな! 特に信雄! お前を史実通りに伊勢に放流したら、また勝手に伊賀に攻め込んでゲリラ戦の餌食になり、余の胃に大穴を空けるに決まってるだろ! お前らは大人しく商会や海軍ドックで算盤と操船の勉強をしてろ! お前らが戦場に行く必要は一寸(寸分)もないんだよ!)


「はっ、父上。毛利の山陰山陽十カ国が如何に巨大であれ、海と陸を完全に遮断されれば、自ずと国が内側から自壊じかいすること、寸分の狂いもなく理解してございます」

信忠は利発な瞳を輝かせて答え、その成長に信長は内心で(可愛い、ガチで天才だわ我が息子!)と目尻を下げていた。



2. 中国十カ国経済封鎖と、毛利家の焦燥


宣言通り、四国を長宗我部元親ごと無血平定し、阿波・讃岐の三好海軍、伊勢湾・播磨ドックの九鬼水軍を完全に一本に繋いだ織田政府は、ついに中国地方の雄・毛利家への「西国経済封鎖」を本格的に断行した。


北の日本海(若狭・越前・敦賀)、東の播磨巨大船室、南の四国と淡路島。

すべての制海権を握る織田の国営海軍が、毛利の領国である山陰山陽十カ国への「硝石・米・塩」の海上流通網を完全に遮断したのである。

さらに、陸路は山陰・山陽ともに週休二日制のプロ常備軍の旅団長となった信長の弟・織田信包らがガッチリと国境の関所を抑え、犬一匹通さぬ包囲網を敷いた。


安芸国、吉田郡山城。毛利の家督を継いだ毛利輝元、そして智将・小早川隆景は、もはや戦う前から顔面を蒼白にしていた。


「……硝石の買い付けが、全て堺と播磨で止められておるだと!?」

吉川元春が卓を叩いて憤る。

「それだけではございませぬ」

小早川隆景が、苦渋に満ちた表情で和紙の手控えを差し出した。

「領内に『石見銀山』という日の本屈指の銀の産出地がありながら、それを外洋の交易網へ流す海路を完全に塞がれました。銀はあれど、硝石も米も、生活に必要な塩すら買い付けられぬ。領内は物価高騰インフレが極限に達し、国衆たちの反満が爆発寸前にございます。逆らおうにも、惣追捕使・織田信長は朝廷と血肉を一つにする至高の婚姻を内定させており、今や毛利が動けば、完全なる『朝敵』として一族解体を免れませぬ……!」


海の向こうを見れば、九鬼嘉隆が率いる南蛮型の、黒き鉄甲蒸気船が煙を吐いて瀬戸内海を巡回している。

武力で戦う前に、毛利家は経済的にも政治的にも完全に「窒息」させられていたのである。



3. 二兵衛の調略と、周辺諸勢力のハメ手


安土の新政庁にて、竹中半兵衛と黒田官兵衛は、毛利家および周辺の諸勢力が内側から自壊していく報告を前に、最後の仕上げの策を信長に上奏していた。


「上総介様。毛利を無血開城させるにあたり、山陰山陽の不穏因子も同時にスクラップ&ビルドすべきにございます」

官兵衛が不敵に微笑み、因縁深い諸勢力の処遇案を広げた。

「まず、備前の謀略家・宇喜多直家。奴の持つ暗殺や裏切りの毒は、国内ではなく『国家情報省(対外諜報部・西国支局長)』として強制雇用し、海外の南蛮の陰謀を暴く刃といたします。また、毛利への復讐に狂う出雲の尼子勝久や山中鹿介らは、その執念を『石見銀山の最高監察官(鉱山守護旅団)』の固定給で買い上げ、毛利の真横で相互に監視(牽制)させます。名門の山名氏らは武力を解体する代わりに、高い終身恩賞(年金)付きで安土へ『式部省名誉顧問』として円満に移封いたします」


半兵衛が静かに頷き、毛利当主への提案書を重ねる。

「これにて周辺の外堀は完璧。輝元殿には、武力を放棄する代わりに、広大な旧領を『織田政府・中国開発総局』とし、その初代長官のポストを提示すれば、彼らは涙を流して恭順いたしましょう」


「よかろう。二兵衛、ただちにその条件で中国十カ国を無血開城させよ。余は一滴の血も流す気はない」


信長は冷然と命じたが、内心ではまたしても神仏に祈る思いであった。


(危ねええ! 毛利って山陰山陽を丸ごと飲み込んだ『中国十カ国百二十万石』の超巨大モンスターじゃん! しかも石見銀山まで持ってるし、宇喜多直家みたいな暗殺チートや、山中鹿介みたいな執念ゲリラまで燻ってるんだぞ! ガチの武力激突なんかしたら織田政府の国家予算が戦費で一瞬で吹き飛ぶわ! 港をすべて塞いで銀をただの石ころに変え、全員に『国家公務員』の枠を提示して飼い慣らすのが一番安全なんだよ! 頼むから二兵衛、早くあの曲者たちを一網打尽に就職させてくれ!)


覇王の仮面の裏で、胃の痛みに冷や汗を流しながら平穏を願う信長。しかし、中国地方の巨大な毛利家と諸勢力までもが無血で織田政府に飲み込まれようとするその胎動は、さらに西の果て、九州の島津、そして海の向こうで日の本の民を狙う、南蛮諸国の大いなる牙をいよいよ激しく揺り動かそうとしていた――。


(地の文:織田一族を近代組織へ配置し、毛利への西国経済封鎖は万全なものとなった。だが、海を奪われ退路を断たれた毛利の焦りは、天下に次なる無血平定の嵐を呼び寄せ、そして世界大戦への大いなる幕を開けようとしていた――)


(第14話:「中国十カ国無血開城と、国家公務員『毛利輝元』」続く)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ