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第12話:「至高の婚姻と、西国五カ年計画の胎動」

1. 皇族の降嫁と、覇王の冷や汗


湖を臨む南近江の安土。

六角氏の無血降伏によって織田政府の直轄地となったこの地では、天守閣を持たぬ機能美に溢れた巨大物見櫓と、近代的官庁街「安土新政庁」の建設が急ピッチで進んでいた。

その一室へ、五摂家の長であり、今は織田政府と朝廷の架け橋となっている関白・近衛前久が秘密裏に来訪した。


前久は、信長が古の大権職『惣追捕使そうついぶし』として、天下最大の宗教勢力・本願寺を一滴の血も流さずに「国営化」した手腕に深く震えながら、居住まいを正して切り出した。


「惣追捕使殿。此度の本願寺の無血解体、朝廷も大いに安堵されておる。

つきましては、朝廷を戦火から永劫に守護する織田政府との絆を不動のものとすべく、帝より『皇族(皇女)の降嫁』を打診せよとの、極秘の御意が下された。これをお受けくだされ」


「……畏れ多き極み。朝廷と織田政府はこれより一蓮托生。皇族の姫君、万全の国国賓待遇をもってお迎えいたそう」


信長は冷徹な覇王の笑みを浮かべて承諾したが、内心の冷や汗は文字通り滝のようであった。


(いやいやいや! 相手は神仏の末裔の皇女殿下だぞ!? 現代人の感覚からしたら緊張で白目剥いて卒倒するレベルの超絶逆玉の輿だよ! 変に不敬な態度を取ったら一瞬で日の本中を敵に回すからな。絶対に失礼のないように、新政庁に最高級の迎賓館を建てて一寸の狂いもないおもてなしをしなきゃ……! あと、少子化対策総裁として横に座っている帰蝶の視線がガチで痛い! 下心じゃないってば!!)


信長が胃を押さえて悶絶する中、帰蝶総裁と井伊直虎副総裁は、この至高の婚姻を「国を挙げて命を育む」という人口爆発プロジェクトの最高の精神的シンボル(広告塔)として組み込むことを即座に決定した。これによって、織田政府の先進的な内政は、朝廷と血肉を一つにした国体そのものへと昇格したのである。



2. 四国の秒速平定と、分国法チートの強制雇用


大義名分を極限まで高めた信長は、間髪入れずに最高総参謀局の竹中半兵衛、黒田官兵衛、そして海軍大臣・三好長慶を招集し、次なる西国戦略――「四国五カ年計画」を下命した。


当時、四国では土佐の長宗我部元親が、伊予へ兵を進めて四国全土の武力統一を目論んでいた。しかし、四国の東半分(阿波・讃岐・淡路)は、無血臣従した三好長慶の強固な領地であり、今は織田政府の「海軍省管轄の直轄領」である。元親がこれ以上北上すれば、自動的に「朝敵」となる絶対的な罠が最初から完成していた。


信長は、播磨ドックと阿波・讃岐に展開する三好海軍・九鬼水軍を動かし、長宗我部の唯一の生命線である土佐湾と伊予の海を完璧に海上封鎖(経済制裁)した。その上で、半兵衛と官兵衛を通じ、元親へ惣追捕使の法を突きつけた。


「元親よ、海の流通はすべて織田が握っており、貴殿らは戦う前に干上がる。私闘を捨て、織田政府の『四国開拓長官(並びに国営法制審議顧問)』として生涯不変の定給を食むか、今ここで滅びるか選べ」


元親は、その常識を超えた経済包囲網の前に、戦う大義名分も勝てる見込みも完全に消滅したことを悟った。何より、自身の分国法を定めるほどの高い法制・内政の能力を「国の最高顧問」として高給優遇するという条件は、破格の救済であった。

長宗我部元親は一発の矢も放つことなく、涙を流して無血恭順。四国全域は一瞬にして織田政府の管轄へとスクラップ&ビルドされたのである。


(よしきた! 長宗我部元親ゲット! 史実の優秀な法律チート能力を、織田政府の近代的法典づくりと四国の大開発に回して、週休二日で死ぬ気でホワイト労働してもらうぞ! これで四国も一滴の血も流さずに平定完了だ!)



3. 西国五カ年計画の胎動と、毛利への王手


四国が織田政府の手に落ちた瞬間、新政庁の作戦室に集まった半兵衛と官兵衛は、机の上の地図を見て同時に息を呑んだ。


北の日本海(若狭・越前・敦賀)、東の播磨巨大造船ドック、そして南の四国と淡路島。これらすべての海域と港湾が、一瞬にして織田政府の直轄領として完全に繋がったのである。それはすなわち、中国地方の雄・毛利家が、瀬戸内海と日本海のすべての制海権・交易ルートを遮断されたことを意味していた。


播磨、淡路、阿波、讃岐、そして若狭・越前。

地図の上に織田政府の直轄領(海軍省)の拠点が打たれた瞬間、官兵衛は主君が描いた「罠の全貌」を察知し、総毛立った。

「……播磨、越前、そして四国。この拠点を結べば、毛利の山陰山陽十カ国の海路が、一寸の隙もなく完全に塞がれる。上総介様、これより、一兵も動かさずにあの百二十万石を窒息させるおつもりですか……!」

官兵衛が戦慄すれば、半兵衛もまた「上総介様は、皇族の婚姻による大義名分と、四国の平定をすべて連動させておられたのですな」と神仏を見るかのような眼差しを信長に向けた。


信長は冷然と大海原の先を見据え、二兵衛と海軍大臣・三好長慶に告げた。


「西国五カ年計画の始まりよ。毛利が瀬戸内の海を汚すならば、これより朝廷と血肉を一つにする我が織田政府が、直轄の国営海軍をもって、これを戦う前に窒息(自壊)させる。長慶、二兵衛、これより毛利への完全なる銭と物資による戦(経済封鎖)を仕掛けよ!」


「ははっ! 惣追捕使の法の元に!」

名将たちが一斉に平伏する。これより、西国の巨大な領国を内側から窒息させる、織田政府の規格外の経済戦が産声を上げるのである――。


(第13話:「最高総参謀局の暗闘と、毛利経済封鎖の策」へ続く)

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