第10話:「惣追捕使の謀略と、軍神がひれ伏す朝廷の宸翰」
1. 越前・若狭の秒速解体と、古の大権職
京の都、洛中。足利幕府を完全スルーした信長に対し、朝廷は困窮を救われた大恩から、古の律令制における臨時の最高軍事・警察職を下した。
「日の本の静謐を乱す野良の武力を捜索、逮捕、解体する大権――『惣追捕使』である」
この朝廷公認の絶対的な大義名分(法の力)を背に、信長はまず、北近江の義弟・浅井長政を琵琶湖物流の極大の通行税利権(関銭山分け)で完璧に抱え込んだ。そして、近江の真北に位置する若狭国、および越前国の朝倉義景に対し、戦う前に非情なる経済封鎖(経済制裁)を仕掛けた。
日本海側からの物資流入を完全に遮断され、干上がる寸前となった朝倉家に対し、信長は週休二日制のプロ常備軍三万を動かして国境を完全包囲。「朝敵として滅びるか、隠居して安土で今川氏真と共に『国営文化振興院・副総裁』として優雅に暮らすか」を突きつけた。
覇気のない朝倉義景は戦う前に心を折られ、涙を流して無血開城。若狭・越前は一瞬にして織田政府の直轄領(日本海貿易の巨大拠点・敦賀など)へとスクラップ&ビルドされたのである。
本陣の広間で、信長は胃を押さえながら激しい冷や汗を流していた。
(あぶねえええ!! 史実みたいに朝倉と浅井に挟み撃ちにされて『金ヶ崎の退き口』をやられたら、余の命がいくつあっても足りんわ! 先に長政を利権でハメて、朝倉を孤立させて秒速で隠居(就職)させるのが一番安全なんだよ! これで越前までの安全な陸路が確保できた。光秀、さあ越後へ飛べ!)
2. 春日山城の軍神、朝廷の宸翰に慟哭す
若狭・越前が織田政府の直轄領となったことで、北への道は完全に拓かれた。
明智光秀は、正親町天皇より下された極秘の宸翰――すなわち、天皇の直筆の手紙を携え、堂々と越後国・春日山城へと入った。
白頭巾を纏い、威厳に満ちた姿で座す上杉謙信の前に、光秀は端座し、恭しく桐箱を差し出した。
謙信は当初、織田が法と銭で近国を強引に解体し、今川や朝倉を国営文化の幹部として安土へ軟禁し、武田や北条までを南蛮貿易の利権で飼い殺しにしようとしている報を耳にし、不信感を抱いていた。
「織田政府の最高執行者、惣追捕使・織田信長。私欲のために天下の秩序を乱す天魔かと思うたが……」
しかし、桐箱から取り出した宸翰を一読した瞬間、軍神の身体が激しく震えた。
そこには、天皇の直筆でこう記されていた。
『惣追捕使・織田信長は、己の私欲ではなく、万国の脅威から日の本の全ての民を守るために戦っておる。上杉謙信よ、そなたの無双の武、私闘のためではなく、日の本を、そして朝廷を異国の不条理から守る『天下静謐の守護大将』として振るうてはくれぬか』
「……朝廷は、この某をそこまで信じてくださるか…………!」
謙信の目から、大粒の涙が溢れ落ちた。謙信は「利」では一歩も動かないが、朝廷の権威と「義」のためなら命を投げ出す男である。信長が、私欲ではなく「世界大戦から日の本を守る」という国防概念を朝廷に奏上し、大義名分を得ていたからこその一撃であった。
「織田信長……! 己の悪名を恐れず、日の本を内側から作り直しておったか! これぞ真の義! この謙信、喜んで守護大将の任を引き受けよう!」
軍神は、織田政府の最も強固な同盟者――ゆくゆくはシベリアを南下してくるロシア、あるいは大陸を統一する女真族の未来の脅威をせき止める「不滅の壁」となることを、涙ながらに誓ったのである。
3. 天下の東半分の包備と、大坂の孤立
光秀から「上杉謙信、天皇の宸翰に涙を流して同盟を誓う」という寸分の狂いもない吉報が届いた時、信長は安土の新政庁で静かに胸を撫で下ろした。
(よっしゃあああ!! 軍神ハメたり!! これで上杉謙信とガチバトルする未来は永久に消滅したぞ! むしろ『朝廷公認の守護大将』という最高の名誉職(国家公務員)を与えたから、喜んで北の防衛(先行投資)を引き受けてくれるわ。武田も北条も貿易利権で動けんし、東国から近国にいたる天下の東半分はこれで完璧に確保された!)
すでに京にて徳川家康へは、次なる国家目標(中期計画)である「東国大開発の図面」を渡し、牙を抜くどころか死に物狂いの実務官としてハメ終えている。今川、朝倉、六角、浅井、武田、北条、そして上杉――東国の怪物たちすべてを、一滴の血も流さずにチェス盤の駒のように配置し終えたのだ。
内戦の最速のスクラップ&ビルドは、戦う前に、信長の脳内知識によって美しく成し遂げられていく。
しかし、天下の東半分が織田政府の法と銭の前にひれ伏す中、陸路も海路も完全に遮断され、周囲を完全包囲された大坂の石山本願寺(顕如)だけが、不気味な焦燥の闇の中に、未だ取り残されていた――。
(地の文:古の大権職『惣追捕使』の名の元に、東国の包囲は成った。だが、完全に孤立した本願寺の焦りは、いよいよ大坂に、最後の無血平定の嵐を呼び寄せようとしていた――)
(第11話:「神仏の住み分けと、大坂無血国営化」へ続く)




