お味はいかが、森丸くん
田無くんの活躍により、森丸はイケメンと一緒にカラオケに来て、パインソーダを飲みながらフライドポテトを割り箸で楽しみ、ココロオドルと自身のグループのデビュー曲を歌っていることが判明した。
しかし分かれば分かるほどよく分からない。なんで先週に引き続き今日も、平日の昼間にカラオケに来ては、多分2時間半くらいしかいないけどフリータイムを楽しみ、わざわざデビュー曲まで歌っているんだろう。
田無くんまで知名度は届いていないとはいえ、そこまで暇なスケジュールではないはず。なぜ池袋西口のポップタイムに週一で来てるんだ。息抜きしに来てるの?
考えを巡らす私をよそに、田無くんはフッとキッチンへ消えてしまった。簡単に森丸が来ていることを打ち明けられないけど、誰かに見解を聞きたい気持ちもある。
一人悶々と考えていると、誰かがドリンクバーを取りにやって来た。反射的に目を向けると、茶髪の青年がコップを取っているところだった。
…………お? なんかやけに眩しい青年だ。
いや、それより、待て……そうだよね、風李くんだよね! レザーの山本風李! 目大きい〜。すげ〜。
てか、イケメンの友達って風李くんのことじゃん。合流したのは君だったのか。そりゃイケメンだよ。アイドルだもん。息抜きに風李くんと二人でカラオケってことなの? 仲良しだね。
でも君たち。先ほども言いましたが、いくら空いてる平日の昼間でも、マスクと帽子を部屋に置いてそのままの姿で来るのはどうなんですか。あなた方、ちゃんと眩しいんですよ。実際、レザー分かる側の店員がすぐそこにいるんですよ。
君もパインソーダ注いでるし。勧められたのかな。
だいぶ見てしまったけど、このまま見過ぎるのも不審に思われるので、合わせたレジ金をまた合わせて背景の店員になることにした。
そして風李くんが去って部屋に戻ってから、10分くらい経った後。
ティロリ♪
『205:(2名)バニラアイス×2』
最後まで楽しむね〜。
* * *
バニラアイス……。初心者の子はもちろん、2年くらい働いてる私でも、業務用冷凍庫に入った業務用バニラアイスの硬さには毎回心を折られている。
あのアイス用のディッシャーをバニラアイスの地に突き刺し、うまいことすくおうしても、表面をポロポロポロ……となぞるだけ。
どうにかしてガリガリしながら地道にアイス1玉分をかき集めても、バニラアイスというメニューは、厳しくもカップに2玉乗せなければならない。これをもう一回やるなんて、と思いながらなんとか溶けないうちに完成させるのだ。
サイズ的には大丈夫だけど、どうにか作った2玉はどこか苦労のパサつきが見える。小さい欠片をかき集めて一つにした感じがバレそう。
各部屋に置いてあるメニューに載っている綺麗な見本のバニラアイスは、本当に同じ業務用冷凍庫で冷やした業務用バニラアイスで作ってんのか?と思う。もしそうなら、リンゴを素手で潰せるような怪力に作らせたか、田無くんに作らせたかだ。
そう。田無くんは出来る。なぜなのかは分からない。聞いても「わりと溶けますよ〜」しか言わない。
田無くんは背も少し大きいかな?くらいの、筋肉もガリガリではないかな?くらいの、とても怪力とは呼べない見た目だ。
男性の中に入ったら全然力のあるようには見えないし、女性ばかりの弁当屋で働いてたら力仕事で重宝されるかな?くらいの見た目。でもそれもギリくらい。多分ソフトボールやってた主婦がいたら負けてしまう。
そんな田無くんなのに、バニラアイスはあっという間に2玉作れる。
今回なんて森丸と風李くんが2人ともバニラアイスを頼んでるから、2倍の4玉作らなきゃいけない絶望なのに、一瞬で仕上げて颯爽とキッチンから降りて来て、そのまま颯爽と部屋に運んで行った。
恐ろしい。これはレザー集合カラオケと同じくらい、気になっている謎。
こちらの気持ちも、レザーの2人も全く知らない田無くんが、またニコニコしながら戻ってきやがった。




