延長はどう、森丸くん
フライドポテト、割り箸に続き、デザートのバニラアイスによって、3回も205へ入ることになった田無くん。
今度は何を目撃してそんなニコニコしているんだ。
「流石にでしたよ」
「流石にでした?」
「はい。流石に注文3回目なんで、歌わないで僕が来るの待ってたみたいです。部屋入ったらすみっこで二人が話し合ってて」
話し合い……?
ただお喋りしてるんじゃなくて?
「それでもやっぱり僕の方は全然見ないで『あっ、そこ置いといてください』って言われて」
「そうなんだ」
「最後に帰り際にもチラッて見たんですよ。そしたらテーブルの上に、ノートとかボイスレコーダーみたいな録音する感じのものが置いてありました」
「レコーダー、へえ」
「結構真剣に話してる雰囲気でしたよ。一瞬しか見てないですけど」
二人でミーティングというか、仕事の話でもしてたのかな。
でもレコーダー?
話し合いを録音してるとか?
「ていうか吉村さん! 結局205の人は知り合いなんですか?」
「あっ」
知り合いかもしれないから見てきて、という設定をすっかり忘れていた。
なんでレザーの二人が来てるのかということしか考えてなかったので、つい『あっ』と言ってしまった。
冷静に考えたらおかしい。知り合いかどうか気にしてて、それについて探りを入れてもらうというというのが、現在の田無くんの任務なのに。
それを考えるとさっきの「あっ」は変すぎる。
知り合いだと思いますか、に対してはイエスかノーの二択しかないのに、何が「あっ」なんですか。急いで何か言わないと。
「多分知り合いじゃない気がするなー。でももし知り合いだと気まずいから部屋見に行くのはやめとくー」
「あー、そうなんですね」
はい、終わり。なんだそれ。あんなに協力してもらっておいて、これ。
つまらなすぎる回答。盛り下がる先輩。私はこういう人が一番嫌いなのに。
人に頼んでおいてどっちでもない曖昧な回答。ふざけんなよ、おい。
関係ないこっちが盛り上がって来たところだったのに。お前に寄せて盛り上げて、わざわざ部屋を何回も見てきたのに。
さすがの田無くんも穏やかではいられないよな、こんな口の利き方する奴には。
謝ろう、というか訂正しよう。
「あっ、えっと……関係ないのに部屋見に行ってくれ……」
「そうですよね」
え? そうですよね? 何がそうですか?
「こんな少ない情報じゃ判断できないですよね」
「いやいやいや! 十分すぎなくらいだよ! 気にしないで!」
「次また遭遇したら出来る限り情報集めますんで」
またあの怖い目をしている。指示役も狼狽だよ。
田無くんが怒ってないのは良かったけど、もうこれは忘れてくれて良かったのに、引き継がれてしまった。
田無くんが思い描くハッピーエンドであろう『え、やっぱり知ってる人だった! 声かけてこようかな〜』は一生来ない。
すでに知っているし声は絶対かけないし。ごめんなさい、田無くん。
* * *
そしてまた1週間後の金曜日。
「フリータイムで。あと、部屋できればDBの近くがいいんですけど」
パインソーダを効率よく飲みたい森丸が現れた。




