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お連れ様は、森丸くん


 森丸の密会を押さえるチャンスが来てしまったわけだが、というか森丸側から差出されたわけだが、どうしよう。


 私のジャーナリズムが目を覚ましそう。ジャーナリズむを得ない状況。


 でも順当にいくとキッチンにいる田無くんがそのままポテトを部屋に運ぶだろう。どうする。


 ポテトの揚げ時間は3分30秒。田無くんのことだ。人気メニューのフライドポテトなど目をつぶってでも作れる。目を開けてたらオーダー伝票の“フラ”が確認できた時点で、封を開けて揚げているはず。


 ということは、今残されている時間は多くても2分。自分でポテトを運びたい気持ちと、部屋に入って何かを知ってしまいたくない気持ちがせめぎ合う。


 こうして考えている間にもフライドポテトの田無が迫る。どうする。……そうだ。



「ちょっと、田無くん」


 颯爽とポテトともに登場した田無くんを呼んでみる。


「はい、なんですか」

「それって205に運ぶんだよね?」

「はい」

「あのさ、お願いがあるんだけど」


 急なお願いにポカンとしている田無くん。


「205に入ってる人、たぶん知り合いな気がするんだよね」

「あの、さっき合流の人が入った部屋ですよね?」

「そうそう。その人は知らないんだけど、元々入ってた人の方がたぶんそうで」

「あっ、じゃあこれ運びます?」

「えっとそれは大丈夫で」


 この流れでポテト運び交代以外のお願いとは、と田無くんの顔に書いてある。


「まだ本当にその知り合いかどうか微妙でさ、ちょっと部屋どんな感じか見てほしいっていうか……」

「部屋がどんな感じか……?」

「雰囲気っていうか、あの……」

「あー、なるほどです。オッケーです!」


 幼馴染でも読み取れない行間を読み、お願いを理解してくれた田無くんはそのまま颯爽と205へと姿を消した。本当にオッケーなの?



 * * *



 ポテトを運び終えた田無くんが、なぜか少しニコニコしながら戻って来た。


「205の人、パインソーダの人じゃないですか! あの人が知り合いなんですか?」

「あー、かもしれないかなって」

「先に言ってくださいよー。僕、部屋で気づいた時に声出そうになったじゃないですか」


 今はそんな感想など、申し訳ないがどうでもいい。


「あのー……部屋の雰囲気とかは……?」

「そうですね……ちょっと怪しい?」

「怪しい?」


 怪しいって何。やっぱり二人の間に何かあるってこと?

 

「僕がノックして部屋入った時に、熱唱してて。えっと、パーンソーダの方が」


 森丸が熱唱……?


「たぶんココロオドル歌ってて。ラップの、エンジョイ!のやつ」


 森丸がラップ……?


「僕が部屋に入って来たことに、最初どっちも気づいてなくて。で、気づいた途端に顔を背けたんですよね」

「ほう」

「それに二人ともメガネとか帽子外してたし、最初の感じと違うんで、一瞬だれ?ってなりました」


 ダメですやん。この流行りとは距離置いてます、みたいな田無くんだから何も気づいてないものの、とりあえず部屋に入ってリラックス〜で変装解いてるんじゃないよ。お腹減ったくね? ポテト頼むか〜じゃないよ。


 熱狂的なファンがいたらどうするんだよ。『カラオケで本人映像見てたら本人来たんだけどわら』って載せられて終わりやん。


「ほんと二人とも僕見たら死ぬのかなってくらい目を逸らされて。というか顔を隠されて。恥ずかしかったんですかね」

「なるほどね。ちなみに女性……? 後から来た方って」

「いや? でも、うーん……男性だと思いますよ」


 なるほど……。



 ティロリ♪


 またモバイルオーダーが入った。



『205:(2名)⭐︎割り箸×2』


 おいおい割り箸頼んできたよ。手を汚さずに食べたいな、じゃねえよ。


「僕持ってきます。あ、あともう一回ちゃんと見てきますんで」


 田無くんは颯爽とキッチンまで消えていった。してないウインクが見えるほど軽やかだった。

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