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おひとり様ですか、森丸くん


 これで3週連続3回目の来店。


 2回目の前回も、やはり2時間半ほどで森丸は帰った。今日もきっとその位しか滞在しないのだろう。


 でも2時間半で入る時はフリータイムにするのがお得と初回で学んだので、しっかりと『フリータイムで』と宣言し、さらにはドリンクバーに近い部屋を希望するところまで意識が向くとは、3回目にして成長著しい。さすが未経験からオーディション番組を勝ち上がった男。吸収が早い。


 そう思いながらも私の身体は自動で受付を行い、森丸をドリンクバーに一番近い203へと案内していた。



 帽子とメガネをつけた森丸は、私にペコっとお辞儀をすると203へと入っていき、20秒もしないうちに帽子とメガネをつけてない森丸がドリンクバーを取りにやって来た。そしてコップを二つ取るとその両方にパインソーダを注いだ。


 この短い間に、なんかあんまり……な事がテンポよく起きたよね?


 何回も言ったけど帽子とメガネ外すの早すぎる。ドリンクバーに近い部屋だからと油断しないでほしい。あと、一人でコップ2つ持って行くのも、両方パインソーダなのもあんまりかも。別にいいんですけど。


 両手にパインソーダのため、ドアを開けづらくしている森丸。いつもなら助けに行こうかなとするところを、近づく勇気もないため無視することにした。ごめんなさい。


 森丸はひじを何とかドアの持ち手に引っ掛けつつ、ちょっと開いたドアの隙間に足を滑りこませつつ、でもその勢いが良すぎてドアと足でゴッという音を立てつつ、びっくりしてパインソーダをこぼしそうになりつつ、部屋へと戻っていった。



 森丸に会うのも3回目となるとあまり驚かなくなった。


 それにしても毎回金曜日の同じような時間に来て、2時間半で帰っていく森丸。何か決まったスケジュールでもあるのかな。池袋の西口で行われるような。

……池袋の西口で行われるような? あるか?



「お疲れさまでーす」


 脳内で西口を探索し始めた私に、出勤してきたさらちゃんが声をかける。


「おつかれさまでーす」

「おつかれー」

「え、いおりさん、なんか疲れてます?」

「ん? 疲れてないよ。考え事してただけ」

「考え事かー。自分したことあんのかな、考え事」


 そうやってぼんやり考えているさらちゃんを見て『それだよ、それ笑』と思ったけけど、私はまだそれを言わずに飲み込める。


 ズバリ(笑)風な事を言いたくなっても、言う前にそれがしんどいと気づけるから。でもきっと20年もすれば歯止めが効かなくなって、『それだよ、それ笑』と笑っているのだろう。



 その後なかなか客も来ないので、さらちゃんと受付で喋っていた。


 この前、田無くんがバニラアイスをとんでもない早さで作り上げた話をしたら、さらちゃんもそれを目の当たりにした事があったようで、その時驚いたさらちゃんは、筋トレとかしてるんですかと田無くんに聞いたらしい。


 すると田無くんは『母親がアーチェリーしてたからなあ』と親の部活歴のみ答えてきたそうだ。質問をする度に謎が深まる男だ。



ティロリ♪

『203:(1名)バニラアイス』


「うーわ、やば。バニラアイスの話してたらこれですよ」

「ぴ率高いね」

「マジぴ率っすよ。頑張って作ってきます」


 さらちゃんはうなだれながらキッチンへと向かっていった。


 それはそうと、せっかく覚えたぴ率も、すでに高さまでは言及せず“ぴ率”で使用していることに時代の早さを感じた。


 ていうか、森丸。入店早々バニラアイスの注文してきた。この前美味しかったのかな。 



 10分くらい経った後、さらちゃんがバニラアイスを作ってやって来た。


「マジで頑張った。これでも早いですよね?」

「うん、すごいよ。綺麗にできてるし」


 さらちゃんは少しドヤっとした笑顔を向けてから、203へと運んでいった。


 普通はこれくらい手こずって厄介なものだから、さらちゃんは健闘した方だ。よくやったよ、と思っていると、さらちゃんが少し眉間にシワを寄せながら受付に戻ってきた。


「どうかした?」

「あの……いおりさん。203の人って芸能人だったりしますか?」


えっ……と……バレたのか、森丸?

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