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聖ゾンビさん  作者: 痩せ散らかす
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 ワタクシ、ワイドなエキドナことナウンサ様にこっぴどく叱られてしまいました。

 そうです。先日の件です。魔王軍に所属し3ヶ月も経っていないワタクシは社会の厳しさを味わっております。


 えっ?何故そんなに短いのか。3ヶ月で支部長の側近であれば優秀じゃないかですって?いやいや、支部長の側近(パシリ)は他に適格者が居なかったんです。ナウンサ様の髪に触れてしまえば麻痺してしまいますし、殴られて吹っ飛ばされるパワハラだって日常茶飯事ですよ。

その点は、麻痺にも物理にも耐性のあるワタクシが適格だったというだけです。


 3ヶ月というのはですね。ワタクシ最近までダンジョンに引きこもっていたんです。ええ。森林大陸のダンジョンです。正確には生まれてからダンジョンを出た事がなかったんです。

ああ、懐かしきかな。ダンジョン。

 斯く言うこの聖剣もダンジョンの拾い物なんですよ。

 ダンジョンを出て、魔王軍に入れて頂けたおかげで、文明的な生活が出来る様にってワタクシ感激しております。

だって、理性が付く前なら未だしも、理性が付いた後でなら断然今の方が快適ではありませんか。


 はい。何故ナウンサ様の支部なのか。ゾンビやらグール、吸血鬼で構成された支部への転勤はないのか、ですか……第三支部で御座いますね。

ワタクシ、聖なる不死者(セイントゾンビ)なもので、聖属性持ちは他に迷惑になるからと。第三支部ではなく、こうして出身地でもある森林大陸に支部のあるナウンサ様にお世話になっております。

 ナウンサ様程のお方であれば聖属性のワタクシが近くにいても何の問題もないというのもワタクシが側近(パシリ)をしていられる理由の一つで御座いますね。


 さて本日のお仕事ですが、先日レガイル様が攻めた人間の街、プロンエにて人間側の加勢に来ていたティカ王国軍が無謀にも、我が第四支部のテリトリーへ勇者を伴わず侵入してくるというのです。


 ワタクシ、その厄介払いを命じられました。

一人での任務です。魔物も抜きです。ティカ王国軍は街からの出発のみ確認されてるみたいです。出発後の様子を教えて頂けないのはワタクシに経験を積ませ、早く仕事に慣れろということでしょうか。


 樹を斬り倒したり、ジャングルを破壊してしまうと、また器物損害でナウンサ様に怒られてしまいそうなので、さっさと終わらせてしまいましょう。


 早くもワタクシ、一団を見つけました。

どうやって見つけたかって?

街に向かって結構な幅をひたすら走って蛇行し発見したのですよ。


 「人間の皆様、ようこそいらっしゃいました。ワタクシ、あなた方の厄介払いを仰せつかっている者で御座います。大人しく引き返しては頂けないでしょうか」


 ワタクシ、周辺の魔物に思念信号を飛ばし、軍の一団の方々を襲わせない様にしております。しかし、警戒を解いてくれる様子はありません。


「何だこいつ!鑑定が出来ない……くそっ、てめぇら動くんじゃねぇぞ」


隊長さんでしょうか。

神妙な面持ちでお一人、こちらに歩み寄ってこられました。


「あんた。話があるんだが、良いか?」

「ワタクシに?はい。何で御座いましょう」

「俺と一対一で闘ってくれ。あんたが勝ったら、信号弾を放ち他の部隊も撤退させる。どうだ」

「ええ。良いですよ。ではどんな勝負を?」


 ワタクシが勝負の質問をすると、隊長さんは腰を落として背中の剣に手を掛け、勢いよくワタクシへ踏み込み掴んだ剣を振り下ろして来られました。


「勿論、命を掛けた決闘だ!!」

 凄まじい形相です。


「左様で御座いますか」


 ワタクシは隊長さんの首を切り落としました。

残された一団の皆様は随分と狼狽えておられます。

一騎討ちだったというのに、敵討ちとばかりにワタクシに挑まれる方が数名。

 ワタクシは峰打ち(・・・)でそれらの方々を倒します。

ワタクシが与えられた任務は厄介払いに御座います。殺すことではありません。

 隊長さんは、約束してくれました。勝てば残りの皆様撤退して頂けると。

その約束をワタクシが反故にする訳にはいきません。


 空に撤退の信号弾が上がります。


「引けっ!!引けーっ!!」

「隊長っーー!!」

「何なんだ奴はっ!」


 暫くして、皆様撤退して頂けました。隊長さんの亡骸も一緒に。

ミッションコンプリートで御座いますね。

きちんと厄介払いすることが出来ました。ワタクシ感激。


 あの程度の戦力。10秒あれば余裕で殲滅出来たと思います。

 しかし、今のワタクシは魔王軍なのです。忠実に仕事をこなす。それが社会人なのだと、1ヶ月研修で習っております。

 では、ワタクシも第四支部本部へ戻りましょう。


「バッカゾンビ!!殆どを生きて帰すなぞ、何て奴だ!聖属性のあんたを泣く泣く引き入れてやったというのに。任務の一つすらまともにこなせやしないのかい!」


 基地へ戻ったワタクシは、厄介払いなのだからジャングルを人間の死体で飾り付けし、恐怖で後続部隊の戦意も削いで来るのが正解だと、ナウンサ様に叱られてしまいました。ワタクシ消沈。

 そんな飾り付け技術ワタクシにありません。


 厄介払いの任務で1人しか殺せていないワタクシには、別の任務が与えられることになりました。


ワタクシ、次こそ成果を上げて見せます。


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