1
よろしくお願い致します。
皆様初めまして。
ワタクシ、魔王軍第四支部は森林大陸攻略軍でワイドなエキドナこと支部長ナウンサ様の側近を勤めております。ゾンビです。
えっ、ワタクシの名前ですか?
ワタクシ、残念ながら名前所持魔物では無いのですよ。
けど、一部の人間からはこう呼ばれています。このワタクシ野郎!ですとか、ク○ゾンビと。
そうなんです。今はこうしてコートを着ておりますが、ワタクシ色白なんですよ。
はぁ、見た目がゾンビに見えないと。そうですね。それはこの聖剣のお陰です。とは言っても剣ではなく、刀らしいのですが。人間の武器は種類が多くていけませんね。
何故、ゾンビが聖剣を装備出来ているのか。
その質問はごもっとも。
それはですね……
「おーい!ゾンビはどこだい?!クソゾンビ!!」
あっ、ワイドなエキドナことナウンサ様に呼ばれてしまいましたので簡潔に答えます。ワタクシが聖なる不死者だからです。
「はーい、ナウンサ様。見廻りからただ今戻りますのでお待ち下さい」
全く、ジャングルの中は動き辛いですね。
けど、ブーツを履いているおかげで足元は大分楽になってます。
人間素晴らしい。
こういう物を作れる人間は殺してしまうのが勿体無いですよね。
ワタクシが森林大陸攻略本部へ戻り、門番さんに中へ入れて貰うと直ぐそこに大きな影がありました。
「お待たせ致しました。ナウンサ様」
この横にも縦にもドデカイお方が、ナウンサ様です。
触れれば神経を麻痺させる髪の毛に、綺麗でつぶらな複眼。猛毒を含む立派な爪に滑らかな鱗の皮膚。
全てを呑み込む大きな口。いや、本当にふくよかな体型なことで。
「遅いぞ!クソゾンビ!!レガイルが人間に苦戦しているらしい。手伝ってきな!」
「承知しました。ナウンサ様のおおせのままに」
ワタクシ、あっという間に戻ってきたと思ったのですが。
それはそうとレガイル様ですか。
主にナウンサ様と同じ爬虫類族で構成されている魔王軍第四支。その中の三隊長が一人、デモンボアの双剣使い。単騎でも十分に人間を圧倒出来るお方の筈ですが、何か問題があったということですね。
その問題が何かも教えて頂けず、現地に行くまで分からないところが、ナウンサ様式部下の教育なのでしょう。
レガイル様は予定通りであれば、現在南東方面にあるプロンエという街を襲撃されている。
再びジャングルを滑走すとしましょう。
森林大陸は広大です。
人間なんてほかっておいても、魔族や魔物も十分に住めます。
魔王様は余程人間が嫌いな様ですね。
ワタクシ、理性を持ってから人間を食べた事が無いので、人間は食料にもならないのですが、中には人間の魂を美味しいと言われる方も見えますから。グルメ事情でしょうか。
それにしても人間の街は久しぶりです。新しいコートや手袋も欲しいですね。ワタクシ、日光とか大丈夫なゾンビなので主にオシャレ目的です。けど、海辺ならまだしもジャングルのなかの街ではあまり無さそうですよね。
あら、だんだんと煙の臭いがしてきました。火の手も上がってます。
驚いたことに、街の外でも魔物の死体が多いですね。但し、レガイル様たちは街への侵入に成功している様子。
壁を飛び越え屋根の上へ上り街の中の様子を確認しますと、何と人間の方が優勢ではありませんか。
これは少し、避難されてる人々に話を聞いてみるのも良いかもしれません。フードを深く被って顔は隠して行きましょう。
屋根から屋根へと跳び移り獲物を見据え、ワタクシは愛刀を抜き、勢いよく地上へ下り瞬時に大量の肉を切断しました。
私が勢いを付けるために蹴った屋根が崩れてます。屋根さん、すみません。
「大丈夫でしたか。お怪我はありませんか?」
出来るだけ優しく声を掛け、愛刀を鞘に納めます。
「は、はい。ありがとうございます」
「おっ、俺も怪我はない……助かった」
「ワタクシ旅の者です。この街は今、魔王軍に襲われている様ですが、街の状態を教えて頂いても宜しいですか」
はい。ただ今ワタクシ、避難されてる人々から話を聞くため、魔物を斬りました。必要経費で御座います。
しかし、人々の反応がイマイチですね。ワタクシのちょっと見えるセクシーな肌が白いからでしょうか。樹林に覆われたジャングルとはいえ、日焼けしてないのは不自然ですからね。
「魔王軍の奴らは、勇者の仲間ってお方があらかたやっつけてくれたんだ。そこへ王国軍も加勢に来てくれて。あのお方は今頃、敵の大将と戦ってくれてるはずだ」
勇者のお仲間さんですか。レガイル様、大丈夫でしょうか。
「ワタクシも魔物の死体の多さに驚きました。中級上級の魔物まで倒されていましたから。流石勇者のお仲間です。して、その勇者のお仲間とはどの様なお方ですか?」
「ああ、あんたも彩の勇者達は、知っているだろ。彩影の勇者、魔剣使いアンサ様だ」
もちろん存じておりますとも。あの、うる彩方々の1人という訳ですね。
「そうですか。では、大将はアンサ様にお任せしてワタクシもそこらの魔物駆除を手伝いましょう」
「ありがてぇ!あんたのその刀、聖剣だろ。俺も引退しちまったけど昔冒険者やってたから分かるぜ。あんたみたいな人に加勢してもらえれば安心だ」
「では、期待に添えるよう頑張りすね」
背中に受ける羨望の眼差しは、いつ受けても気持ちが良いですね。魔王軍では絶対に無いですよ。側近ですし。
再び屋根へと跳び乗り、レガイル様を探そうと思いましたが、大きな爆発が起こりました。レガイル様、自爆なされましたか。
急いで爆発のあった場所へ向かい、ワタクシ彩影の勇者ことアンサ様とご対面で御座います。
「おいたわしや。レガイル様。ワタクシが寄り道をしたばかりに。代わりにワタクシが勇者の首を持って帰りましょう」
「持って変えるなら、今自爆した奴の肉片にしてくれねーかな。ついでに他の生ゴミも持ち帰って貰って良いんだが」
アンサ様は傷だらけで御座いました。
レガイル様もそれだけご健闘されたということ。ここは、潔く全軍撤退のがマナーですね。
「分かりました。この場は引きましょう」
「じゃ、宜しく頼むぜ」
ワタクシはアンサ様の背後へ一瞬で回り、肩に手を置きました。
アンサ様は酷く驚かれております。
「また、お会い致しましょう」
ワタクシはその場から離れ、魔物の制御チャンネルへ撤退の思念信号を送り街を後に致しました。
もちろん、アンサ様の「出来れば二度と会いたくない」という誉め言葉も聞き逃しませんでした。




