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私はニセモノ白者/著者:異世界トリッパー  作者: Lv.99
第一章 白者の異世界珍道中
22/26

20 偽物とオネエ

「白者様がセルフィーンの事をあまり知らなかったのは、そういう理由だったんスねー」

「信じられないわ……でもアンタが言ってる事が本当なら、白者が二人居る辻褄(つじつま)が合うわね……」

「まあ、一応私も被害者だけどねー」


 一通り話し終え、それぞれが感想を述べる。

 因みに、ヘタレ国王が元凶という事は伏せてある。下手にバラして旅費(わいろ)を返せなんて言われちゃ(たま)んないからね!


「サブが降臨したんなら、白者様はこれからどうするんスか?」

「んー、これと言って、今までと変わらないかな。王宮で報告が終わったら、一度オズラルドに戻るよ」

「オズラルドに何かあるんスか?」

「白者マニアの婆ちゃん……最強の魔女にサブの事を聞いてみようと思う。誕生の経緯もそうだし、見た目が中途半端なのも気になるしねー」

「『中途半端』は余計よ! でもそうねぇー、アンタはもうオズラルドには戻れないわよ」

「は? 何で?」

「偽物白者には、今ここで消滅してもらうからよ。本物のアタシが降臨したからには、偽物は用済みってワケ」


 いや、何怖い事言っちゃてんのコイツ……。


「なんでそうなる!」

「そうッスよ! 白者がいつも一人である必要は無いと思うッス。二人居た方が、何かとお得かもしれないッスよ?」

「お得って……アンタねえ。アタシはセルフィーンの番人よ? 白者は常に一人しか存在しない、それがこの世界の(ことわり)。不必要な異分子を処分するのも、白者の仕事よ」


 異分子、ねぇ。その異分子を作ったのはセルフィーンの人間なのに、随分と勝手な言い分だ。


「私は消滅する気なんて無いよ。こっちの生活も結構気に入ってるし」

「アンタに存在されると、アタシが偽物扱いされて困るのよ。別に消滅したところで、魂はチキュウとか言う異世界に戻るだけなんでしょ?」

「ヤダね」

「往生際が悪いわね! セルフィーンはアタシに任せて、アンタはサッサと消えなさいよ!」

「絶対いや――うおっ」


 危なっ。いきなり攻撃魔法仕掛けてきやがった! 常人より身体能力が上で良かったー。


「何やってるんスか! 白者同士で戦うなんて馬鹿げてるッス!」

「ふん、大人しく殺されれば、戦う必要なんて無いのよ」

「へぇー、どうやらこっちの意見は聞いてもらえそうにないね。ボインちゃん、出来るだけ安全な場所まで離れてて」

「でもっ」

「小娘、死にたくなかったらアンタは引っ込んでなさい」

「うう、分かったッス……」


 ボインちゃんは心配そうに何度も振り返りながら、森の方へ走って行った。

 近くに人里も無いし、この開けた場所なら少々デカイ魔法をブッ放しても大丈夫だろう。

 さて、売られた喧嘩は買いましょうか。


「死ぬ覚悟は決まったかしら? 白者を名乗るのはアタシだけで充分なのよ!」


 サブはそう言って右手を突き出し、無数の光の矢を放つ。


「あらよっと」


 唇ズの力を借りて、瞬時に結界を張る。

 奴は本物なだけあって、最初から色んな魔法が使えるようだ。私は使えるようになるまで大変な努力をしたのに……あー、なんか腹立ってきた!


「ちょっと! 妖精を二体も使うなんて卑怯よ!」

「へっ、命を賭けた勝負に、卑怯もへったくれも無いっつーの」

「汚い手口使うなんて、所詮偽物は偽物ね」


『光ある所にぃー(影があるぅー)

どんよりぃー[闇の力でぇー]

押し潰せぇー(押し潰せぇー)[押し潰せぇー]』


 歌い終えると、大蛇の形をした黒い煙が現れた。そいつは素早い動きでサブの体に巻き付き、じわじわと締め上げる。

 勿論これだけじゃ終わらせない。奴は曲がりなりにも白者、容易に倒せない事ぐらい想像がつく。


『大きな岩でぇー

嗚呼ー プチッとな!』


 頭上に巨大な岩が出現し、身動きが取れないサブに向かって落下する。


「ぐっ、こんなものっ」


 彼は光魔法で闇の大蛇を相殺して、目にも留まらぬ速さで岩から離れてしまった。どうやらスピードは私より上らしい。

 標的を失った岩は、そのまま地響きと共に地面へ落下し、砂塵(さじん)を巻き上げながら砕け散る。


「今度はアタシからいくわよ!」


 先程の砂塵で視界が悪い中、どこからか声だけが聞こえる。と同時に、大量の小さな火の玉が飛んでくる。


『下手な鉄砲ぉー(数撃ちゃ当たるぅー)

上手な鉄砲ぉー[全部当たるぅー]』


 巨大なつららを沢山作り、相手の魔法に向かって一斉に飛ばす。

 つららは火の玉を全て蹴散らせながら飛んだが、サブは素早い動きでそれら全部を避けたようだ。えーい、ちょこまかと鬱陶しい!


「カトリーヌ、あいつの動きを止めて。マイケルは私の魔法が当たらないようにカトリーヌを守って」

([りょうかぁーい])

「おいこらウ○コ野郎、ここまでおいでー」

「誰がウ○コ野郎ですってぇー⁉︎ 偽物は品の欠片も無いのねっ」


 私が魔法で気を引いてる間に、カトリーヌがサブの背後に回る。

 よし、今だ! そこで動きを止めてしまえー!


――ガブッ


「いだぁぁぁぁー⁉︎」


……カトリーヌがサブのお尻に噛み付いている……。


「魔法じゃなくて、噛み付き攻撃なのか……」

[おー ハニィー 美しい勇姿だぁー]


 逃げようとするサブの体に、ガブガブ噛み付く大きな唇……変なホラー映画みたいだ。

 おっと、こうしちゃいられない。デカイの一発ブチかましたるでぇー!


『土と氷と風がぁー

矢になりオカマは穴だらけぇー』


 三種類の矢が、サブをグルリと取り囲むようにして放たれる。

 フハハハハ、これなら逃げられまい。


「いだだだだ! んもう! 何なのよコレ⁉︎」


 奴はカトリーヌを振り払い、浮遊魔法で空へと逃げた。くそー、飛ぶのも自由自在かよ!


「もう怒ったわよ! これでも喰らいなさい‼︎」


 上空から火と風の槍が降り注ぐ。結界で防いだものの、槍の数が多過ぎて全部は防ぎ切れない。


「いってぇー! あっちぃー!」


 致命傷にはならなかったけど、あちこち切り傷と火傷だらけだ。ぐぬぬぬ、許すまじ!


「マイケルっ、あの五月蝿い小蝿を叩き落としちゃいな!」

[任せるがいいー]


 私の浮遊魔法じゃ空中戦は不利だけど、地上に降りてきたらコッチのもんだ。今度こそ仕留めてやる!

 さあマイケル、サッサとそいつを撃ち落としちゃいなっ。


「なっ⁉︎ また来たわね、この忌々しい妖精!」


 サブが魔法で追い払おうとしたけど、マイケルの攻撃の方が早かった。


[カーーッ、ペッッ‼︎]

「ぎゃあぁぁー! ばっちい‼︎」


……噛み付きに引き続き、今度はまさかの(たん)攻撃。しかもオヤジ張りの演出だ。


[カーッ、ペッ! カーッ、ペッ!]

「イヤアァァー! なんなのコイツー‼︎」


 想像してみて欲しい。幅が50センチ以上もある口から生み出される痰の量を。

 みるみる痰まみれになっていくサブ……きっと地上に降りるまで、攻撃は止まらないんだろうなぁ。

 マイケルだけは敵に回しちゃ駄目って事がよく分かった。


「ちょっとアンタ! 妖精にどんな教育してんのよ⁉︎」

「いや、何もしてないけどね……」


 止まない痰攻撃に精神がやられたのか、フラフラしながら地上に降りてこようとしている。……チャーンス!


『ばっちいウ○コはぁー(臭いのよぉー)

水洗トイレにぃー(流しましょー)』


 サブが降り立とうとしていた地面から、特大の水柱が上がる。クジラの潮吹きよろしく、何度も空高く打ち上げられるオカマ。

 水だって激しく打ち付ければ強力な鈍器になる。幾ら丈夫な白者でも、まともに食らえばタダじゃ済まないだろう。

 奴の意識が飛んだところで、仕上げに見えなくなるまで吹っ飛ばす。


「フハハハハ! 勝ったどぉーー‼︎」

([大勝利ぃー])


 勝利の雄叫びと共に地面に横たわる。つ、疲れたぁー!





 あれから暫く横になって休んでいると、ボインちゃんが意識の無いサブを引き摺りながら戻って来た。これといって大きな外傷も見当たらないし、消滅もしていないから恐らく気を失っているだけなのだろう。


「コイツ、どうするッスか?」

「そんな物拾ってきちゃいけません。元あった場所に捨ててきな」

「……飼っちゃ駄目ッスか?」

「毎日散歩に連れてくの大変だよ? 餌代だってどうするつもり?」

「餌……いい加減この冗談、辞めないッスか?」

「えー、折角気分が乗ってきたところなのにー」


 彼女の話によると、サブは水柱で打ち上げられた後、森に落下。木の枝に引っ掛かっていた所を回収してきたらしい。

 地面に叩き付けられる事も、木に突き刺さる事も無く引っ掛かるとか……悪運の強い奴め。

 水柱のお蔭で、痰まみれの体は綺麗になっていたけど……びしょ濡れでカトリーヌの歯型だらけだし、土や葉っぱが張り付いていて酷い有り様だ。

 まあ、そう言う私も傷だらけの(すす)まみれだし、酷い有り様なのはお互い様か。


「今は気絶してるだけっぽいッスけど、消滅させた方がいいんスかね……」

「うーん、ここまで悪運が強いのもコイツの実力だし、無抵抗の相手にトドメを刺すのも気が引けるなぁ」

「起きたらまた襲ってくるんじゃないッスか?」

「その時はもう一回叩き潰すまで!」

「白者様がそう言うんなら、アッシも別にいいんスけど……」


 そこでふと、少し気になっていた事を思い出した。


「ところでさ、私が作り物の白者だっていうのは分かったよね? それでもまだ私と一緒に行動するの?」

「へ?……白者様が何者でも、アッシの友達に変わりは無いッス。だからこれからも今まで通りッスよ」


 彼女は、さも当然といった表情でそう言い切ってしまった。


「……そっか」

「ほら、傷の手当てするッスよ。早く魔石を出すッス」


 気の所為かもしれないけど、傷に当たるボインちゃんの魔力が少し温かい気がした。



「う……ん……?」

「お……モグモグ……負け犬の……ムシャムシャ……お目覚めだね!」

「誰が負け犬よ‼︎」

「それだけ元気ならもう大丈夫ッスね」


 私の手当てが終わった後、ボインちゃんは律儀にサブの手当てまでしたらしい。……コイツはちょっとぐらい怪我してる方が静かなんじゃね?


「アンタ、さっきから何食べてるの?」

「生肉だよ……モグモグ……魔法いっぱい使ったからお腹が空いちゃって……ムシャムシャ……サブも食べる?」

「要らないわよ、そんな気持ちの悪い物。でもアタシもお腹空いたわ。降臨してから何も食べてないし」


 サブの主食って何だろう? 確か、本物の白者は本能で食べられる物が分かるんだよね?

 興味津々で見ていると、彼は私の隣に座って前置き無しに食事を始めた。


「全く……モグモグ……このアタシが……ジャリジャリ……あんなふざけた魔法で……ガリガリ……負けるなんて!」

「……ねえ、それって美味しいの?」

「うっさいわねっ。アンタには関係無いでしょ⁉︎」

「全然美味しくなさそうッス……」


 ボインちゃんがそう言うのも無理はない。だって、サブが食べているのは……土。手近な土を掴み取り、そのまま口へ運んでジャリジャリ……。

 私の生肉や虫も大概酷いと思っていたけど、コイツは土かぁ。最早食物ですらない。


「お互い食べ物には苦労しますなー」

「アンタみたいな生肉(かじ)ってる野蛮人と一緒にしないで頂戴」


 ケッ、可愛くねーの!

 奴は余程お腹が空いてたのか、悪態をつきながらも食べる手が止まる事は無い。

…………。


「あ、さっきそこで犬がオシッコしてたよ」

「ブッホゥッ‼︎」


 ヘッ、ざまあ!


「さ、食事も終わった事だし、ミカン団長に報告しに行きますかー」

「サブはこれからどうするんスか? やっぱ今までの白者みたいに、降臨した場所に暫く留まるんスか?」

「あの聖域の魔力は回復したみたいだし、もうアタシがここに留まる必要は無いわ」

「じゃあどうするんスか?」

「……白者と一緒に魔女の所へ行くわ。アタシの耳の形や、髪と眼の色を治す方法見つけなきゃ」

「……今、私の事『白者』って言ったね? 自分がサブだって認めたね?」

「ニヤニヤしてんじゃないわよっ。アンタなんて白者として認めてないし、名前が同じだとややこしいから仮よ、仮!」


 そう言うと、サブは耳まで真っ赤にしながらそっぽを向いてしまった。……ははーん、これがツンデレってやつだね?


「素直じゃないッスねー。正直に白者様と一緒に行動したいって言えばいいッスのにー」

「へぇー、そうなんだー」

「気持ちの悪い顔するんじゃないわよっ! アタシが一緒に行く理由は、アンタみたいなガサツな白者を見張っとく為よ!」


 ホント素直じゃないねぇ。ま、素直なサブっていうのも気持ち悪いから、下手にツッコミを入れるのはやめておくか。


「あ、そうだ。私が話した秘密は、他言無用だよ。この世界に混乱を招きたいなら話は別だけど、そん時は私が全力で潰すからヨロシク」

「白者様を敵に回すなんて恐ろしい事、アッシには絶対無理ッス……」

「言わないわよ。白者を作れるなんて知れ渡ったら、アンタみたいなのがウジャウジャ……考えただけで吐き気がするわ」


 若干引っ掛かる言葉が聞こえたような気がするけど、まあ黙っててくれるならいっか。

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