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私はニセモノ白者/著者:異世界トリッパー  作者: Lv.99
第一章 白者の異世界珍道中
21/26

19 オリジナル登場

「白者様、怪我してるじゃないッスか!」


 まだ血が流れている二の腕を見る。切り口は3センチ程度だが、少し傷が深そうだ。


「あー、あのザンバラ髪にちょっと油断しちゃってね。あ、そうだ」


 異次元カバンを漁り、恵梨香ちゃんから貰った癒しの魔石をひとつ取り出す。

 エメラルドグリーンで、ビー玉サイズの球体。色付きの硝子玉みたいでとても綺麗だ。


「うーん、これってどうやって使うんだ?」


 今まで怪我した時は、いつも婆ちゃんの魔法で治してもらってたしなぁ。水洗式トイレみたいに魔力を流せば良いのか?


「わっ、かなり純度が高い魔石ッスねー。これなら一個でも多少の怪我や病気も治るッスよ」

「で、どうやって使うの?」

「癒しの魔石は基本的に使い捨てッス。患部に魔石を当てて、純度に見合った魔力を流せばいいッス」


 ボインちゃんの説明によると、攻撃系の魔石も使い捨てらしい。敵に魔石をかざし、進行方向に向かって魔力を流すんだそうな。


「純度に見合った魔力ねぇ。それってどれ位?」

「どんなに純度が高い魔石でも、力一杯流す必要は無いッス。試しにアッシがやって見せるッス」


 そう言うと、彼女は患部に軽く魔石を当て、少量の魔力を流し始めた。

――おお、傷口がエメラルドグリーンの光に包まれて、あっという間に塞がっていく。

 光が収まると同時に、魔石は白く濁ってしまった。成る程ねー「使い捨て」の意味が分かった様な気がする。


「スゲー! 傷跡も残ってないし、痛みも消えちゃったよ」

「今回は一個の魔石だったッスから、アッシの魔力でも癒せたッス。魔石の数が増えれば、流す魔力も多く必要になるッス」

「へぇー、便利だねぇ。よし、怪我も治った事だし……」

「先に進むッスか?」

「腹ごしらえだよ」


 再びカバンを漁り、ミカン団長が持たせてくれた弁当箱を取り出す。お、これはウサギの生肉だ。柔らかくてウマー!


「白者様って、ホント自由ッスね……じゃあ、アッシも今の内に腹ごしらえしとくッス」


 食える時には食う、寝れる時には寝る、これって旅の基本だよね!



 食後、私達は泉の間へ向かう為、ボロボロの教会内を歩く。

 天気が悪い事も手伝って、昼間にもかかわらず回廊も薄暗い。


「何で泉の間なんスか?」

「んー、勘?」

「ホント適当ッスね!」

「だってさ、聖域の魔力が枯渇(こかつ)しているから均衡(きんこう)が崩れちゃったんだよね?」

「まあ、そうッスけど」

「聖域の中心に魔力でも注げばいいって、最初は思ったんだけどねー。でも聖域って、目に見えないじゃん?」

「確かに。教会が目印とはいえ、範囲が広いッスからね」

「かと言って、手当たり次第に魔法を掛けるのも効率が悪いし」

「ああ! それで聖域の象徴でもある泉の間なんスね?」

「そ。聖水が湧き出るって事は、そこに何らかの力が働いてるって思ったワケよ」

「試してみる価値はあるッスね!」


 途中、小さい魔物に襲われる事はあったものの、割とスムーズに泉の間に着いた。どうやらこの近辺の大物は、あの転移の間に集結していたようだ。


「この部屋はダメージが少ないみたいだね」


 部屋の隅に居たスライムを焼き払いながら辺りを見回す。

 壁が数カ所崩れているが、水盆は無事みたいだ。


「でも泉は空っぽッスね」


 水盆の中にはホコリが溜まっている。水が枯れてから随分時間が経ってるっぽい。


「水盆に回復魔法でも掛けてみるか。……てか、寒っ。体温調節魔法切れかかってるんじゃね?」


 激しさを増す吹雪は、崩れた壁の隙間から冷たい風を吹き込んでくる。狭い上に石造りの部屋は立派な冷蔵庫だ。


「アッシの魔力は残り僅かなんスよ。暫く我慢するッス」

「ヤダ。寒いのキライ」

「アッシは食べ物で魔力回復出来ないんスよ? もしアッシが倒れたら、担いで連れて帰ってくれるんスか?」

「あ、ムリ。重そうだもん」

「サラッと失礼な事言うッスね! 手袋と襟巻きで我慢するッス!」

「ちぇっ、ケチー」


 すっかりヘソを曲げてしまったボインちゃんに悪態をつきつつ、マフラーと手袋を装着する。

……魔法付きの防寒具でも、この寒さの中では気休めにしかならない。


「うー、まだ寒い! こんな所、サッサと退散したいっ」

「アッシだって、こんな魔物がウジャウジャ居る所、早く退散したいッスよ」


 こうなったら、どデカイ魔法を一発お見舞いして、とっとと帰ってやる!


『シオシオのぉー(聖域よぉー)

とっととぉー[回復しやがれぇー]

([回復しないとぉー])

ブッ潰すぞオルァァ‼︎

([オルァァ‼︎])』


「それって脅し――うわっ、眩しいッス!」


 水盆どころか、泉の間全体が真っ白な光に包まれる。目を開けていられない程の眩しさだ。

 変だな。回復魔法の光って、白かったっけ?

 私の疑問をよそに、数秒後には徐々に光が収まり、少しずつ周りを見渡せるようになった。

――ん? さっきまで誰も居なかったのに、水盆の前に人が立ってる……?


「だ、誰ッスか⁉︎」


 目が慣れてくると、謎の人物がボンヤリと見えてきた。

 背の高さ・肩幅・喉仏から見るに、恐らく男性。何故「恐らく」なのかと言うと、透けるような白い肌で物凄く美しい顔立ちだから。

 彫りは深いけど男性にしては大きな目、高くて形の良い鼻に尖った顎。首筋まである不揃いの髪は、上質のシルクみたいな輝きを放っている。少しゆったりめのローブも白いし……まるで女神だ。

 でも決定的にこの世界の人間とは違う点がある――髪と眼の色が茶色。私程じゃないけど、耳も少し尖っている。

 うーん、妖精かなーと思ったけど、この状況から察するに……


「えーっと、もしかして白者……?」

「え⁉︎ 白者様がもうひとりッスか⁉︎」


 すると女神は眉間に皺をグッと寄せ、野太い声でこう言った。


「ちょっと! 『もしかして』じゃなくて、アタシは正真正銘の白者よっ!」


 まさかのオネエだった……。


「アッシ、今凄く残念な気持ちでいっぱいッス」

「奇遇だね、私も同じ気持ちだよ。神様が居るのなら、一発ブン殴ってやりたい」


 そうやってボインちゃんと心をひとつにしていると、私を見ていたオネエが眉をひそめた。


「ん? 何よアンタ、白者みたいな成りして。降臨したてのアタシに、喧嘩を売りに来たワケ?」


 ほう。婆ちゃんが言った通り、本物の白者は生まれた時からセルフィーンの常識を持ち合わせてるのか。


「んー、ツッコミ所は沢山あるんだけどさ、この鏡で自分をよぉーく見てみ?」


 不機嫌顔のオネエに、愛用の手鏡を渡す。彼(彼女?)は鏡の中の自分を見ると、予想通り固まってしまった。


「……んまあ! アタシってば、何て美しい顔なのかしらっ‼︎」

「顔じゃねーよ! もっと他に見るトコあんだろ!」

「何よコレ……色も耳も中途半端だわ……」


 マジマジと鏡を見つめるオネエ。

 うん、私も初めて自分の髪と耳を見た時はショックだったから、気持ちはよく分かるよ。


「そういえば、泉はどうなったッスか?」

「ああ、そーだった。――おお! 水盆が満タンどころか溢れてるよ……美味しそう」

「それは飲んじゃ駄目ッスよ!」


 壁の隙間から外を覗いてみると、まだ雪は降っているものの、吹雪は収まったようだ。

 割れた窓から差し込む光も、幾分か明るくなっていた。


「原理はよく分かんないけど、聖域を回復させたら白者が生まれたって事は……」

「ちょっとアンタ達! さっきからアタシの存在忘れてない⁉︎」

「うん、お母様って呼んでいいよ」

「どうしてそうなるのよ⁉︎」

「同じ名前が二人とか紛らわしいし、君は今日からサブね。ハイ、決定。さあ帰ろう」

「何勝手に人の名前決めてくれちゃってんのよっ。アンタ何様のつもり⁉︎」

「白者様だよ」

「そもそも白者が二人とかあり得ないわ。アンタ、一体何者なの?」

「いや、だから白者だってば」

「話がちっとも前に進んでないッスね……」


 どうやらサブは、白者が複数という事態に納得がいかないらしい。初めから世界の常識を知っているというのも考え物だ。


「んもう、別に白者が二人でもいいじゃん。名前が気に入らないんだったら『白者二号』に改名してあげてもいいよ?」

「何でアタシがワガママな子みたいになっちゃってるワケ? アンタが存在してる理由を知りたいだけよ!」

「あ、それ、アッシも知りたいッス。白者様って、なんでオズラルドに降臨したんスか?」


 さて困った。その場しのぎの嘘をついたところで、後々ボロが出ても困るしなぁ。

 均衡が崩れた所為で住む場所を無くし、それでも私を慕って一緒に居てくれるボインちゃん。それから、誕生が遅れた本物の白者……この二人には真実を知る権利があるかも。


「私が存在してる理由は正直に話すよ。でも、何故サブの髪と眼がウ○コ色で、耳の形が中途半端な出来損ないなのかは分からないよ」

「アンタ……確実に喧嘩売ってるわね?」

「ププッ、出来損ない……ウ○コ、プププッ」

「ちょっと、そこのデカ乳小娘! アンタもいい度胸してるわねぇ?」

「アッシは小娘じゃないッス。シャトビエンネっていう、可愛い名前があるッス」


 自分で可愛いとか言っちゃうんだ……。そして、デカ乳なのは認めちゃうんだ……。


「ぶぇっくしゅ! うう、寒っ。話をするのはいいんだけどさぁー、ちょっと場所変えね?」


 天候が緩和されたとはいえ、気温が低い事に変わりは無い。


「王都なら暖かいッスし、報告も兼ねて王宮に戻るッスか?」

「うーん、内容が内容だしなぁ……念の為に人が居ない所で話したいんだよねぇ」


 魔法地図を見ながら、良さげな場所を探す。


「あら、ここならいいんじゃない? 王都の近くだけど、人里からも離れてるし」


 サブが示したのは森に囲まれた平地。拡大して見てみると、そこは大きな建物の跡地みたいな場所だった。

 でも、最寄りの教会が王都かぁ。目的の場所まで歩くとなると、結構な時間が掛かってしまう。


「教会を経由すると何かと面倒だし、転移魔法使う?」

「賛成ッス! アッシ、もうクタクタで歩きたくないッス」

「あーら、まだ若いのに情けないわねぇ。その胸にぶら下げてる脂肪が重過ぎるんじゃないのぉー?」

「うるさいッス! ははーん、さてはこの胸が羨ましいんスね?」

「ふん、誰が羨ましいもんですか。小娘のクセに、生意気な物持ってるからよ」

「ほら、やっぱ羨ましいんスねー」

「お黙りっ」


 はぁー、こいつ等はあまり相性が良くないらしい。こんな寒い場所とは、早くおさらばしたいのに……喧嘩なら後でやってくれ。


「……おーい、そろそろ行くよー」


 ギャーギャー(うるさ)く言い争っている彼等に、私の声は届かないらしい。

 もう勝手に転移させてしまおう。


『初めてのぉー(転移魔法ぉー)

上手くいくかなぁー[不安だぁー]

失敗したらぁー ゴメンねぇー』


「ちょっと! なんて不吉な歌なの⁉︎」

「初めてって……ホントに大丈夫なんスか⁉︎」

「さあ? 転移魔法って、失敗したらどうなるんだろーねー?」

「「イーーヤァーーーー‼︎」」


 私達の足元に青い魔法陣が浮かび上がる。さて、どうなるかなー。



――結果、上手くいった……と思う。


「ううっ、思いっきりお尻打ったッス……」

「ローブが土まみれになっちゃったじゃない! 転移先が空中とかあり得ないわっ」


 無事に目的地には着いた。ただしサブの言う通り、私達は地上から2メートル程離れた地点に着地したようだ。

 不意を突かれた二人は普通に落下したみたいだけど、私は浮遊魔法で事無きを得た。


「ま、雲の上じゃなくて良かったんじゃね?」


 浮遊魔法でフヨフヨ飛びながら答える。これだけ頻繁に使っているのに、浮遊だけは一向に上達する気配が無い。


「半分失敗しておきながら、このふてぶてしい態度……アンタ、本当に白者なの?」

「白者様の魔法は、信用すると痛い目に遭うッス……」

「失礼だなぁー。結果良ければ全て良しって言葉を知らないの?」

「いや、結果も良くないッスよ。ここの異常な気候だって……」

「そういえば、北国なのに異様に蒸し暑いわね。もしかして……」

「そ。白者様の魔法ッス」

「アンタ! セルフィーンを破壊するつもり⁉︎」

「む、破壊とか人聞きの悪い。雪をなんとかしてくれって言われたから助けてあげたのに、誰も褒めてくれないし」

「「当たり前でしょ(ッス)!」」


 むぅー、この二人は仲が良いんだか悪いんだか。


「まぁーそれはいいとして、サッサと話を始めるよ。長くなりそうだし、適当に座って聞いて」

「なんか、上手い具合にはぐらかされた気がするわ」


 彼等はブツクサ文句を言いつつ、各々(おのおの)瓦礫の上に腰掛ける。

 ここいら一帯は、過去に大きな屋敷が一軒建っていたようだ。現在は土台部分と家具の残骸しか残っていないけど、敷地はかなり広い。

 見晴らしもいいし、これなら誰かが近付いてきてもすぐ気付けるだろう。


「んじゃ、始めるねー」


 念には念を入れて、防音魔法を施してから話し始める。


「先ず、私がこの世界に来たのは――」


 白者としての私が生まれた経緯、魂の界渡りや地球という異世界の存在……この世界の人には信じ難い事ばかりだとは思ったが、二人とも最後まで黙って聞いてくれた。

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