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リアルRPG  作者: 龍華ぷろじぇくと
第二ステージ 幻想の現実
22/44

初めての魔法?

「なんだあれ?」


 人の倍近くある巨体。石のように握られた拳。

 首の無い頭に岩のように角ばった体。

 そんな異様な生物が足音を響かせこちらにやってくる。


 現存する生物で言えばゴリラが近いだろうか?

 むしろ三分間しか活動できない某巨大化ヒーローにでてきたジャ○ラという怪獣か?

 それとも丸いボールを投げて君に決めたとか言われてでてくるモンスターを戦わせるゲームにでてくる○ーリキーみたいなヤツだろうか?


「ありゃ一撃喰らったら即死だな。今度はかすっても助かんねーかも知れねぇぞ雄一」


「確かに……って止めてくれよ冗談でも、荷車引くヤツがいなきゃ僕らも死ぬからな」


「そりゃそうだ。意地でも死ねないな」


 ショートソードを引き抜き荷車をその場に止める。


「啓介、暦、ここで待っててくれ。それと警戒は怠らないように、ヤバいと思ったら思いっきり叫ぶんだ」


 それだけ言って俺は化け物退治に向かう。

 隣にいたバッタとナスカはすでに自分の武器を手にして戦闘体勢に入っている。

 バッタは近づくのは危険と判断したのだろう。

 相手に向けてボウガンを構える。

 ナスカは鞘に入った刀の柄を右手で握り、体を低くする。


「不安だから一つ言っとくわ、遠距離攻撃は味方に当たらないよう気をつけて」


 バッタがコクリと頷くと射程距離に入ったらしい。

 即座に第一射を放っていた。

 200メートル以上離れた敵にプスリと刺さる。


 獣の咆哮。怒った化け物は速度を上げてこちらに向かってくる。

 バッタはその間にも何本も矢を射る。

 矢だって買わないといけないはずなのだが、一体いくら持っているのだろう。心配になるほど連射していた。


「まるで弁慶の仁王立ちね」


 無数の矢を受けてすら突撃してくる化け物に、毒付きながら俺とナスカは互いに頷く。


「私右がいいな」


「じゃ、左だ」


 互いに宣言して走り出す。

 化け物は向かってくる二人に戸惑いながら俺を視界に収め、腕を振り上げる。

 ゴォッと繰り出された拳に思わず真横に飛んで避け、その隙にナスカが切り込んだ。


 ゴロンと転んだ拍子にそのまま寝そべったら楽だよな。

 と思ったりもしたが、怠けたりせずに起き上がる。

 いつもの日常ならこんな化け物をどうにかすることなく寝そべったら寝そべったまま昼ぐらいまで眠っているところだ。


 いつもの日課というわけではないが運動は苦手な方なのだ。

 昨日も結構動いたから、体はすでにギシギシと軋みを上げ、筋肉痛という見えない敵に何度も休みたいと思わせられる。


 それでも休まず、戦いさえしているのは……やっぱり彼女が見てくれているから。

 いい格好したいわけじゃないが、ダルさを押し殺してでも仲間を危険に曝さないように俺は頑張っていた。

 俺自身が俺が頑張っていることに驚きを隠せない。

 起き上がった俺は腕を振り戻してナスカに視線を移した化け物の懐に突っ込む。


「刀じゃ斬れないくらい硬いわよ、気をつけて!」


 気合の入った声が俺から漏れた。

 全力で相手の胴に叩き込む。ギィンと腕に痺れが走った。


「硬……」


 再び転がり、振り回してきた両腕のローリングソバットを回避する。

 欠けた剣を投げ捨て懐の杖を取り出す。

 電撃でなんとかならないだろうか?

 いや、これを相手に当てるためにはもう一度懐に潜らないと……二度目は流石に危険だな。

 ……あ、こういうヤツこそあの魔法か!


「ナスカ離れろ! バッタ、誘導頼む!」


 ナスカが何事かという顔をしたが、バッタの方は素早い反応だった。

 化け物から距離を一定に保つように回り込み俺の元へ、その間矢を射ち続けることは忘れない。

 まるで機械のように精密に、化け物の体へ矢束を射ち込んでいく。


 ナスカが納得しない顔で荷車に戻る。

 化け物が俺の横に来たバッタを攻撃対象に認めて近づいてきたのを確認し、俺はベルトにつけたパイナップルを一つ取る。

 安全ピンを引き抜き化け物に向かって投げた。

 バッタと二人、化け物から急いで距離をとる。


 3……2……1……


 バッタを庇うように押し倒す。

 大地を揺るがす爆音とともに降りしきる岩石の塊。

 血などの流動物は無かった。

 ただただ岩のような硬い物体が爆風に巻き上げられ周囲に降り注ぐ。


「な……なんなのよコレッ! 破壊力ありすぎ! ズルでしょ! 反則よ! ゲーム序盤で究極魔法持ってるくらいダメでしょっ!」


 ナスカがあまりの爆発に尻餅をついていた。

 なかば錯乱したように何かを叫んでいる。


『あ、あの……』


「無事かバッタ」


『は、はい。あの、その……』


「ん? ああ、悪いすぐ退く」


 横に転がって起き上がると、バッタも身を起こす。


『あの敵、普通に戦っては絶対に勝てませんね』


 バッタの呟きにドキリとした。

 普通の剣や刀が効かない敵。そんな危険なヤツもいるってことだ。

 最初の街でありながら普通に出現する凶悪な敵。

 ゲームでならまずありえないが、現実世界では当たり前なのだ。


 生息域が分かれていようとそこにいる敵がザコばかりとはかぎらない。

 もし、もしも手榴弾がなかったら、たった半日の間に忘れていた恐怖感が押し寄せてきた気がした。


『さ、こんな場所に長居は無用です、はやく街を目指しましょう』


「あ、ああ。そうだな」


 バッタの言葉に我に返る。

 今は考える時じゃない。

 ゲームを楽しみながら全員無傷、街に辿り着くことを目的に行動するんだ。

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