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リアルRPG  作者: 龍華ぷろじぇくと
第二ステージ 幻想の現実
15/44

初めての告白

 できるだけ彼女の期待に応えられそうな言葉を頭の中に浮かぶ言葉の羅列から慎重に選ぶ。


「すれ違う奴が見てるのは君が可愛いからだろ。俺だって……」


 言ってしまうか? でも、これを言ってしまうとこれからのパーティーが完全に瓦解する可能性もある。

 上手くいけば……いや、やれる。できると思い切る。

 今が虚勢の張り時なんだ。


 ゴクリと喉が鳴った。

 たった一言の言葉なのに俺の口はそれを口にすることを躊躇う。

 なぜなら、それは生まれて初めて女の子相手に言う告白。

 どうなるのか俺にも誰にもわからない。


 でも、今の俺は勇者。そうゲームの主人公だ。

 選んだ選択肢を今、答える。それだけだから……

 主人公に、なるんだっ。


「俺だって、君みたいな可愛い娘から告白されたら二つ返事でオッケーするぜ」


 バッタが目を見開いて驚いた。

 今、俺の口から放たれた言葉を一言一言吟味しているのだろうか?

 少しずつ顔が赤くなっていく気がする。


「…………」


「…………」


 すごい気まずい空気になった。

 後悔先に立たず。リセットができるなら迷わず押していただろう。


「な……なんてな」


 取り繕うように言って換金屋のカウンターにIDを見せて換金を開始する。

 黒服はIDを確認すると奥に引っ込んで行き、小銭と紙幣を手にしてやってきた。


「では、カイザーマウス討伐金2300L他140L、計2440Lです。お確かめください」


 黒服から資金を受け取った俺は、さっそく病院に向かおうとバッタに振り向く。

 目が合った瞬間、顔を赤らめた真剣な視線で射抜かれた。


「環架……さん」


「な、なんだよ?」


「その……つ……つ……」


 つ? 【す】なら好きだと言われるのかと身構えてしまうが、つ……では何を言いたいのか良く分からない。

 ぐっと、目を瞑り、言葉を押し出すように身を縮め、ありったけの声でバッタは俺に向かって胸の内の言葉を吐き出した。


「付き合ってくださいっ!」


 辺り憚らない声に周囲にいた一般人が何事かと振り向いてくる。

 思考が停止するというのはこういうことをいうのだろうか?

 あまりに突然な告白に、こうなる可能性を夢見ていたにもかかわらず。言葉も何も出てこない。


 キャラになりきろうにも肝心な時に言葉は形を成さなかった。

 目を瞑ったままのバッタに、俺は必死に口を動かす。

 オッケーと、一言言えればいい。たった一言。


 それで俺は人生初めての彼女が出来るし、きっと全てが上手く行く。

 一言なのだ。たった一言。付き合うと言えば……

 言葉の返せない俺に、バッタはゆっくりと不安そうな顔で目を開く。


「ご……ごめんなさいっ」


 まるで自分がとんでもなく失礼なことを言ってしまったとでも言うように謝ると、バッタは慌てるように踵を返して走り出す。

 ダメだ……ダメだ、行くなっ!


 とっさに、本当にとっさだった。

 無意識に体が動いた。

 このイベントだけは……いいや、この現実だけは逃しちゃいけないと、俺は思考よりも身体が先に動いていた。


 瞳に溜まった涙が振り返り際にこぼれる。

 走り去ろうとしたバッタの腕を、俺は予備動作もなしに掴み取っていた。

 掴んだことに気づいた俺は離すまいと、離してはいけないと、これが最後のチャンスだと、力いっぱい引き寄せる。


 注目の的になっていることなど、その時の俺には関係なかった。

 まるで自分が自分ではなく本当にゲームのキャラクターになったかのように、バッタを抱き寄せる。


「あ……」


 身を強張らせた体が俺の胸に飛び込んでくる。

 驚いたような、安心したような声が漏れた。

 掠れる声で俺が呟く……


「一生、離してやらないぞ……それでもいいのかよ?」


 逃がしてはやらないとバッタをギュッと抱きしめる。

 汗の臭いとともに甘く愛しい匂いが鼻孔をくすぐる。


「……いい」


 ドクンッと心臓が鳴った。

 まるでバイクのエンジンをかけたように次第に心音が早くなっていく。

 首にかけた俺の腕に手を這わせ、きゅっと軽く握ってくるバッタに、思わずこの場でキスしてそのまま襲ってしまいたい衝動が湧き上がる。


 バッタも思いは一緒だったのだろうか?

 潤んだ瞳で俺を見上げ、そっと瞳を閉じて小さくふっくらとした唇を見せ付けるように差し出してくる。


 おおっ……


 どこからともなく溜め息のような音が漏れた。

 急激に情熱が冷める。

 熱くなっていて二人だけの世界を作っていたが、よくよく気が付けば周囲には野次馬と化したプレイヤー達。

 気が付いてしまえばキスなど出来る状況じゃなくなっていた。


「あ、あの……?」


 焦れたように瞳を開いたバッタ。

 俺の視線が自分から外れていることに気づいて自分も視線を周囲に向ける。

 カァッと耳まで真っ赤になって即座に俺を突き飛ばすように距離をとった。


「あわ、あわわっ!?」


 人間、真に慌てた時は本当に両手を振りながら周囲にどうしようどうしようというジェスチャーをしてしまうらしい。

 最後まで見せろーとか野次を飛ばしてくるプレイヤー達に慌てるバッタを見ながら、自分の行動力と起こった結果の嬉しさに、知らず笑みをこぼしてしまう俺がいた。

 久我山環架

装備:ショートソード、皮の鎧、皮のベルト

所持アイテム:火炎の杖、氷結の杖、雷鳴の杖

魔法:爆裂魔法(手榴弾)

所持金:3420L


 保科雄一

クラス:重戦士

状態:重傷

装備:錆びた斧、壊れた鎧

所持アイテム:火炎の杖、氷結の杖、雷鳴の杖

所持金:400L


 バッタ

クラス:マルチウエポン

装備:ナイフ×2、臭いロングソード、小型のボウガン、ショートソード、タンクトップ

所持アイテム:バッタのキグルミ、火炎の杖、氷結の杖、雷鳴の杖

       組み立て式・鉄塊、ハリセン、着替え

所持金:3040L + 2300L +770 = 6110L

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