表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リアルRPG  作者: 龍華ぷろじぇくと
第一ステージ 初めての冒険
12/44

初めてのダンジョン、そしてボス戦へ

 町を出た俺達は、本の地図を頼りにフィールドを探索した。

 途中何体かスライムがでたが、魔法の杖で撃退した。

 野犬や、他の魔物には出会わなかった。


 運が良かったのか、それとも別の要因でもあったのか。

 とにかく、大した苦労もなく目的の場所に着く。

 そこには、洞窟があった。

 人が五人位同時に入れる広さと二メートル弱の高さを持つ洞窟だ。


「中……暗いな」


「松明買えばよかったな」


 松明は道具屋で20Lで売っているらしい。


「いいよ、僕が火炎の杖を使うから。そのくらいは役に立つだろ?」


「ああ」


 答えて思う。なんだ? 今の皮肉めいた言葉?

 雄一のヤツ、一応、役に立ってない自覚はあるのだろうか?


「ほら、行こう」


 雄一に促され、俺たちは洞窟に入っていく。

 にしても、雄一の今の言葉、何か嫌な言葉だった。

 まるで、そのまま思いつめて自殺でもしてしまいそうな雰囲気がしたんだ。気のせいだと思いたいけど。


 光の差し込むことのない暗い洞窟を、ただひたすらに歩いていく。

 所々、地下水だろうか? ピチョンピチョンと雫の垂れる音がした。

 洞窟は一本道で、魔物の類は全く居なかった。中程までやってくると、ちょっと怖くなったのだろうか? バッタが俺の腕に寄り添ってきた。


「不安か?」


『すいません……』


 弱弱しい声で謝るバッタに、思わず苦笑する。


『私、暗いところ苦手で』


 喋ってないと不安なのだろうか?

 先行する雄一に聞こえはしない程度だが、珍しいくらいよくしゃべるな。と思った。

 女性が俺を頼りにしてくれているということだけでなんだかテンションが上がってくる。


 単純だなと思いながらも、やはり、嬉しいことに変わりはない。

 できるなら、バッタのキグルミを脱いでから密着してほしいところだ。

 乾いた血糊がちょっと不気味なんだよな。


『悲鳴上げないようにがんばってるんですけど、さっきから水滴の音してるし。怖くて……』


 中身が女の子なのだから仕方ないのかな? と思ってみたりもしたが、美織早百合なら逆に先頭切って歩くかもしれないと思い、バッタが守ってあげたくなる型の女の子でよかった。とよくわからない安堵をする俺。

 少なからずバッタのことが気になっているのは自分でも分かってしまっていた。


「ん?」


 先を歩いていた雄一が立ち止まる。

 どうしたのかと目を凝らして前を見てみると、無数の赤い何かが光を灯した。


「敵かっ!?」


「洞窟でこのシュチュエーションは蝙蝠だ! 皆伏せろ!」


 バッタの腕を引っ張り強引に座らせる。

 頭を抱え込み庇うように抱き寄せる。

 狙ってやったことじゃなかった。つい、体が勝手に動いたのだ。

 蝙蝠らしき何かが頭上を通り過ぎたのを確認した後、我に返ってその事実に気づく。


 ちょっと、いや、かなり焦った。

 いくらとっさだったとはいえこんなことして、俺はバッタに嫌われるんじゃないだろうかと、慌ててバッタから飛び離れる。


「わ、悪い、その……」


 バッタは首を横に振り、俺の口を手で塞ぐ。

 何も言わなくても分かってる。ということだろうか?


「二人とも、こっからは用心してくれ、さっきみたいに何かいるかもだし」


 雄一に頷き返し、俺は歩きを再会する。

 雄一もそれを確認して歩き出す。

 が、いくらもしないうちに、雄一が見ていないのを確認したからか、バッタが皮の鎧の裾を掴んできた。まだ怖いらしい。


「しっかし、魔物ってどうやって作ったんだろうね? 野犬はともかくスライムは絶対作ってるはずだよ」


「マジに魔界から呼び出してたりしてな」


「あはは、さすがに現実に魔界は存在しないよ環架」


「だ、だよな。やっぱ科学か?」


 ちょっとくらい同意してくれた方が話し弾んだのに、変なところで現実的だなこいつ。


「液体金属で出来たロボット? 未来からお前を殺しにやってきたってかい? 現実的じゃないよ。ないけど……一番しっくりくるかも」


 雄一とムダ話していると、ようやく奥に着いたらしい。巨大な大空洞がぽっかりと広がっていた。

 どうやら敵は殆どでないようだ。

 蝙蝠とも戦いにはならなかったし。


「宝箱があるだけ……にしては大きすぎるな」


 呟いた瞬間、一瞬にして空洞内が明るくなった。

 突然現れた光源に、思わず目を瞑ってしまう。

 しばらくして、ようやく目が慣れてくると、天井にあるライトの束を見つけた。


「人工物?」


 そして、大空洞の奥にある扉も目に入る。


『これって……』


「ああ、予想通りならボス戦だ。戦いやすいように光が灯ってるんだろうな。んでここは俺らがその光に慣れるための部屋。なかなかプレイヤーに優しい親切設計だ」


 明るくなったのでバッタが俺から離れる。

 少し物寂しかったが、後ろ髪を引かれながらもなんでもない風を装った。

 杖の炎を消して、雄一も近くにやってきた。


「どうする? 開ける?」


「当たり前だろ? そのために来たんだし……ん?」


 ドアを開けようとして、鉛のように重いことに気づく。

 ぐっと力を入れて押し開けようとするが、鍵が掛かったように動かなかった。


「待って環架、中から何か聞こえる」


 雄一に言われて耳を澄ます。

 聞こえたのは幾人かの人間の声。それも絶望の悲鳴だった。


「なんだよ……これ?」


『一グループが戦っている間は別グループは入れないんです。……きっと』


 耳元で聞こえた声にビクリとした。バッタの声は妙に沈んでいた。


「じゃあ、外から助けることも、中から逃げることも出来ない?」


『はい』


 ゲームの世界でもボス戦は通常戦闘と違い逃げることが出来ない。

 そういったことを再現しているのだろうか?

 ということは一度倒したボスでも違うチーム相手なら再び出てきたりするのか?


 悲鳴が……やんだ。

 カチャリと鍵の外れる音がする。

 嫌でも背筋を戦慄が走り抜けるのが分かった。


「い、行く……んだよな環架?」


「こ、ここまで来たらな……」


 その場の全員が扉を開くことを拒絶していた。


「ひ、開かないのか?」


 青い顔で雄一が促してくる。

 開こうと思うのだが、扉の取っ手を握った手は震えるだけで動かない。

 そればかりか、取っ手を掴んだ腕はさらに震えを増し、目で見て分かるほどにガクガクと震えていた。


 冷や汗は滝のように溢れ、手のひらは汗ばむを通り越しまるで掌全体から流水しているようだった。

 背筋も顔もすごい汗だ。

 そのまま倒れてしまいそうなほど血液が頭から下がっていくのが自分でも分かった。


 開けたら死ぬ。

 頭の中でそのことだけが嫌にはっきりと浮かぶ。

 虫の知らせ? 違う。恐怖と想像が生み出した確信だ。


 取っ手にちょっと力を入れた瞬間、バックドラフトのように目の前に野犬の大きく開かれた口が迫る記憶や、病院の前に居並ぶ死傷者が脳裏に浮かぶ。

 このままではマズいと、思わず深呼吸をして自分を落ち着ける。

 一度取っ手から腕を放して右手に人を書いて飲む動作をしても、まだ全身が震えていた。


「わ、悪い、ちょっと、ちょっと待ってくれ」


「あ、ああ。なんなら帰ろうか?」


 雄一の心配そうな声に、俺は何度も深呼吸をして自分を落ち着ける。


「いや、大丈夫……」


 半ば意地もあった。せっかくここまで来たのに。という思い。

 英雄を演じると決めたのに、二人の前で格好悪い状態は見せられない。

 そんな思いに突き動かされるように、自分の頬を力いっぱい張った。


 耳から脳髄を揺らす衝撃にクラッと来たが、なんとか体の震えは止まってくれた。

 再び取っ手を掴む。

 まだ多少恐怖はあったが、迷うことなく俺は扉を開いた。

 三人揃ってドアの内側に入り、そこにあった地獄に、戦慄した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ