第8話 変わらない夢、変わった二人
私の考えた設定を元にAIが考えた話になります。
・タイトル、あらすじ、タグ、投稿ルールなどもすべてAIまかせ
・設定も面白くなるならば変えて良い
との条件で書きなおしました。
ご興味があれば、ご一読ください。
↓私が自分で書いた方の話はこちら
【逃亡王子の放浪記 ~世界の果てを見に行く方法~】
https://ncode.syosetu.com/n2929ms/
雪が解け、草木が芽吹き、やがて暑い夏が訪れた。
季節は何度も巡った。
屋敷の裏庭にあった雪は、春になると泥に変わり、夏には青々とした草が生い茂った。秋には木々が色づき、冬になると再び白い雪が地面を覆った。
その繰り返しの中で、二人は少しずつ成長していった。
そして、三年が過ぎた。
*
「もう少し右」
「これくらい?」
「行き過ぎ。左」
「こっち?」
「今度は行き過ぎ」
「セイラス!」
屋敷の裏庭に、ノエルの声が響いた。
その目の前では、小さな木箱が宙に浮いている。
箱の中には、石が十個ほど入っていた。
ノエルは両手を前へ伸ばし、箱を操っていた。箱は地面から腰の高さまで浮き、ゆっくりと左右へ移動している。
「そもそも、どうして私がこんなことをしてるの?」
「訓練だから」
「何の?」
「荷物を運ぶ訓練」
「普通に持てばいいじゃない!」
「旅をするなら、荷物を運ぶ機会は多いよ。重い荷物を浮かせられれば、移動が楽になる」
「じゃあ、セイラスが持てばいいでしょ!」
「僕は持てないから」
セイラスは悪びれずに答えた。
十歳になったセイラスは、相変わらず細身だった。
背丈は少し伸びたものの、腕も脚も細く、重い物を長時間持ち運ぶのは苦手だった。庭の隅に置かれた薪の束を持ち上げようとして、途中で諦めたこともある。
その一方で、ノエルは以前よりもずっと力強くなっていた。
青かった髪は肩の下まで伸び、背丈も伸びた。以前は両手で抱えなければならなかった木箱を、今では片手で持ち上げられる。
もちろん、普通の人間としての力だけではない。
ノエルの異能は、三年間の訓練で大きく成長していた。
「もう少し高く上げてみて」
「これ以上?」
「うん」
「落ちても知らないからね」
「落とさないように訓練してるんだよ」
「……本当に口が達者になったよね」
ノエルは小さく息を吐いた。
そして、両手を持ち上げる。
木箱が上昇した。
頭の高さを越え、屋敷の二階の窓に届きそうな位置まで浮かぶ。
「そのまま止めて」
「止めてる!」
「少し揺れてるよ」
「揺れてない!」
木箱が大きく傾いた。
中の石が一つ、箱の縁から転がり落ちる。
セイラスの頭上へ向かって、石が落ちてきた。
ノエルが慌てて手を振る。
すると、石の落下が急に遅くなった。
地面まであとわずかというところで、石が空中に静止する。
「……危なかった」
ノエルは額の汗を拭った。
セイラスは石を拾い上げる。
「今のはよかった」
「どこが?」
「落ちてくる石の重さを変えて、勢いを殺した」
「とっさだったけど」
「とっさにできるのが大事なんだよ」
セイラスは石を箱に戻した。
「もう一度やろう」
「休憩!」
「まだ始めてから三十分しか経ってないよ」
「三十分もやったの!」
「じゃあ、あと三十分」
「減ってない!」
ノエルの抗議が、冬の庭に響いた。
*
昼食の後は、図書室で勉強の時間だった。
窓際の机には、地図と何冊もの本が広げられている。
セイラスは椅子に座り、羽根ペンを動かしていた。
その隣では、ノエルが地図を覗き込んでいる。
「ここがエルランド王国?」
「そう」
「思っていたより小さいね」
「人間の住む地域全体から見れば、そうでもないよ」
セイラスは地図の上に指を置いた。
「この大陸には、長く続いている大国が三つある。エルランド王国も、その一つ」
「ほかの国は?」
「もっと小さな国がたくさんあるよ。大きな国に併合されたり、魔物に領土を奪われたりして、地図から消えてしまった国もある」
「国がなくなるの?」
「うん」
「どうして?」
「戦争に負けたり、食べ物が足りなくなったり。理由はいろいろだね」
セイラスは別の地図を重ねた。
そこには、百五十年ほど前の人間の生息圏が描かれている。
現在の地図と比べると、その差は一目瞭然だった。
かつて人間が暮らしていた土地の一部は、今では魔物の領域になっている。
「この辺りには、昔、人間の町があったらしい」
「今は?」
「もうない」
「魔物に滅ぼされたの?」
「詳しいことは分からない。でも、そういう場所はほかにもある」
ノエルは地図を見つめた。
「じゃあ、私たちが旅をしている間にも、人間の町がなくなるかもしれないんだね」
「そうだね」
「……」
「だからこそ、知っておきたいんだ」
セイラスは羽根ペンを置いた。
「どこに町があって、どんな人たちが暮らしていて、何が失われようとしているのか」
「旅行記に書くため?」
「それもある」
「それ以外には?」
「いつか、僕たちが歩いた場所を誰かが歩くかもしれないから」
セイラスは地図を畳んだ。
「僕たちが何を見たのか、どこに何があったのか。それを残しておけば、次の誰かが役立てられるかもしれない」
「……うん」
ノエルは頷いた。
それから、机の端に置かれた一冊の本を手に取った。
「これは?」
「レナードの旅行記」
「まだ読んでるんだ」
「何度読んでも、新しい発見があるからね」
セイラスは本を受け取った。
表紙はすっかり擦り切れ、何度も開かれたページの端には小さな折り目がついている。
「レナードは、魔物の領域の近くまで行ったんだよね」
「そう。人間の町が途切れた先までね」
「その先は?」
「記録がない」
「行かなかったのかな」
「行けなかったのかもしれないし、行ったけれど書かなかったのかもしれない」
「じゃあ、どうして世界の果てまで行こうと思ったんだろう」
セイラスは少し考えた。
「さあ。でも、僕も知りたい」
その言葉を聞いて、ノエルは窓の外を見た。
屋敷を囲む塀の向こうには、まだ知らない世界が広がっている。
三年前、二人はその外へ出たいと約束した。
その約束は、今も変わっていない。
*
夕方。
セイラスは一人で書庫にいた。
高い本棚の間を歩きながら、目的の本を探している。
母の残した手紙を読んでから、彼は以前よりも頻繁に書庫へ通うようになった。
地理書や歴史書だけではない。
古い報告書、各地の記録、魔物の生態についてまとめられた資料。
読めるものは、できる限り読んだ。
しかし、調べれば調べるほど、知らないことが増えていく。
書物によって記述が違うこともあった。
ある本では安全とされている街道が、別の本では危険な道として紹介されている。
すでに滅びた町の名前が、現在の地図にも残っていることがある。
百年以上前の記録では、今では見られない動植物が当たり前のように登場する。
書物は便利だ。
けれど、書物だけでは分からないことも多い。
「……やっぱり、行くしかないか」
セイラスは呟いた。
そのとき、背後から声がした。
「何が?」
振り返ると、ノエルが立っていた。
「まだ勉強してたの?」
「ノエルこそ、訓練は終わったの?」
「終わったよ。今日はもう動きたくない」
「それは困ったね」
「何が?」
「旅をするには体力が必要だから」
「セイラスが言う?」
「僕は頭脳担当だから」
「自分で言うんだ……」
ノエルは呆れたように肩を落とした。
セイラスは本を棚へ戻した。
「でも、そろそろ次の段階に進みたいんだ」
「次の段階?」
「屋敷を出る方法を考えるだけじゃなくて、実際に出るための準備をしたい」
ノエルの表情が変わった。
「出られそうなの?」
「まだ分からない」
「じゃあ、何をするの?」
「まずは、この屋敷について調べる」
「屋敷?」
「うん。どこに何があるのか。使われていない部屋はどこか。外へつながる道があるのか」
「そんなもの、あるのかな」
「なければ、別の方法を考える」
セイラスは書庫の奥へ目を向けた。
「母上は、この屋敷のことを僕たちよりずっとよく知っていたはずだから」
エリアが残した書物には、まだ読んでいないものがある。
母の書斎だけでなく、屋敷の各所にも古い記録や資料が残されているはずだった。
そして、あの手紙。
世界を自分の目で見てきなさい。
母はそう書き残した。
ならば、何か手がかりを残しているのかもしれない。
「明日から、屋敷の中を調べよう」
「分かった」
ノエルは頷いた。
「私も手伝う」
「頼りにしてるよ」
「その代わり、明日の訓練は短くしてね」
「それは別の話」
「セイラス!」
書庫に二人の声が響いた。
窓の外では、日が沈み始めていた。
屋敷の壁に、長い影が伸びている。
三年前には、ただ大きく、閉ざされた場所にしか見えなかった屋敷。
けれど今のセイラスには、まだ知らない場所が残された、一つの探索対象に見えていた。
そして、その奥には。
母が残した、まだ見つけていないものがあるかもしれなかった。




