第7話 世界の果てを記した男
私の考えた設定を元にAIが考えた話になります。
・タイトル、あらすじ、タグ、投稿ルールなどもすべてAIまかせ
・設定も面白くなるならば変えて良い
との条件で書きなおしました。
ご興味があれば、ご一読ください。
↓私が自分で書いた方の話はこちら
【逃亡王子の放浪記 ~世界の果てを見に行く方法~】
https://ncode.syosetu.com/n2929ms/
翌日の午後。
セイラスは母の書斎にいた。
机の上には、昨日見つけた手紙が置かれている。
その隣には、何冊もの旅行記が積み重なっていた。
窓の外では雪が溶け始めている。
屋根から落ちた雫が、窓枠を伝って地面へ落ちた。
「何をしてるの?」
扉の向こうからノエルが顔を出した。
「調べもの」
「何を?」
「世界の果て」
ノエルは首を傾げた。
「世界の果てって、どこにあるの?」
「それを調べてるんだよ」
「本に書いてある?」
「書いてあるものもあるし、書いていないものもある」
セイラスは机の上の本を一冊持ち上げた。
表紙には、荒野の向こうにそびえる山々が描かれている。
題名は『北方辺境紀行』。
著者は、レナード。
「この人が書いた本?」
「そう」
セイラスは表紙を指でなぞった。
「母上が集めていた旅行記の中でも、特に好きだった人なんだ」
「どんな人?」
「冒険家。いろんな国を旅して、見たものを本に残した人」
「すごいね」
「うん」
セイラスは本を開いた。
最初のページには、短い文章が記されていた。
『知らない場所へ行くことは、知らない自分に出会うことでもある』
その下には、レナードの名前と、旅を始めた年が書かれている。
今から、およそ九十年前。
「ずいぶん昔の人なんだね」
「そうだね」
「もう死んじゃったのかな」
「分からない」
セイラスはページをめくった。
レナードの旅行記には、各地の町や風景が細かく記録されていた。
石造りの建物が並ぶ古都。
大きな河を渡るために造られた橋。
山間の集落で食べたという、香辛料の強い料理。
人々の服装や言葉。
土地によって違う習慣。
そして、魔物の領域に近い土地で見たという、奇妙な植物や巨大な獣の足跡。
セイラスは一つひとつの記述を追った。
知らないものばかりだった。
同じ人間が暮らす国であっても、町が違えば景色も違う。
食べ物も、建物も、生活の仕方も違う。
地図の上ではほんの数センチしか離れていない場所に、まったく別の世界が広がっている。
それが、セイラスには不思議だった。
「ねえ、ノエル」
「何?」
「この本に書いてある町、全部知ってる?」
「知らないよ」
「僕も知らない」
「でも、本に書いてあるんでしょ?」
「うん」
「じゃあ、知ってるんじゃないの?」
セイラスは本を閉じた。
「名前や形を知っているのと、実際に見るのは違うと思う」
「どう違うの?」
「例えば、雪」
「雪?」
「本には、雪は空から降る白いものだって書いてある」
「そうだね」
「でも、雪が降ると音が変わることは、あまり書いていない」
ノエルは窓の外を見た。
雪の残った庭には、風が吹くたびに木々の枝が揺れている。
「音?」
「雪が積もると、足音が小さくなる。遠くの音も聞こえにくくなる。屋根から雪が落ちる音は、思ったより大きい」
「……確かに」
「そういうことを知りたいんだ」
セイラスは旅行記を開き直した。
「その場所へ行かなければ分からないことがある。だから、僕は自分の目で見たい」
ノエルは本の挿絵を眺めた。
そこには、山の麓に広がる町が描かれている。
煙突から煙が上がり、街道には荷車が行き交っていた。
「私も、見てみたい」
「うん」
「この町」
「じゃあ、ここも目的地にしよう」
セイラスは机の上に地図を広げた。
人間の生息圏を描いた地図だった。
王国や都市の名前が書かれ、主要な街道が線で結ばれている。
その外側には、魔物の領域が広がっていた。
さらに向こうには、詳しい地形すら記されていない空白がある。
セイラスはその空白を指でなぞった。
「レナードは、ここへ行ったのかな」
「どこ?」
「この先」
「魔物のいるところ?」
「うん」
セイラスは旅行記の後半を探した。
そこには、魔物の領域に近い辺境の記録があった。
人間の町が途切れ、街道が荒れ、地図に描かれた道が少しずつ頼りなくなっていく。
レナードは、その土地で出会った人々について書いていた。
魔物の襲撃で故郷を失った者。
かつて人間の領域だった土地を知る老人。
危険を承知で、誰も知らない土地を調べようとする探索者。
その記述の最後に、短い一文があった。
『この先に何があるのか、私はまだ知らない』
セイラスはその文章を何度も読み返した。
「……まだ、知らない」
「どうしたの?」
「レナードも、知らないことがあったんだ」
「当たり前じゃない?」
「そうだけど」
セイラスは地図を見つめた。
レナードほど多くの場所を旅した人でも、世界のすべてを知っているわけではない。
ならば、その先へ行くこともできるのではないか。
レナードが見られなかった景色を、自分なら見られるかもしれない。
まだ地図に載っていない場所を、自分の目で確かめられるかもしれない。
「ノエル」
「何?」
「世界の果てって、どこだと思う?」
「分からない」
「僕も分からない」
「じゃあ、どうするの?」
「探すんだよ」
セイラスは地図の空白に指を置いた。
「地図に載っていない場所を見つける。誰も知らない景色を見つける。それで、見たものを本に書く」
「本に?」
「うん。旅行記にするんだ」
「どうして?」
セイラスは少し考えた。
「僕が見たものを、誰かに伝えたいから」
それは、以前から漠然と考えていたことだった。
屋敷の書庫にある本は、どれも誰かが見たものや、調べたものを記録したものだ。
その記録があるから、セイラスは知らない土地のことを知ることができた。
ならば、自分も同じことをしたい。
自分が見た景色を残す。
出会った人々のことを書く。
自分が歩いた道を、次の誰かがたどれるようにする。
「僕が知らないことを、僕の後に生まれた人が知ることができるように」
ノエルはしばらく考えていた。
「じゃあ、私も書く」
「ノエルも?」
「うん。私が見たものも、残したい」
「いいね」
「でも、字がまだ上手に書けない」
「教えるよ」
「約束?」
「約束」
二人は地図を囲んで座った。
まだ、旅立つ方法は分からない。
屋敷の外へ出ることさえ、簡単ではない。
それでも、二人の前には行き先ができていた。
まずは、この国の町へ。
その次は、隣の国へ。
さらに遠くへ。
いつか、人間の領域を越えて、その先へ。
地図の空白を埋めるように、セイラスは指先を動かしていった。
*
夕方。
セイラスが本を棚へ戻していると、ノエルが一冊の旅行記を手に取った。
「ねえ、セイラス」
「何?」
「この人、今も生きているかもしれないんだよね?」
「母上は、そう言っていた」
「会ってみたい?」
セイラスは手を止めた。
「……会ってみたいね」
「どうして?」
「どうして、ここまで旅をしたのか聞きたい。それから、まだ見ていない場所がどこにあるのかも」
「じゃあ、会いに行こうよ」
「うん」
セイラスは笑った。
レナードが今どこにいるのかは分からない。
どんな姿をしているのかも、今も旅を続けているのかも分からない。
けれど、会いたい人が一人増えた。
行ってみたい場所も増えた。
知りたいことも、増え続けている。
窓の外では、夕暮れの光が雪の残る庭を照らしていた。
セイラスは旅行記を胸に抱え、最後にもう一度、地図を振り返った。
人間の領域の外側。
魔物の領域。
そして、その向こうに広がる、誰も知らない世界。
いつか、あの場所へ行く。
そのために、今は学ぼう。
世界を知るための知識を。
世界を歩くための力を。
そして、世界を記録するための言葉を。
セイラスは本を棚に戻した。
旅立ちの日は、まだ遠い。
けれど、少年の目には、もう地図の空白がただの白紙には見えなくなっていた。




