第17話 夜を越えて
私の考えた設定を元にAIが考えた話になります。
・タイトル、あらすじ、タグ、投稿ルールなどもすべてAIまかせ
・設定も面白くなるならば変えて良い
との条件で書きなおしました。
ご興味があれば、ご一読ください。
↓私が自分で書いた方の話はこちら
【逃亡王子の放浪記 ~世界の果てを見に行く方法~】
https://ncode.syosetu.com/n2929ms/
森の中は、夜の冷気に包まれていた。
頭上を覆う枝葉の隙間から、わずかな月明かりが差し込んでいる。足元には木の根や石が転がり、踏み出すたびに枯れ葉が音を立てた。
セイラスは、ノエルの手を引きながら進んでいた。
屋敷を出てから、どれほど歩いただろうか。
振り返れば、木々の向こうに屋敷の灯りがかすかに見える。あの場所では、今も侵入者たちが何かを探しているのだろう。
遠くから、ときおり人の声が聞こえていた。
「……まだ追ってきているね」
ノエルが小声で言った。
「うん。僕たちを見つけるまで、探し続けるつもりなのかもしれない」
「どうして、そこまでしてセイラスを捕まえたいんだろう」
「分からない。でも、僕が王子だということは知っていた」
セイラスは足を止め、木の幹に手をついた。
息が切れていた。
普段の生活で、これほど長い距離を歩いたことはない。ましてや、暗い森の中を荷物を背負って進むなど、想像したことさえなかった。
足は重く、靴の中では指先が痛んでいる。
それでも、ここで休み続けるわけにはいかなかった。
「少しだけ休もう」
ノエルが周囲を見回し、枝の張り出した木の根元を指さした。
「そこなら、道からも見えにくいと思う」
「そうだね」
二人は木の根元に腰を下ろした。
セイラスは鞄を下ろし、中身を確かめた。
水筒が一つ。保存食が少し。着替えと毛布。それから、地図、母の手紙、レナードの旅行記、旅の記録に使うつもりだったノート。
屋敷を出る前に、必要だと思ったものはできる限り詰め込んだ。
しかし、いざ外へ出てみると、持ってきたものが十分なのかどうかさえ分からない。
「水、飲む?」
ノエルが水筒を差し出した。
「ありがとう」
セイラスは水を一口飲んだ。
冷たい水が喉を通っていく。
水筒を返すと、ノエルも少しだけ口をつけた。
「食べ物は、まだある?」
「うん。少しだけね」
「朝まで持つかな」
「……節約すれば、何とかなると思う」
セイラスは保存食を確かめ、鞄へ戻した。
旅に出たら、こうしたことを毎日考えることになるのだろう。
食料の残り。
水の量。
次に休める場所。
そして、どこへ向かうのか。
屋敷にいた頃は、何一つ気にする必要がなかった。
それが今では、二人の命に関わる問題になっている。
「セイラス」
ノエルが声をかけた。
「これから、どこへ行くの?」
セイラスは地図を取り出した。
月明かりでは細かな地名までは読めない。それでも、屋敷の位置と周辺の地形は覚えている。
「まずは、屋敷から離れる。追手がいる以上、街道を使うのは危険だと思う」
「じゃあ、森を進むの?」
「うん。ただ、森の中を適当に歩き続けるわけにもいかない。夜が明けたら、現在地を確かめよう」
「分かった」
ノエルは頷いた。
セイラスは地図を畳んだ。
今は、行き先を決めることよりも、追手から距離を取ることが先だった。
*
休憩を終えた二人は、再び森の中を進み始めた。
しばらくすると、木々の間から細い道が見えてきた。
人が通るために踏み固められた道だった。屋敷の敷地から離れた場所にあるため、普段は使うことがない。
セイラスは道の両側を確かめた。
足跡はあるが、新しいものかどうかまでは判断できない。
「ここを通れば、少しは早く進めそうだね」
「でも、誰かに見つかりやすくならない?」
「そうだね……」
道を進めば、移動は楽になる。
その一方で、追手が同じ道を探す可能性も高い。
セイラスはしばらく考え、道の脇にある斜面を見た。
「この道は避けよう。少し遠回りでも、森の中を進んだ方がいい」
二人は再び木々の間へ入った。
その直後だった。
背後から、かすかな物音が聞こえた。
枝が折れる音。
続いて、誰かが地面を踏みしめる音がした。
セイラスは立ち止まった。
「……ノエル」
「うん。聞こえた」
二人は近くの茂みに身を隠した。
やがて、木々の間に灯りが見えた。
松明だった。
その灯りが、ゆっくりと左右に揺れている。
「この辺りを探せ!」
「道を外れた可能性がある。森の中も調べろ!」
男たちの声が聞こえた。
追手は、すでに森の近くまで来ていた。
セイラスは息を潜めた。
松明の灯りが、少しずつ近づいてくる。
男たちは互いに距離を取り、周囲を調べていた。ときおり剣で草をかき分け、木の根元を確かめている。
そのうちの一人が、二人の隠れている茂みへ近づいてきた。
ノエルがセイラスの袖を握った。
セイラスは、彼女の手にそっと触れた。
まだ、動くな。
声に出さず、目だけで伝える。
男の足音が止まった。
茂みのすぐ向こうに、靴先が見える。
男はしばらく周囲を見回していた。
やがて、別の場所から声がかかった。
「こっちは何もないぞ!」
「分かった。そちらへ回る!」
男は踵を返し、松明を持った仲間の方へ戻っていった。
灯りが遠ざかる。
セイラスは、しばらく動かなかった。
足音が完全に聞こえなくなってから、ようやく息を吐いた。
「……危なかったね」
ノエルが小さく呟いた。
「うん。今の場所で見つかっていたら、逃げ切れなかったかもしれない」
「私の力で、追手を止めることはできるよ」
「分かっている。でも、何人いるか分からない相手と戦うのは危険だ」
セイラスは茂みから出て、周囲を確かめた。
「僕たちの目的は、追手を倒すことじゃない。生きて、ここから離れることだよ」
「……うん」
ノエルは頷いた。
二人は松明の灯りとは反対の方向へ進んだ。
*
それから、どれほど歩いたのか。
森の中を進むうちに、セイラスは自分の服に違和感を覚えた。
胸元に縫い付けられた、小さな金属の飾り。
王家の紋章だった。
普段は目立たないよう、衣服の内側に近い位置に付けられている。けれど、外へ出た今、それは自分が誰であるかを示す印になっていた。
追手は、セイラスが王子だと知っている。
もし、別の人間に見つかった場合も、紋章を見れば正体を知られてしまう。
この先、町へ入ることがあれば、なおさらだった。
セイラスは足を止めた。
「ノエル。少し待って」
「どうしたの?」
セイラスは胸元の飾りに手をかけた。
縫い付けられた糸を引き、紋章を外そうとする。
しかし、急いで縫い付けられたものではない。糸は何重にも通されており、簡単には外れなかった。
「貸して」
ノエルが手を伸ばした。
「大丈夫。自分でできるよ」
セイラスは、もう一度糸を引いた。
やがて、糸が切れ、金属の紋章が服から外れた。
掌に収まるほどの小さな飾りだった。
表面には、王家を象徴する意匠が細かく刻まれている。縁には傷一つなく、月明かりを受けて鈍く光っていた。
セイラスはそれを見つめた。
生まれたときから、自分は王子だった。
王家の血を引く者として、与えられたものがある。
教育も、住む場所も、食事も。
母の残した本を読むことができたのも、この屋敷で多くの知識を身につけられたのも、王族という立場があったからなのかもしれない。
けれど、その立場があるからこそ、自由に外へ出ることもできなかった。
そして今、自分を捕らえようとする者たちがいる。
セイラスは紋章を握りしめた。
「……これがある限り、僕はどこへ行っても王子なんだね」
ノエルは、すぐには答えなかった。
やがて、セイラスの手元を見ながら言った。
「それを外しても、セイラスがセイラスじゃなくなるわけじゃないよ」
セイラスは顔を上げた。
「……そうだね」
「私は、王子だから一緒にいるんじゃないから」
ノエルは、セイラスの目を見た。
「一緒に旅に出ようって約束したから、ここにいるんだよ」
セイラスは、もう一度、掌の紋章を見下ろした。
そして、静かに頷いた。
「ありがとう、ノエル」
彼は紋章を鞄の中へしまおうとした。
しかし、すぐに手を止めた。
この先、誰かに見つかったとき、紋章があれば自分の身元を証明することはできるだろう。
それでも、今は持ち歩かない方がいい。
セイラスは紋章を布で包み、鞄の底へしまった。
捨てることはできなかった。
王家を憎んでいるわけではない。
自分を世話してくれた人々や、母が残してくれたものまで、すべて否定したいわけでもなかった。
ただ、今は王子であることを隠さなければならない。
それが、二人で生き延びるために必要なことだった。
*
やがて、空の色が少しずつ変わり始めた。
木々の向こうが薄い青に染まり、葉の輪郭が見えるようになっている。
夜明けが近かった。
セイラスは、近くの岩に腰を下ろした。
ノエルも隣に座り、鞄から毛布を取り出して二人の肩にかけた。
森の空気は冷たく、湿った土の匂いが漂っている。
鳥の鳴き声が、遠くから聞こえ始めた。
「……朝になったね」
ノエルが言った。
「うん」
「少しは安心できるかな」
「どうだろう。明るくなれば、周囲を確認しやすくなる。でも、僕たちの姿も見つかりやすくなる」
「そっか」
ノエルは毛布の端を握った。
「じゃあ、どうする?」
「まずは水と食料を確かめて、今いる場所を調べよう。それから、屋敷からどれくらい離れたのか考える」
「分かった」
セイラスは鞄を開き、地図を取り出した。
紙の端には、屋敷の位置と近くの道が記されている。
ここから先は、まだ詳しく調べていない地域だった。
けれど、地図の上には道が続いている。
道の先には、町がある。
さらにその向こうには、まだ見たことのない土地が広がっている。
セイラスは地図を畳んだ。
旅に出るための準備は、まだ十分ではなかった。
知識も、体力も、持ち物も足りない。
それでも、ここで立ち止まることはできなかった。
「ノエル」
「何?」
「僕たちは、必ず世界を見に行こう」
ノエルは頷いた。
「うん。約束だからね」
二人は立ち上がった。
夜は、ようやく明けようとしていた。
けれど、追手が諦めたわけではない。
王都からの使者が何を考えているのかも、屋敷で何が起きているのかも、まだ分からない。
それでも、セイラスは前を向いた。
胸元から王家の紋章は消えていた。
彼はもう、王子であることを示す印を表には付けていない。
今のセイラスにあるのは、鞄に詰めたわずかな荷物と、母が残した言葉、そして隣を歩くノエルだけだった。
二人は森の奥へ向かって歩き出した。




