第18話 母が託したもの
私の考えた設定を元にAIが考えた話になります。
・タイトル、あらすじ、タグ、投稿ルールなどもすべてAIまかせ
・設定も面白くなるならば変えて良い
との条件で書きなおしました。
ご興味があれば、ご一読ください。
↓私が自分で書いた方の話はこちら
【逃亡王子の放浪記 ~世界の果てを見に行く方法~】
https://ncode.syosetu.com/n2929ms/
森を抜ける頃には、太陽がすっかり昇っていた。
木々の間から差し込む光は明るく、朝露に濡れた草が風に揺れている。鳥の声があちこちから聞こえ、遠くでは川の流れる音もしていた。
セイラスとノエルは、森に沿って続く道を歩いていた。
昨夜はほとんど眠れていない。
足の痛みは残っていたが、木々に囲まれた場所を抜け、視界の開けた土地へ出られたことで、周囲の様子は確認しやすくなっていた。
「ねえ、セイラス。あれって……」
ノエルが前方を指さした。
緩やかな丘の向こうに、石造りの建物が見えた。
建物の脇には木製の柵が並び、その先には畑が広がっている。荷車が一台、ゆっくりと道を進んでいた。
「人が住んでいるみたいだね」
「うん。地図に載っていた集落かもしれない」
セイラスは鞄から地図を取り出し、現在地を確かめようとした。
しかし、地図に描かれた道と、目の前にある道が完全には一致しない。
森の中を進んでいる間に、想定していた方向から少しずれてしまったのだろう。
「……まずいな。正確な位置が分からない」
「道を間違えちゃった?」
「たぶんね。大きく外れてはいないと思うけど」
セイラスは地図を畳んだ。
昨夜は追手から逃れることを優先したため、進む方向を厳密に確認する余裕がなかった。
地図を読めることと、実際に目的地へたどり着けることは別の話らしい。
「どうする?」
「集落へ行って、道を聞こう。人に見つかる危険はあるけど、何も分からないまま歩き続ける方が危険だ」
「分かった」
二人が集落へ向かおうとした、そのときだった。
「セイラス様」
背後から声がした。
二人は振り返った。
道の脇に、一人の男が立っていた。
年齢は四十代ほどだろうか。地味な色の外套をまとい、手には革の鞄を持っている。
男は二人を見つめていた。
「……ロビン?」
セイラスが呟いた。
男は静かに頭を下げた。
「お久しぶりでございます。セイラス様」
「どうして、ここに……?」
「お二人がこちらへ向かわれると考え、先回りしておりました」
ロビンは、かつて屋敷でセイラスの世話をしていた者の一人だった。
幼い頃から何度も顔を合わせている。屋敷の中で働く人々の中でも、セイラスが安心して言葉を交わせる数少ない相手だった。
もっとも、今は再会を喜んでいる場合ではない。
セイラスは周囲を見回した。
「ロビン。ここに来るまで、誰かに見られなかった?」
「問題ございません。少なくとも、私の後をつけてくる者はいないはずです」
「そう……」
セイラスは、ようやく肩の力を抜いた。
ノエルが二人を見比べている。
「セイラス、この人は?」
「ロビン。屋敷で働いていた人だよ」
「そうなんだ」
ノエルはロビンに向き直った。
「ノエルです。よろしくお願いします」
「こちらこそ。セイラス様をよろしくお願いいたします」
ロビンは丁寧に頭を下げた。
その言葉に、セイラスは眉を寄せた。
「ロビン。僕はもう、屋敷へ戻るつもりはないよ」
「承知しております」
「……それでも、僕をセイラス様と呼ぶんだね」
「私にとって、あなた様がセイラス様であることに変わりはございませんから」
ロビンは、それ以上何も言わなかった。
セイラスも、すぐには言葉を返せなかった。
胸元には、もう王家の紋章はない。
けれど、紋章を外したからといって、これまでの自分が消えるわけではなかった。
「それで、ロビン。どうして僕たちを待っていたの?」
「お渡ししたいものがございます」
ロビンは手にしていた革の鞄を開いた。
中から取り出したのは、一通の封筒だった。
古びた封筒には、見覚えのある筆跡で名前が記されている。
セイラスは、息を止めた。
そこに書かれていたのは、母の名前だった。
「……母さん?」
「エリア様が、私に託されたものです」
ロビンは封筒を両手で差し出した。
「いつかセイラス様が屋敷を離れることがあれば、これをお渡しするように、と」
セイラスは、ゆっくりと封筒を受け取った。
封は切られていない。
表面には、母がよく使っていた飾り文字が見られた。
間違いない。
これは、母の手紙だった。
「……いつから持っていたの?」
「エリア様がお亡くなりになる前です」
「どうして、今まで渡さなかったの?」
「お渡しする時を、エリア様が指定されていたからです」
ロビンは少しだけ視線を落とした。
「『あの子が自分の足で外へ出ようとしたときに』。そう、おっしゃっておりました」
セイラスは封筒を見つめた。
母は、どこまで知っていたのだろう。
自分が屋敷を出ようとすることも。
そのために、ノエルと出会うことも。
あるいは、こうしてロビンと再会することさえ。
母の予言は、未来を決めつけるものではない。
エーテルに残された情報から、起こり得る未来を読み取る。
その仕組みについては、母が残した研究記録で学んだ。
けれど、母自身が何を見て、何を考えていたのか。
今となっては、本人に尋ねることはできない。
セイラスは封筒を鞄にしまった。
「……ありがとう、ロビン」
「いえ」
「それと、もう一つあるのかな?」
ロビンは頷き、鞄からさらに一冊の本を取り出した。
表紙は傷み、背表紙の一部が剥がれかけている。
しかし、そこに記された題名を見た瞬間、セイラスの目が大きく開いた。
「これは……レナードの旅行記?」
「はい。ただし、セイラス様がお持ちのものとは別の本です」
セイラスは本を受け取った。
表紙には、かすれた文字で題名が記されていた。
『未踏地域調査記録』
以前、母の隠された地下室で見つけた本と同じ題名だった。
あの本には、レナードが人間の生活圏の境界を訪れた記録が残されていた。
そして、最後のページには、こう書かれていた。
――この先に何があるのか、私はまだ知らない。
「……続きがあるの?」
「はい。エリア様が保管されていたものです。こちらは、レナードが残した記録の後半に当たります」
セイラスは本を開いた。
紙は黄ばんでいたが、文字は十分に読める。
何枚かの地図が挟まれ、見慣れない地名や地形が書き込まれていた。
人間の生活圏の外縁。
魔物の領域との境界。
そして、地図に記されていない土地についての記録。
セイラスは、ページをめくる手を止めた。
そこには、母の研究記録と似た記述がいくつも見つかった。
人間の集落が失われた場所。
かつて人が暮らしていた痕跡。
魔物の生息域が変化したと考えられる地域。
それらは、ただの旅行記ではなかった。
レナードは旅をしながら、人間の生活圏が縮小していることにも目を向けていたのだ。
「母さんは……この本を読んでいたんだね」
「はい。エリア様は、レナードの記録を大切にされておりました」
ロビンは、セイラスの手元にある本を見つめた。
「その本には、まだ確かめられていないことが多く記されております。ですが、エリア様はおっしゃっていました」
「何て?」
「『地図に記された境界を、世界の終わりだと思ってはならない』と」
セイラスは、顔を上げた。
それは、地下室で見つけた記録にも残されていた言葉だった。
人間が暮らせる土地は、確かに狭くなっている。
魔物の領域は広く、人間が安全に暮らせる場所は限られている。
けれど、それは世界のすべてが分かっているという意味ではない。
人間の生活圏の外側に、何があるのか。
どうして魔物の領域が広がり続けているのか。
その先に、まだ知られていない土地や、人間が生き延びるための手がかりが残されているのか。
答えは、どこにも書かれていなかった。
だからこそ、自分の目で確かめる必要がある。
セイラスは、本を大切に鞄へしまった。
「ロビン。僕は旅に出るよ」
「はい」
「王都へ戻るつもりも、王子として暮らすつもりもない。これから先、何が起きるかは分からないけど……それでも、僕は自分の目で世界を見たい」
ロビンは、しばらくセイラスを見つめていた。
やがて、深く頭を下げた。
「どうか、お元気で」
「……うん」
「ノエルさんも、どうかセイラス様をお願いいたします」
「はい。私も一緒に行きます」
ノエルは、はっきりと答えた。
ロビンは二人に背を向け、来た道を戻ろうとした。
「ロビン!」
セイラスが呼び止めた。
ロビンは振り返った。
「屋敷のみんなは……どうなったの?」
昨夜の襲撃。
自分たちを探していた男たち。
屋敷に残してきた人々のことを、セイラスはまだ何も知らなかった。
ロビンは、すぐには答えなかった。
「私が知る限り、屋敷に残った者たちは無事です。ただ、今後については、私にも分かりません」
「そう……」
「詳しいことをお伝えできず、申し訳ございません」
「いや。教えてくれてありがとう」
セイラスは、もう一度だけ頭を下げた。
ロビンもそれに応じ、今度こそ歩き出した。
やがて、その姿は木々の向こうへ消えていった。
*
「セイラス」
ノエルが呼んだ。
「行こう」
セイラスは頷いた。
目の前には、集落へ続く道がある。
その先には町があり、さらに遠くには、まだ見たことのない土地が広がっている。
鞄の中には、母の手紙とレナードの旅行記があった。
母が何を伝えたかったのか。
レナードが旅の果てに何を見つけたのか。
そのすべてを知るには、まだ時間がかかるだろう。
それでも、今は一歩ずつ進めばいい。
「ノエル。これから先、何があるか分からないよ」
「うん」
「道に迷うこともあるだろうし、食べ物がなくなることもあるかもしれない。危険な場所へ行くことだってあると思う」
「うん」
「それでも、一緒に来てくれる?」
ノエルは、少しも迷わず答えた。
「もちろん」
セイラスは笑みを浮かべた。
「じゃあ、行こう」
二人は並んで歩き出した。
背後には、森と、遠くに広がる屋敷のある土地。
前方には、まだ知らない世界が待っている。
セイラスは、鞄の中にある新しいノートに思いを馳せた。
いつか、この旅で見たものをすべて書き記そう。
美しい景色も、珍しい町も、出会った人々も。
そして、人間が暮らす土地の外側に何があるのかも。
いつか誰かがその記録を読んだとき、自分たちが確かにここを旅したのだと分かるように。
それが、セイラスの望む旅だった。
二人の足音が、朝の道に響いていた。




