第16話 逃走
私の考えた設定を元にAIが考えた話になります。
・タイトル、あらすじ、タグ、投稿ルールなどもすべてAIまかせ
・設定も面白くなるならば変えて良い
との条件で書きなおしました。
ご興味があれば、ご一読ください。
↓私が自分で書いた方の話はこちら
【逃亡王子の放浪記 ~世界の果てを見に行く方法~】
https://ncode.syosetu.com/n2929ms/
廊下の奥から、複数の足音が迫っていた。
セイラスはノエルの手を引き、屋敷の裏手へ続く通路を走った。
壁に掛けられた絵画が傾き、床には割れた花瓶の破片が散らばっている。普段なら静かなはずの屋敷は、怒号と金属音に満ちていた。
「こっちだ!」
セイラスは角を曲がった。
そこには、裏庭へ続く扉がある。
幼い頃から何度も通った場所だった。扉の向こうには小さな庭があり、その先を進めば、以前ノエルと一緒に道具を探した倉庫にたどり着く。
庭を抜ければ、屋敷の正面を通らずに外壁へ向かえるはずだった。
セイラスは扉を押し開けた。
夜の冷気が頬を撫でる。
しかし、庭へ出た二人は、すぐに足を止めた。
庭の向こうに、黒い服を着た男が三人立っていた。
そのうちの一人が、二人の姿を認めると剣を抜いた。
「いたぞ!」
「殿下を確保しろ!」
三人が一斉に駆け出した。
「ノエル!」
「分かってる!」
ノエルが両手を前に突き出した。
先頭の男の足が、地面からわずかに浮き上がった。
「なっ……!」
男の身体が傾く。
続く二人も、突然足元をすくわれたように体勢を崩した。
ノエルは三人の動きを抑え込もうとしていた。
しかし、相手は大人の男たちだ。武器を持ち、身体も鍛えられている。
ノエルの額に汗が浮かんだ。
「セイラス、早く!」
「うん!」
二人は庭を横切った。
背後で男たちが地面に転がる音がした。
だが、すぐに怒声が響く。
「追え! あの娘の力に気をつけろ!」
セイラスは振り返らなかった。
ノエルの能力が強くなっていることは知っている。
物を浮かせるだけでなく、人の動きを妨げることもできる。
けれど、何人もの相手を同時に抑え続けるのは難しい。
何より、ここで戦い続ける理由はなかった。
二人が目指すのは、屋敷の外だ。
*
倉庫の脇を通り抜け、二人は裏手の小道へ出た。
屋敷の外壁に沿って伸びる細い道だった。普段は庭師や荷物を運ぶ使用人が使う程度で、夜になれば人通りもほとんどない。
道の先には、外壁の一部が見える。
その近くには、古い物置が建っていた。
セイラスはそこを目指して走った。
「セイラス、あそこから出られるの?」
「分からない。でも、正門は使えない。ほかに道があるなら、そこを探すしかないよ」
屋敷の外壁には、いくつかの小さな通用口が設けられている。
荷物の搬入や庭の手入れに使われるものだ。
ただし、夜間は施錠されているはずだった。
セイラスが知っている限り、鍵を持っていなければ開けられない。
それでも、確かめる価値はあった。
やがて、物置の陰に小さな扉が見えてきた。
セイラスは取っ手を引いた。
開かない。
「鍵がかかってる……」
扉には古い錠前が取り付けられていた。押しても、引いても、びくともしない。
セイラスは周囲を見回した。
背後からは、追手の足音が近づいている。
「ノエル、開けられる?」
「鍵を?」
「ううん。扉ごと動かせないかな」
ノエルは錠前と扉を見比べた。
「やってみる」
彼女は扉の前に立ち、両手をかざした。
木製の扉が、ぎしりと音を立てた。
蝶番が軋み、錠前が震える。
しかし、扉は開かなかった。
「……だめ。扉だけじゃなくて、壁まで動かしそう」
「壁まで?」
「うん。力をかける場所を間違えると、壊れちゃう」
ノエルは一度、手を下ろした。
扉を丸ごと動かそうとすれば、周囲の壁や建具まで巻き込む恐れがある。狭い場所で大きな力を使うのは危険だった。
セイラスは錠前を観察した。
古い鉄製のものだ。頑丈そうではあるが、特別な仕掛けがあるようには見えない。
「……錠前だけなら?」
「え?」
「扉全体じゃなくて、錠前だけを動かすんだ。固定されている部分から引き離すように」
ノエルは錠前を見た。
「できるかもしれない」
彼女は再び両手をかざした。
今度は、扉ではなく錠前だけに意識を向ける。
金属が小さく震えた。
錠前が扉から浮き上がり、取り付けられていた金具が歪む。
やがて、鈍い音とともに錠前が地面へ落ちた。
「取れた!」
「すごいよ、ノエル!」
「まだ、開くかどうか分からないよ!」
ノエルは息を切らしながら答えた。
セイラスは扉に手をかけ、力を込めた。
ぎい、と軋んだ音が響き、扉が内側へ開いた。
その向こうには、外壁沿いの狭い通路が続いていた。
人ひとりが通れる程度の幅しかない。
それでも、外へつながっている可能性はあった。
「行こう!」
二人は通路へ飛び込んだ。
*
通路は、外壁と倉庫の裏側に挟まれた細い空間だった。
地面には砂利が敷かれ、ところどころに雑草が伸びている。壁の上には夜空が見えるものの、月明かりはほとんど届かない。
セイラスは手探りで進んだ。
少し先に、外へ通じる小さな門が見えた。
しかし、その前には大きな木箱が積まれている。
荷物を一時的に置く場所なのだろう。木箱は門の前を塞ぐように並び、隙間もほとんどなかった。
「また、塞がれてる……」
セイラスが呟いた。
背後から、扉を叩く音が聞こえた。
追手が、先ほどの通用口にたどり着いたのだ。
「この先だ! 通路を調べろ!」
男たちの声が響く。
ノエルは木箱を見た。
「どかせばいいんだよね?」
「でも、音を立てたら気づかれる」
「音を立てずに動かせばいいんでしょう?」
ノエルは木箱に手を向けた。
一つ目の箱が、ゆっくりと浮き上がる。
地面から離れた箱は、ノエルの手の動きに合わせて横へ移動した。
セイラスは門の取っ手を確かめた。
こちらも鍵がかかっていたが、先ほどのように錠前が外側から見える位置に取り付けられている。
「ノエル、あの鍵も頼める?」
「うん!」
ノエルは箱を脇へ移動させ、門の錠前へ意識を向けた。
金属が震え、鍵の部品がわずかにずれる。
やがて、錠前が外れた。
セイラスは取っ手を引いた。
門が開く。
その向こうには、屋敷の外を走る細い道があった。
遠くには森が広がり、木々の間を夜風が吹き抜けている。
セイラスは、門の向こうを見つめた。
いつか、自分の意思でこの屋敷を出る日が来ると思っていた。
母の残した言葉を胸に、ノエルと一緒に旅へ出る。
そうして、世界を自分の目で見るのだと。
けれど、今は違う。
屋敷の中では、まだ戦いが続いている。
自分たちを追う者たちが、すぐそこまで迫っている。
この門を抜けたとしても、追跡が終わるわけではない。
「セイラス?」
ノエルが、そっと声をかけた。
セイラスは彼女を見た。
「……行こう」
「うん」
二人は門をくぐった。
その直後、背後で大きな音が響いた。
通用口が破られたのだ。
「いたぞ! 外へ出た!」
追手の叫び声が夜の空気を切り裂いた。
セイラスはノエルの手を握り、暗い道へ走り出した。
*
屋敷の外は、思っていた以上に暗かった。
月は雲に隠れ、道の先はほとんど見えない。
セイラスは足元を確かめながら走った。
鞄が肩に食い込み、何度も背中へぶつかる。
息が切れ、足が重くなる。
それでも、立ち止まるわけにはいかなかった。
「セイラス、こっち!」
ノエルが道の脇を指さした。
そこには、低い茂みが広がっていた。その先は緩やかな斜面になっており、木々の間へ続いている。
道を進めば追手に見つかる可能性が高い。
茂みの中なら、姿を隠せるかもしれなかった。
二人は道を外れ、草木の間へ身を滑り込ませた。
枝が服に引っかかり、足元の石が転がる。
それでも、二人は進んだ。
やがて、屋敷の灯りが木々の向こうに見えるようになった。
窓のいくつかは明るく、庭では人影が動いている。
追手たちは、まだ屋敷の周辺を探しているらしい。
セイラスは、木の幹に手をついて息を整えた。
「……ひとまず、ここまで来られたね」
「うん。でも、まだ安心できないよ」
「分かってる」
ノエルは、屋敷の方を見た。
遠くから、男たちの声が聞こえてくる。
彼らが何者なのか。
なぜセイラスを狙っているのか。
そして、屋敷の中に残された人々は無事なのか。
分からないことばかりだった。
ただ、一つだけ確かなことがある。
今、二人が戻れば、再び捕まるかもしれない。
セイラスは鞄の肩紐を握り直した。
中には、母の手紙とレナードの旅行記が入っている。
旅に出るために用意したものが、今は逃げ延びるための荷物になっていた。
「ノエル」
「何?」
「……助けてくれて、ありがとう」
ノエルは一瞬だけ目を丸くし、それから頷いた。
「うん。でも、まだ終わってないよ」
「そうだね」
「ここから先も、一緒に行くんだから」
セイラスは、暗い森の奥へ目を向けた。
その先に何があるのか、まだ分からない。
けれど、二人はもう屋敷の中にはいなかった。
そして、今夜の逃走は、まだ始まったばかりだった。




