第11話 旅に出る理由
私の考えた設定を元にAIが考えた話になります。
・タイトル、あらすじ、タグ、投稿ルールなどもすべてAIまかせ
・設定も面白くなるならば変えて良い
との条件で書きなおしました。
ご興味があれば、ご一読ください。
↓私が自分で書いた方の話はこちら
【逃亡王子の放浪記 ~世界の果てを見に行く方法~】
https://ncode.syosetu.com/n2929ms/
地下室を見つけてから、数日が過ぎた。
セイラスとノエルは、時間を見つけては地下室へ通い、そこに残されていた資料を整理していた。
古い地図は年代ごとに分け、調査記録は地名ごとにまとめる。題名のない書類には内容を確認して仮の分類をつけ、傷みの激しい本は無理に開かず、棚の上段へ移した。
それだけでも、かなりの時間がかかった。
なにしろ、母エリアが残した資料は膨大だった。
魔物の生態を調べた記録。各地の町から集められた報告書。人間の領域が縮小していく過程を記した地図。そして、レナードをはじめとする旅人たちの旅行記。
すべてに目を通すには、何年あっても足りないかもしれない。
「セイラス、これで最後?」
ノエルが、机の上に残った書類の束を持ち上げた。
「いや、まだ向こうの棚が残ってる」
「……まだあるんだ」
「あるね」
「本当に、ものすごい量だね」
ノエルは書類を机に置くと、両腕を伸ばした。
窓のない地下室では、時間の感覚が薄くなる。燭台の蝋燭が短くなっていることに気づかなければ、何時間も経過していることさえ分からない。
もっとも、セイラスにとって本を読むことは苦ではなかった。
むしろ、知らなかったことを知るたびに、新しい疑問が生まれてくる。
なぜ、この町は滅びたのか。
なぜ、ある地域では魔物の活動が活発になり、別の地域では長い間変化が見られないのか。
レナードは、どうして人間の領域の果てまでたどり着けたのか。
そして、母は何を知ろうとしていたのか。
調べれば調べるほど、世界には知らないことが増えていく。
「ねえ、ノエル」
「なに?」
「僕、やっぱり旅に出ようと思う」
ノエルは伸ばしていた腕を下ろした。
「……うん」
「前から考えていたことだけど、ここに来て、ますますそう思うようになった」
セイラスは机の上に、一冊の旅行記を置いた。
レナードが残した本だ。
表紙には、いくつもの傷がついている。角は擦り切れ、背表紙の文字も薄くなっていた。
何度も持ち運ばれ、何度も開かれた本なのだろう。
「この本を読んだとき、僕は世界の果てを見てみたいと思った。まだ知らない町へ行って、見たことのない景色を見て、そこで暮らす人たちの話を聞いてみたいって」
セイラスは本の表紙を指でなぞった。
「でも、母上の資料を読んで、考えが少し変わったんだ」
「どう変わったの?」
「世界を見て回るだけじゃなくて、見たものを記録に残したいと思うようになった」
セイラスは、机の脇に置いていた白紙の冊子を取り出した。
まだ何も書かれていない、真新しい冊子だった。
「この世界には、知られていないことがたくさんある。書物に書かれていることが、必ずしも正しいとも限らない。実際に行ってみなければ分からないこともあると思う」
「うん」
「だから、自分の目で見て、自分の手で記録する。町の様子や、そこで暮らす人たちのこと。食べ物や風習、土地の特徴。魔物がいる地域なら、どんな魔物がいて、どこまで人間が進めるのかも調べてみたい」
セイラスは冊子を開いた。
そこには、何も書かれていない。
白いページが、何十枚も続いている。
「いつか、この冊子をいっぱいにしたいんだ」
「旅行記にするの?」
「そう。レナードのようにね」
セイラスは顔を上げた。
「そして、いつか世界の果てまで行く」
その言葉に、ノエルは静かに頷いた。
「私は、ついていくよ」
「……本当に?」
「前にも約束したでしょ」
「そうだけど、旅に出るとなれば、今までとは違うよ」
セイラスは冊子を閉じた。
「屋敷の外には、危険な場所もある。宿が見つからない日だってあるかもしれない。食べるものに困ることもあるだろうし、魔物に遭遇することもある。ここで暮らしているようなわけにはいかない」
「分かってる」
「それに、僕は強くない。剣を持っても、ノエルには勝てないだろうね」
「それは、たぶんそうだね」
「少しくらい否定してくれてもいいのに」
「だって、本当のことだもの」
ノエルは、机の上に置かれた冊子を覗き込んだ。
「でも、セイラスが弱いからって、旅に出ちゃいけないわけじゃないでしょ?」
「それはそうだけど」
「私は、セイラスと一緒に行きたい。セイラスが見たいものを、私も見てみたい」
ノエルは一度言葉を切り、それから続けた。
「それに、私も見てみたいんだ。屋敷の外には、どんな場所があるのか。どんな人たちが暮らしているのか。私が知らないものが、どれだけあるのか」
ノエルは窓のない地下室を見回した。
ここには、知らない世界の記録が詰まっている。
けれど、どれほど詳しく書かれていても、それは誰かが見た世界にすぎない。
「本を読んで知るのも楽しいよ。でも、実際に見たら、もっといろんなことが分かると思う」
「……うん」
「だから、私も行きたい。セイラスのためだけじゃなくて、私自身がそうしたいんだよ」
セイラスはしばらく黙っていた。
やがて、白紙の冊子をノエルの前に置いた。
「じゃあ、最初のページはノエルに書いてもらおうかな」
「えっ、私?」
「僕たち二人で旅に出るんだから、二人の記録にしたい」
「でも、何を書けばいいの?」
「何でもいいよ。ここで過ごした日々でも、旅に出たら見たいものでも」
ノエルは冊子を受け取った。
しばらく白いページを眺めてから、そばにあった羽根ペンを手に取る。
そして、ゆっくりと文字を書き始めた。
『いつか、知らない世界を見に行く』
その下に、ノエルは自分の名前を書いた。
「……これでいい?」
「うん。いいと思う」
「セイラスも書いて」
差し出されたペンを受け取り、セイラスはノエルの文字の下に自分の名前を記した。
二人の名前が、白いページに並んだ。
*
その日の夕方。
二人は地下室を出て、母の書斎へ戻った。
窓の外では、日が傾き始めていた。
庭の木々はまだ冬の名残を残していたが、枝先には小さな芽が見え始めている。雪の溶けた地面には、ところどころに緑が顔を出していた。
セイラスは窓辺に立ち、屋敷の敷地を見渡した。
幼い頃から、何度も見てきた景色だ。
庭の向こうには門があり、その先には外壁が続いている。門を出れば道があり、道をたどれば町へ行ける。
頭では分かっている。
けれど、今までのセイラスにとって、その門の向こうは遠い場所だった。
ここから出ることを考えたことがなかったわけではない。
ただ、出た先で何をするのか、何を目指すのか。
それを、はっきりと言葉にしたことはなかった。
「セイラス、何を見てるの?」
ノエルが隣に立った。
「門だよ」
「門?」
「うん。あそこを出れば、旅の始まりになるんだなって」
ノエルは窓の外を見た。
「そうだね」
「……いつか、あの門を出よう」
「いつかじゃなくて、出るんでしょ?」
「そうだね。出るんだった」
セイラスは小さく笑い、机の上に冊子を置いた。
「でも、準備は必要だ。お金もいるし、旅に必要な知識も身につけないといけない。どこから行くかも考えなきゃいけないね」
「うん。私も、もっと力を使えるようになっておく」
「頼りにしてるよ」
「任せて」
ノエルは胸を張った。
その姿を見て、セイラスは机に向かった。
新しい紙を取り出し、これから必要になるものを書き出していく。
旅の計画。
必要な道具。
訪れたい町。
調べたいこと。
そして、いつかたどり着きたい場所。
紙の上に、少しずつ文字が増えていった。
その中で、セイラスはひとつのことを決めた。
旅の記録は、最初から残そう。
屋敷を出た日から。
初めて訪れた町から。
初めて見る景色も、初めて食べる料理も、そこで出会う人たちのことも。
いつか世界の果てにたどり着いたとき、自分がどんな道を歩いてきたのか、振り返ることができるように。
そして、その記録が、いつか誰かの役に立つかもしれない。
母が残した資料が、自分に新しい世界を見せてくれたように。
セイラスは紙の一番上に、題名を書いた。
『僕たちの旅の計画』
まだ、旅は始まっていない。
門の向こうへ出る日も決まっていない。
それでも、二人の旅は、もう始まりかけていた。
白紙だった冊子には、二人の名前が並んでいる。
その先のページには、これから見つける世界が待っていた。




