第10話 母の研究
私の考えた設定を元にAIが考えた話になります。
・タイトル、あらすじ、タグ、投稿ルールなどもすべてAIまかせ
・設定も面白くなるならば変えて良い
との条件で書きなおしました。
ご興味があれば、ご一読ください。
↓私が自分で書いた方の話はこちら
【逃亡王子の放浪記 ~世界の果てを見に行く方法~】
https://ncode.syosetu.com/n2929ms/
「地図に記された境界を、世界の終わりだと思ってはならない」
セイラスは、レナードの記録に書かれた一文をもう一度読み返した。
地下室には、蝋燭の炎が揺れる音と、紙をめくるかすかな音だけが響いている。
机の上には、古い地図や報告書が広げられていた。
どれも長い年月を経たものばかりだが、丁寧に保管されていたおかげか、読むのに支障はない。
「ねえ、セイラス。この本、こっちにも同じ名前が書いてあるよ」
ノエルが、一冊の分厚い本を持ってきた。
表紙には題名がなく、端に小さく文字が記されている。
『エーテルと魔物の生息域に関する考察』
その下には、母エリアの名前があった。
「母上の研究書だ……」
セイラスは本を受け取り、最初のページを開いた。
細かな文字が、紙いっぱいに並んでいる。
エーテルの性質。魔物の生態。人間の領域と魔物の領域の境界。そして、過去百五十年における生息域の変化。
どれも、これまで書庫で読んできた一般的な書物よりも踏み込んだ内容だった。
「難しそうだね」
「うん。でも、面白そうだ」
「私にも分かるかな?」
「分からないところは説明するよ」
セイラスは椅子を引き寄せ、ノエルと並んで本を読み始めた。
*
最初に記されていたのは、エーテルについての基礎的な説明だった。
エーテルは、生命や存在に深く関わる根源的なもの。
単なる力ではなく、生命が蓄積してきた情報や経験までも内包している。
人間も魔物も、エーテルを利用して生きている。
そして、多くの魔物は体内にエーテル石と呼ばれる器官を持ち、そこにエーテルを蓄積している。
ここまでは、セイラスも知っていた。
だが、エリアの研究は、その先へ進んでいた。
「……エーテルの性質と、生息域の変化には関係がある?」
セイラスは、紙に書かれた一文を指でなぞった。
「どういうこと?」
「人間の領域が縮小している理由について、母上はエーテルの観点から調べていたんだ」
セイラスは別のページを開いた。
そこには、過去の調査記録がまとめられていた。
魔物の出現数。討伐に参加した異能者の人数。失われた集落。人間が放棄した土地。
異なる資料から集められた数字が、年代ごとに整理されている。
それらを追っていくと、ひとつの傾向が見えてきた。
人間の領域は、百五十年ほど前に比べて、およそ二割も狭くなっている。
単に国境が移動したという話ではない。
かつて人間が暮らしていた土地から人が去り、街道が途絶え、町が廃墟となっていった結果だった。
その一方で、魔物の領域は人間の領域よりもはるかに広い。
「こんなに減っていたんだね……」
ノエルが、地図を見つめながら言った。
「うん。今の地図だけを見ていると、昔からこうだったように思えるけどね」
「昔の人たちは、もっと遠くまで行けたのかな?」
「少なくとも、今は人が住んでいない場所に町があった。街道も通っていたみたいだ」
セイラスは、年代の異なる地図を重ねた。
そこには、現在では魔物の領域に含まれている土地が、かつては人間の生活圏だったことが示されていた。
地図の上に残る町の名前。
途中で途切れた街道。
そして、記録のある年代を境に、二度と更新されなくなった集落の情報。
紙の上に記された線だけでも、失われたものの大きさが分かる。
「母上は、どうしてこんなことを調べていたんだろう」
ノエルが尋ねた。
「分からない。でも、ただ過去を知りたかっただけじゃないと思う」
セイラスは、研究書の後半を開いた。
そこには、エリア自身の考察が記されていた。
魔物との戦いが長く続くなか、人間側の異能者は数も質も十分とはいえなくなっている。
戦いで命を落とす者がいる。
優れた能力を持つ者が生まれない時代もある。
国が滅びれば、その土地に残されていた知識や技術も失われる。
人間の領域が縮小するたびに、人間が利用できる資源も、生活を支える基盤も減っていく。
そして、生活圏が狭くなることで、さらに多くのものが失われていく。
ひとつひとつは別々の問題に見える。
だが、エリアはそれらを切り離さず、ひとつの流れとして捉えようとしていた。
「母上は、人間が少しずつ追い詰められていることを調べていたんだ」
「止める方法を探していたのかな?」
「たぶんね」
セイラスは本を閉じ、しばらく表紙を眺めた。
王国の書庫にも、魔物について書かれた本はたくさんあった。
強力な魔物の特徴や、討伐に必要な装備。
異能者の能力と戦術。
それらは、魔物と戦い、生き残るために必要な知識だった。
しかし、エリアの研究は、戦いに勝つ方法だけを求めているわけではなかった。
なぜ人間は領域を失い続けているのか。
その変化には、どのような法則があるのか。
そして、失われた土地の向こうには何があるのか。
彼女は、そうした問いに答えを出そうとしていた。
*
「セイラス、こっちも見て」
ノエルが、机の奥から一枚の紙を引き出した。
紙には、いくつかの地点が丸で囲まれ、そこから線が伸びていた。
地図と照らし合わせると、それらは人間の領域の外縁部にあたる場所だった。
記録された年代は、それぞれ異なっている。
「これは?」
「調査地点だと思う。ほら、こっちの報告書にも同じ地名がある」
セイラスは資料を並べ、記録を読み比べた。
ある地点では、魔物の出現状況が調べられていた。
別の地点では、失われた集落の跡が記録されている。
さらに別の資料には、通常の地図には載っていない道筋が描かれていた。
エリアは、各地から集めた情報を比較し、何かを探していたらしい。
しかし、調査の目的そのものは、どの資料にも明確には書かれていなかった。
「この線、ずっと向こうまで続いているね」
ノエルが地図を指した。
人間の領域の外側。
魔物の領域が広がる方角へ、いくつもの線が伸びていた。
「母上は、魔物の領域の中まで調べようとしていたのかな」
「そうかもしれない」
「危なくないの?」
「危険だからこそ、調べる必要があったのかもしれないね」
セイラスは、レナードの記録を開いた。
世界のあちこちを旅した男。
人間が暮らす町を訪れ、見たものを記録し、地図に残してきた人物。
そして最後には、人間の領域の果てに立ちながら、その先に何があるのか分からないと書き残した。
エリアの研究資料には、レナードの旅行記から引用された文章もあった。
母は彼の記録を読み、そこから何かを得ようとしていたのだろう。
「母上も、世界の果てに興味があったのかな」
セイラスは呟いた。
「セイラスと同じ?」
「どうだろう。僕とは違う理由だったのかもしれない」
彼は地図を見渡した。
自分が行きたいと思っていた場所。
まだ見たことのない町。
人間が暮らす土地の、その先。
これまでは、ただ遠くへ行ってみたいと思っていた。
知らないものを見たい。
自分の目で確かめたい。
見てきたものを文章に残したい。
その気持ちは、今も変わらない。
けれど、母が残した資料を見ていると、旅というものが、ただ遠くへ行くことだけではないようにも思えてきた。
旅をすれば、書物には載っていないものを見つけられるかもしれない。
古い記録が正しかったのか、間違っていたのか、自分の目で確かめられるかもしれない。
誰も知らない場所に、まだ人間が利用できる何かが残されている可能性もある。
もちろん、今の資料だけでは何も断言できない。
母が何を突き止めたのかも、まだ分からない。
それでも、ここに残された記録は、セイラスが旅に出ることに新しい意味を与えていた。
「ノエル」
「なに?」
「僕、やっぱり世界の果てまで行きたい」
ノエルは、地図から顔を上げた。
「うん。前にも言ってたね」
「ただ遠くへ行くだけじゃなくて、いろんなものを見て、調べて、記録に残したいんだ」
「旅行記を書くんでしょ?」
「そう。僕が見た世界を、僕の言葉で残したい」
セイラスは、机の上に置かれた古い地図を丁寧に広げ直した。
「いつか、この地図に載っていない場所も、自分で描けたらいいな」
「じゃあ、私も手伝うよ」
ノエルは、迷いなく答えた。
「地図を描くのは苦手だけど、荷物を運んだり、道を進んだりするのはできるから」
「頼りにしてるよ」
「それに、セイラスが行きたい場所なら、私も見てみたい」
地下室の机には、まだ読み終えていない資料が山ほど残っていた。
母の研究がどこまで進んでいたのか。
なぜこれほど多くの記録を集めたのか。
そして、世界の果ての向こうに何があるのか。
今はまだ、答えは出ない。
セイラスは、母の研究書をそっと閉じた。
「明日も、ここに来よう」
「うん」
「今度は、残りの資料を整理してみる。何か手がかりが見つかるかもしれない」
「分かった。私も手伝うね」
二人は資料を元の場所へ戻し、地下室を出る準備を始めた。
階段を上り、隠し扉を閉じる。
壁が元の位置に戻ると、物置には再び静けさが戻った。
その上の階には、かつてエリアが使っていた書斎がある。
そして、そのさらに上には、セイラスが長い時間を過ごしてきた部屋があった。
屋敷の外には、まだ見たことのない世界が広がっている。
その世界へ出る日は、まだ決まっていない。
けれど、母が残した研究は、セイラスにひとつのことを教えてくれた。
世界を知ることは、ただ遠くへ行くことではない。
知らないものを見つけ、確かめ、記録すること。
その積み重ねが、いつか誰かの知らない世界を変えるきっかけになるかもしれない。
セイラスは、階段の最後の一段を上った。
窓の外には、冬の名残を残す庭が広がっていた。
その向こうにある景色は、昨日と何も変わらない。
それでも、セイラスの目には、以前とは少し違って見えていた。




