付喪神8
生贄とは何だったのか?
誰のための生贄だったのか?
その時キビは何を見る?
「だから村の異変は妖怪桜の仕業であって」
「じゃあ長老さんはなんでこんな大事な時に姉ちゃんにちょっかい出そうとしてるんだよ!」
長老の言葉をリクが遮った。
「姉ちゃんは村の為に生贄になる覚悟までしてるっていうのに、なんで長老さんは関係ないことしてんだよ!」
リクの叫びが森にこだました。
ほんの少し、辺りが静かになった。
キビがゆっくり桜の方、エンラたちの方へと歩みを進め長老と距離を開けた。
そしてくるりと長老を見据える。
「もうみんな気付いてる。村の妖怪の正体は桜じゃなく、アナタだってことに」
「……」
辺りを静寂が包み込んだ。
体感温度がぐっと落ちた気がする。
全身の毛が逆立つよう、これが悪寒だ。
「なかなか面白いことをおっしゃるお嬢さんだ。ご説明願えるかな?」
チヨとリクもキビの次の言葉を待った。
キビはゆっくりと口を開く。
「物は百年使われると魂が宿ると言われてる。付喪神と言われてる。長老さんは百歳を超えていますよね?百歳を超え、偶然にもアナタは妖怪の力を手に入れた」
チヨとリクが生唾を飲み込んだ。
「手に入れた力を自分の為に使おうと思った。村の女を全て手に入れようと。それが付喪神の想い」
「そんな!そんなことの為に今まで何人もの人が亡くなったっていうんですか!?」
チヨの叫びにキビが小さく頷いた。
「アナタは幼い頃桜への生贄を思い出し、それを利用した。全て妖怪桜のせいにしてしまえ、と」
「そ、そんなの無茶苦茶じゃないか!」
リクが声を張り上げた。
悪寒が集まるような感覚がした。
彼の世と此の世が入れ替わる。
手を叩く音がした。
見ると長老がパンパンと手を叩いていた。
「いやぁ面白いショーじゃったよ。じゃがそろそろ死んでもらうかのォ」
長老から悪寒が発しているような気がした。
気を失いそうな空気に必死で耐える。
キビが胸の前で印を結んだ。
目を見開き、その力ある言葉を口にする。
「妖魔の姿!真実!想い解明されし今こそ!内なりし魔と鬼の力をもって!退魔の力を解き!放つ!」
長老の周りの黒い何かが形となった。
それは手のようでもあり触手のようでもあった。
「そんな……どうして!?何かが足りない……!?」
キビには何も起きない。
収束していく黒い力を前に一同動揺を隠せない。
「まだ修行が足りないな」
ただ一人を除いては……。
本性をみせた付喪神。
しかし何かが足りない。
最後のピースとは?
つづく




