付喪神6
普段は音だけで伝える物語を書いています。
会話だけで伝わるように話を組み立てます。
小説の様に状況を文書で伝えること、逆に難しく感じています。
畑違いなのかも知れないですね。
巨大な老木が目の前にあった。
樹齢千年は超えているであろう桜は村の人々から恐怖の対象となっていた。
「今晩、私はこの桜の生贄になるのですね」
「予定ではな……」
チヨの力ない独り言にいちいち相槌を打つエンラ。
陽はしっかり昇っていた。
日差しが眩しい。
平和な日常と見えるこの時間も女にとってはタイムリミットまでの大切な時間だ。
「聞きたかったんだけどさ、桜を倒そうとは思わなかったのかい?」
何の前触れもなく突然問いかけるエンラに少々驚きもしたが、よく思い起こしてみれば昨晩、集会所に彼が訪れた時からそんな調子だったと頭の中を整理した。
「村の男たちが何度か計画は立てたのですが、その度に土砂崩れが起きたり熊が出たりと予定が進まなかったそうです。そんなこんなしているうちに、妖怪桜の呪いによるものなんじゃないかって」
「それで計画は立ち消え大人しく生贄を差し出すことになったわけか……」
エンラがゆっくりと桜の周りを回り始めた。
「ところでチヨさん。そこの地蔵、首が無いのはいつからだい?」
「え?」
チヨが目の前の地蔵に気付いたのはエンラに言われてからだった。
形の整った石が並んでいるとは思ったがまさか地蔵だとは思いもよらなかった。
「酷い……。誰がこんな酷いことを……」
チヨが恐る恐る首の無い地蔵をさすった。
頭はどこにも見当たらない。
「前に見た時はちゃんとあったのに……」
桜の周りを回ったエンラが地蔵の前にやってきた。
「いつから無いかわかるかい?」
チヨは首を横に振った。
「桜が生贄を求め始める前に見た時にはありました」
エンラが顎から乱雑に生えた無精髭をさすった。
「そっか。つまり生贄を求めだしたのもここ数年ってことか」
チヨは大きく頷いた。
「妖魔を撃退する退魔の力を解放するにはその妖魔の姿、生まれた真実、もたらそうとした想いを解明しなければならない」
「え?」
エンラの言葉にチヨは自分の耳を疑った。
今撃退と言わなかったか?
まさか妖怪を退治できるのか?
「確かめなきゃいけないことがあるな……」
エンラに連れられるままに村へと戻っていった。
お地蔵様は人々の願いが込められた守り神です。
旅の安全をだったり子供の成長だったり、また悪いモノを通せんぼする見張だとか、他にもいろいろあります。
調べると結構面白いです。




