船幽霊5
先日ある人と話をしていて、恋愛って難しいねって話題になりました。
恋愛物語ってどーやって書くの?
「なかなか止まないな」
今日も男は女のところへ来ていた。
特になんの進展もなく、ただ挨拶を交わしただけ。
「よく飽きもせず、よく毎日毎日来られますね」
男は水平線の方、海の彼方に視線を移した。
「ほら、彼も成仏できなくて可哀想だろ?なんとかしてやらなきゃって」
女も同じ方を見る。
つい先日、奇怪なモノを見た辺り、彼が海に沈んだ辺りである。
「あの日豪雨以来、あの近くを通ると突然雨が強くなり全てを飲み込むそうだ。おかげで沈んだ船を引き上げることすらできないでいる」
女は一切の反応を示さなかった。
男は淡々と話を続ける。
「男の死体が上がったって話もないから、きっとまだ海の底なんだろ。誰にも近づけない棺桶ってわけだ」
俯いた女の頬を雨が滑り砂浜へと落ちる。
「ところで、数日前にここから5kmほど離れた岩場で水死体があがったって知ってるかい?」
突然女が男の方を見た。
その顔は今までとはまるで違う、鬼の様な形相であった。
男は話を続ける。
「水死体は女だった。つまりアンタの彼じゃない。だが時期からいってその女は、彼と同じ船に乗っていたんじゃないかと思ってる」
女は男を凝視したままピクリとも動かない。
その恐ろしい視線は蛇が蛙を睨むというより、人間の狂気の部分が露呈しているかのようだった。
「あそこの彼は……」
男が海を指差す。
そこには先日同様、醜い肉らしきモノがいた。
「海の底に沈んだのは、彼だったのかい?」
突然雨が激しくなった。
ザーザーと音を立て降ってくる雨が辺りの景色をも歪めてしまう程だった。
男はゆっくりと歩き始めた。
女から遠ざかっていく。
「また来るよ」
女と、海の向こうのモノを残し男は雨の中へ消えていった。
そろそろいろんなピースが揃ってきたんじゃないかと思います。
男と女、恋の行方…なんて無いですね




